重要なのは食べることではなくて飛ぶことだ。いかに速く飛ぶかということだ――飛ぶことの歓びを味わうために、自由と愛することの真の意味を知るために、光り輝く蒼穹の果てまで飛んでゆく一羽のかもめジョナサン・リヴィングストン。群れを追放された異端のジョナサンは、強い意志と静かな勇気をもって、今日もスピードの限界に挑戦する。夢と幻想のあふれる現代の寓話。

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かもめに大層な名前が付いています。

ジョナサン・リヴィングストン。

上に書いたあらすじは裏表紙に書いてある物ですが、文字通り“寓話”として、人間に置き換えて考えると少し敬虔な気持ちになれる物語です。

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ジョナサンは普通のかもめとは考え方の違うかもめで、食べる事より速く飛ぶ事を考えて自分の限界に日々、挑戦し続けます。

人間の世界でいう所の“変わり者”です。

やがて考え方が違い過ぎて自分のいた群れを追放されますが、改めて見るとやっぱり人間を見ている様です。

人間というのは愚かな生き物で、仲間が自分に理解出来ない行動を取ると、途端に仲間を非難します。

仲間がどれだけ弁解しても、聞きません。

ジョナサンも速く飛ぶ素晴らしさを説くのですが、長老に因って追放されてしまいます。

やっぱり古い考え方の人間ばかりが幹部にいるべきでは無い、と思わされました。

伝統を重んじる事も、新しさを取り入れる事と同じ位大切だと私は思いますが、そのバランスは上手く保たないと生物は進化というか、進歩出来ません。

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ジョナサンが終盤近く、悟り切って自由と愛を語る様子は、悪い意味では無く、宗教活動みたいだと純粋に思いました。

仏教の釈迦が苦行の末に悟りを開き、説法(宗教活動)している様子を連想してしまいました。

そして結局それは人間の全てが行(おこな)っている活動なのかもしれない、と思いました。

誰かと衝突し、自分の生き方を熟考し、その考え方を反芻した上で、誰かにそれを伝授して行く。

それが説教じみていて嫌だという方もいらっしゃるかもしれませんが、内容と相手に因る所もあるかもしれません。

ジョナサンは優等生過ぎる、と思わないでもありませんが、確かに何か大切な事を教えてくれる物語です。

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ページの端々にかもめの写真が載っていて、それをジョナサンや群れの皆だと思って読むと臨場感があります。

アメリカ西海岸のヒッピー達が回し読みしていたという逸話も印象的。





「そうすれば、お前は過去と未来を自由に飛行できるようになる。そしてそこまでゆけば、お前は最も困難で、最も力強く、かつ最もよろこばしい事柄のすべてと取り組む用意ができたといえるだろう。そしてお前はそのとき、より高く飛びはじめ、また優しさと愛との真の意味を知りはじめる用意ができたことになるのだ」