ぼくの大晦日
暮れましておめでとう。
ご存知の人もいらっしゃるかと思いますが、風邪ひきました。
家族は親族の家に、年越し蕎麦を食べに行きました。
ぼくは胸とあたまが苦しくて、いつの間にか眠っていたようで、ふと気がついたら、隣に猫が眠っていました。
ぼくが起きると、猫も起きました。
メールがたくさん入っていました。全部年明けの業務の連絡だったので、無視しました。
食欲はあるような無いようなそんな気分だったので、おかゆを作ることにしました。
そういえば、お蕎麦を食べない年の瀬は今年が初めてだなとぼんやり作っていたら、失敗しました。塩粥を作ったつもりが、からすぎた。みかんで口直しをしました。
お粥にみかんって、年越し蕎麦なんかよりも最高だなと感じました。
ぼくは正直いうと、親戚が好きではありません。まあ、基本的に家族以外はあんまり好きじゃないかもしれません。(家族以外でも好きな人はたぶん、五本の指でも数えられます)
ひとりぼっちですごす大晦日もいいなあとちょっと思いました。
陣羽織をはおって、お粥をはふはふしながら1時間かけて食べきると、体が温かくなったのでまた眠たくなりました。
布団の中に入って、今までの大晦日を思い出していました。毎年だいたい、ばあちゃんの家で蕎麦食べて、家に帰って紅白を見て、てっぺん回る前にジャンプして、「今年のはじまりは空中にいた」とはしゃいでいます。そして初日の出を見るまで寝ないぞと心に決めるのですが、寝てしまって、初夢を覚えることもなく目が覚めます。
一回だけ、除夜の鐘を鳴らしに行ったこともありました。
ぼんやり思い出せるのですが、もしかしたら夢だったかもしれません。
たぶん、10時になると、家族は帰ってきます。
だけどこうして、1人で留守番をしていると、昔からそうなんですが、家族が事故にでもあって帰ってこないかもしれないと考えてしまいます。
ぼくは子供のころから、風邪で寝込むと、縁起でもない妄想をしていました。
1番多いのは、「ぼくの風邪が実は難病で、ただの風邪だと思われたまま死ぬ」というものですが、まあ実際、どこかでそれを望んでいたような気もします。
これだけ死を望みながらも生きているのは、実は生きたいからだと、ありきたりな文句でぼく自身に言い聞かせてはいるのですが、あれはナンセンスだよね。
矛盾する願望なんて持つはずがない。死にたいと思ってる時は生きたいなんて思ってない、「死にたい」しかないんだよ。
ぼくはなにも、家族にもぼくの性格にもぼくの周りの環境にも不満足さを感じてはいないのですが、どうして死にたいと思うんだろうか、たぶんそれだけが謎です。
年の暮れは、「時間が死ぬ」ということをひしひしと感じさせられます。
ランゴリアーズという映画があるのですが、皆さん、見た方がいいですよ。
「過去」という空間は死んでいます。時間の死骸が過去で、ランゴリアーズが来て、その空間も食べてしまって、無になります。
2012年も、ランゴリアーズにまるごと食べられます。
ぼくが思い悩んだあの時間も、恋人と楽しくすごしたあの時間も、必死に勉強してあたまに知識を叩きつけていたあの時間も、ぼーっとして無駄に見送ったあの時間も、みんな平等に、ランゴリアーズに食べられてしまうのなら
2012年なんて無駄だった気もしますね。その前の年も、そのまたずっと前の年も、これから来たる新しい年も。
ぼくが過ごしてきた2012年は、体や環境に残っているはずですが。本当に残っているのかは怪しい。
時がもっとずっと流れれば、いつかは記憶さえもなくなって、本当にその時間が存在していたのかもわからなくなる。
記憶も環境も古い細胞も過去に捨てられて、ランゴリアーズに食べられるのでしょう。
「ずっと思い出に残る」なんて、嘘だと思うんですよ。それだから人は、写真を撮るんだと思いますが、写真も絶対じゃあないですね。写真を見つめても、思い出せないことがあるのは悲しい。
水族館の大きな水槽の前で、幼稚園の体操服に帽子をかぶって、ポーズをとっている俺がいる写真、まだ兄弟は妹しかいなくて、しかも母さんに抱っこされてて、父さんはまだ髪の毛がフサフサで、俺を肩車することも容易で、水族館を俺だけが走り回る、そんな風景を思い浮かべるけども、それが本当の、記憶ではなくて、俺が写真を見て、捏造した、嘘のものだったら
思い出というものが、そういう嘘の積み重ねだとしたら
ちょっと怖いどころじゃないね、涙が出てくるね
だから思い出は、他人と語るんだろうけど、ぼくの覚えてない話が出てくるのが怖い、「ああそうだっけ」なんて言って、簡単に補正できてしまう思い出なんて、信憑性のかけらもなくて、
……なんでこういう話になったかというとあれだ、除夜の鐘を鳴らしに行ったおもいでが本当かどうか、ということからだったかな。
1人でいると、いろいろと、無駄なことを考えるよ。
こんなこと考えてるからたぶん、生きてるのって無駄じゃないかなあと思えてくるんだろうね。
皆様、良いお年を!