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ACT3-(7)

夕食を済ませた芳樹達はアクア・ファンタジア内にあるホテルに到着した。
「………いらっしゃいませ、姫宮様。綿貫様。」
ずらり、とコンシェルジュ達がロビーに並び、宿泊客達は何事かと見ていた。
「お部屋へご案内いたします。」
「何が悲しくて、芳樹と一緒の部屋なんだ。」
「あら、万一のことを考えての配置よ。文句あるの?」
「俺だって嫌なんだけどな、綾人と一緒なの。
修学旅行じゃあるまいし。」
「いいじゃないの。
幾ら結婚するからと言っても、婚前干渉してみなさい。
息子を切るわよ。」
「………息子って何ー?」
「……美穂お義姉様……下ネタはちょっと…………。」
美穂の発言に満月は冷や汗をかいた。




ロイヤルスイートに案内されるなり、美花、美鳥、美風の3人はキッズベッドにダイブした。
「わぁい、広い!」
「大きい!」
「うん!」
「でも、良いんでしょうか………綾人お兄様と芳樹さん、不満があるんじゃ………。」
「いいのよ、私が許すわ。
大体、芳樹君は満月ちゃんを1人占めしすぎなの。
たまには私が1人占めしたって良いじゃない。」
「そうだよー、満月お姉ちゃん!」
「満月お姉ちゃん、パパと芳樹おじちゃんに愛されているもんねー。」
「うん。」
「私ってば本当に幸せ者だわ。
綾人って言う良い相手にも巡り合えたし、義妹は可愛いし、4人の子供にも恵まれたし。
親孝行できたんじゃないかしら。」
「それは言えているかもしれませんね。初音家の人もそう思っていますよ。」
「じーじ、私達がいてくれて嬉しいって言ってたよ。ばーばも。」
「そうね。そこそこ活躍している、何処にでもいるピアニストを愛してくれているんですもの。
家柄が釣り合わない、とか、身分違いの恋愛は止めろとかっていう声を聞いたけど
ぜーんぶ、綾人が蹴ってくれたのよね。」
「パパがママを守ってくれているってことだよね、それって。」
「ええ、そうよ。」
「私もパパみたいな人と結婚できるかな?」
「……………。」
「……………。」
美花の言葉に美穂と満月は顔をひきつらせた。
「………美花?それはもうちょっと大人になってからね?」
「そうそう、子供でいられる時間を大事にしないと………。」
「え、どうして?」
「まだ気が早すぎるからよ…………。」





「……………凄い盛り上がっているに1票だな。」
「投票の意味がないだろ、それじゃあ。」
「………まあ、確かに美穂の言いたい気持ちはわからんでもないがな。
………なぁ、芳樹。」
「何だ?」
「お前、自分の婚姻をどう思っているんだ?」
「どうって?」

「満月の眼は千里眼だ。視えぬものを視ることができる。
だから、姫宮家は繁栄してきた。
満月をお前に預けるということは、綿貫家を更なる繁栄に導くことになる。

曾祖母の代で決めたこととは言え、お前と満月が不憫でならないよ。」
「…………姫宮をあらゆる方面から守る代わりに、女児が生まれたら綿貫に引き渡す。
それが曾ばあさんの決めた約束事だ。
満月ちゃんは良い子だよ。俺にはもったいないぐらい。
でもだからこそ、俺が守らなくちゃならないと思っている。
汚い世界に入り込まないようにはしたいけど、そうも言っていられないからね。」
「………まあ、な。」

「心配するな。満月ちゃんだって、自分の役割を果たそうと必死になっているんだ。
お前らお兄ちゃんが必死こいたおかげで、純真無垢なままで俺んところに来るんだから。」

「……………本当に悪い性格だな、お前は。」
「お前だって悪い性格をしているんだ、お互い様さ。」


芳樹の言葉に綾人はやれやれ、とため息をついた。





続く。

ACT1-(8)


「……………って、あれ。」

品物を見定めている流司をよそに、あさぎはあることに気づいた。

「……やだ、プリムおばあちゃん、魔法の実を忘れてる!!」

「……魔法の実?」


「魔法玉数十倍の魔法力を発する魔法力の詰まった木の実のことよ。
魔女界じゃ、お金代わりにもなるの。
基本的には魔法の実のなる木を育てるんだけど……。
参ったわ、これ、届けに行ってくるわね。」

「あ、じゃあ、俺も行く。」

「………何で。」

「興味があるから。」

「………………もう、好きにすれば。」

そういうとあさぎはタップを取り出した。


「それで魔女に変身するのか?」

「まぁね。」

あさぎはタップをカスタネットのように叩くと、魔女服に着替えた。

「おぉ、すげぇ。似合ってんじゃん。」

「………うっさい。」

「顔が赤いぞ。」

「誰のせいだと思ってんの。」

タップから箒を取り出したあさぎはそれにまたがった。

「ほら、乗る。」
「はいよ。」

流司が箒に乗ったことを確認したあさぎは指を鳴らして、魔女界に通じる扉を開けた。


「それじゃあ、出発進行!!」



続く。

プロローグ



…………聖杯戦争。
それは60年に1度行われる、
あらゆる願いを叶えるとされる、
万能の願望機「聖杯」の所有権を巡って開催される殺し合いの儀。


………そして、血に塗れたこの戦いが桜庭市で行われようとしていた。



ACT1-(7)


「………何でそんなことを聞くの?」

流司の問いに、あさぎは逆に聞き返した。

「………うちのおばあちゃんは確かに長生きしていたけど。単にそれだけよ?」

「…………正直に答えてくれよ。」

「…………だから、何でそんなことを聞くの?」

あさぎはマジョプリムから、正体を見破られた魔女は魔女ガエルになってしまうという呪いが
かつてあったことを聞いていた。

だが、まだ魔女が受け入れられるまでには時間がかかる。
そのため、人間界にやってきた魔女はひっそりと暮らしている……という現状も知っていた。

「…………………俺、魔法って言うのを信じているんだ。」


「………へぇ、意外。芸能界って時に重たい現実突き刺さる時があるから、リアリストが多いのかと思ってた。
ロマンチストなのね。」
「そうだよ、俺はロマンチストなんだ。
…………うちの曾ばあちゃんの話なんだけど。」

「うん。」

「………友達だと思っていた子が、魔女で。魔女ガエルになってしまったんだよ。
曾ばあちゃんがうっかり正体を知っちゃってさ。
でも、魔女になることを嫌がったんだ。………それっきり、その友達がどうなったのかはわからない。
曾ばあちゃんは最期の最期まで後悔してた。
友達を魔女ガエルにしてしまったまま、別れてしまったことを。」

「…………………魔女見習いになることを拒否したのね。まあ、当然と言えば当然か。
そうそうホイホイと魔女見習いから魔女になるのは難しいもの。」


「………あ、やっぱりその口ぶりからするとお前のばあちゃん、魔女だったんだ。」
「………はぁ。仕方がないわね………。そうよ、私のおばあちゃんは魔女だったの。」


「……魔女ガエルにはならないのか?」
「ならないわよ。魔女界で、
大規模なマジカルステージを行って魔女ガエルの呪いを解いたって聞いているから。」

「………マジカルステージ?」

「そ。大がかりな術式のことね。それを魔女界全体でやったの。
だから、魔女ガエルにはならない。安心して良いわ。」

「もしお前が魔女ガエルになったら、俺魔法使い見習いにならなきゃいけなかったってことか。」

「……嫌よ、芸能界と魔法使い界を背負って立つ魔法使い見習いなんて。
うっかり魔女界のこととかを喋るんじゃないかって心配するわ。」


「そりゃ、そうだ。」

あさぎの話に流司はあはは、と笑った。

「……でも私が魔女だってことは内緒にしておいて。」

「ああ、それは約束する。………曾ばあちゃんの償いは俺の償いでもあるからな。」

「それは曾おばあ様の償い。貴方の償いじゃないわ。」

「でも、背負う権利はあるだろう?外見だけで判断するのは良くないって散々言われているから。」
「………あ、そう。ところで。」



「……何?」

「ここに来たのなら、花の1つや2つ、買っていきなさい。
まさか、タダで帰れると思ってんの?」


「……現金な奴。」


続く。

ACT1-(6)


「………ねぇ、何でついてくるの?」
「え?だって、俺、鹿目さんに学校案内してもらいたいんだけど?」
「……だからって!!トイレにまでついてくることないでしょ!?」
あさぎは女子トイレを指差すと流司に向かって叫んだ。
「あ、じゃあ、俺トイレ前で待っているから。」
にこやかに笑う流司にあさぎはワナワナと震えた。
「クラスメイトに頼んだら?キャーキャー喜んで案内してくれるわよ。」
「いや、俺、キャーキャー言ってくる子、嫌いなんだよね。
舞台上とかならともかくさ、日常生活は嫌なんだよ。
鹿目さん、それ言わないタイプだからラッキーって思って。
あ、下の名前で呼んでもいい?俺のこと流司って呼んでいいから。」
「誰が呼ぶか!」
そういうとあさぎは女子トイレに入った。
「………何か鹿目さん、凄いよね………。」
「……うん。私、鹿目さんのおばあちゃん、杖1本で熊退治したって聞いた………。」
「え、それ本当!?」
「うん、コモドオオトカゲと戦ったことあるの?って聞いたら、ないって言われちゃって……。
でも、杖1本で熊を退治したことならあるって。」
「すごいなぁ、あさぎのおばあちゃん!」
「だから、下の名前で呼ぶなっつってるでしょ!?」
トイレを済ませたあさぎは流司に向かって叫んだ。


放課後になり、あさぎはMAHO堂に向かった。

「………はあ……疲れた…………ってあれ、プラムおばあちゃん?」


店内に入ると、プラムがいなかったため、あさぎはテーブルを見た。


「………ええっと、魔女界に行ってきます、店番よろしくね。……何だ、そっか。
買い出しにでも行ったのかな?」

「ハロー、あさぎ!」

紙をしまうとガチャリ、と扉が開く音がして流司が入ってきた。

「………いや待ちなさい。何でアンタがここにいるの?」
「後を追いかけてきた!」

「ストーカーか!?」


「仕事はどうしたの!?」

「今日は休み!………へぇ、ここがMAHO堂か。結構古いんだな。」

「リノベーションしたからよ。………言っておくけど、お茶出ないからね。」

「わかってるよ、それぐらい。」

「………で、何の用なの?」
「あさぎに聞きたいことがあってさ。」


「何よ。」

「…………あさぎのばあちゃんって魔女だったのか?」


続く。
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