世界が見えなくなる前に、

近所を歩いていると、工事現場が目に付く。
ああ、このアパートは、一階の駐車場を通り抜けると公園へ近道できる駐車場だ、
と思って、ぼんやり工事現場を眺める。
この近道を通る以外の方法で、あの公園へ行く道筋はもう覚えていないのだ。
あの小さな公園は、どこにあったっけ、
そもそも誰と遊んでいたんだっけ、
絵日記にもよく書いた、カラフルな滑り台のてっぺんで、ニコニコ顔の僕、、。
川が流れていた気がする。
誰と行ったんだっけ。
あの頃の友達は、みんなどこに行ってしまったんだろう、
あの頃のぼくは、どこに行ってしまったんだろ。
なんでぼくは公園で遊んでないんだろ。
公園で遊ばないで何やってんだろ。
毎日何やってんだろ。
なんでぼくは煙草なんか吸ってるんだろ。おいしくもないのに。
家に帰ったら、死んだように横になっている。
何やってんだろ。

そう思いながら、工事現場を後にする。
外では泣かない。
いつの間にか、外では泣くもんじゃない、ていうのがぼくの常識になっている。
家では泣く。
なんで悲しいのかもよくわかっていないけど、たぶん、公園への道筋がわからなくなった、たったそれだけの理由なんだと思う。