夕食を済ませた芳樹達はアクア・ファンタジア内にあるホテルに到着した。
「………いらっしゃいませ、姫宮様。綿貫様。」
ずらり、とコンシェルジュ達がロビーに並び、宿泊客達は何事かと見ていた。
「お部屋へご案内いたします。」
「何が悲しくて、芳樹と一緒の部屋なんだ。」
「あら、万一のことを考えての配置よ。文句あるの?」
「俺だって嫌なんだけどな、綾人と一緒なの。
修学旅行じゃあるまいし。」
「いいじゃないの。
幾ら結婚するからと言っても、婚前干渉してみなさい。
息子を切るわよ。」
「………息子って何ー?」
「……美穂お義姉様……下ネタはちょっと…………。」
美穂の発言に満月は冷や汗をかいた。
ロイヤルスイートに案内されるなり、美花、美鳥、美風の3人はキッズベッドにダイブした。
「わぁい、広い!」
「大きい!」
「うん!」
「でも、良いんでしょうか………綾人お兄様と芳樹さん、不満があるんじゃ………。」
「いいのよ、私が許すわ。
大体、芳樹君は満月ちゃんを1人占めしすぎなの。
たまには私が1人占めしたって良いじゃない。」
「そうだよー、満月お姉ちゃん!」
「満月お姉ちゃん、パパと芳樹おじちゃんに愛されているもんねー。」
「うん。」
「私ってば本当に幸せ者だわ。
綾人って言う良い相手にも巡り合えたし、義妹は可愛いし、4人の子供にも恵まれたし。
親孝行できたんじゃないかしら。」
「それは言えているかもしれませんね。初音家の人もそう思っていますよ。」
「じーじ、私達がいてくれて嬉しいって言ってたよ。ばーばも。」
「そうね。そこそこ活躍している、何処にでもいるピアニストを愛してくれているんですもの。
家柄が釣り合わない、とか、身分違いの恋愛は止めろとかっていう声を聞いたけど
ぜーんぶ、綾人が蹴ってくれたのよね。」
「パパがママを守ってくれているってことだよね、それって。」
「ええ、そうよ。」
「私もパパみたいな人と結婚できるかな?」
「……………。」
「……………。」
美花の言葉に美穂と満月は顔をひきつらせた。
「………美花?それはもうちょっと大人になってからね?」
「そうそう、子供でいられる時間を大事にしないと………。」
「え、どうして?」
「まだ気が早すぎるからよ…………。」
「……………凄い盛り上がっているに1票だな。」
「投票の意味がないだろ、それじゃあ。」
「………まあ、確かに美穂の言いたい気持ちはわからんでもないがな。
………なぁ、芳樹。」
「何だ?」
「お前、自分の婚姻をどう思っているんだ?」
「どうって?」
「満月の眼は千里眼だ。視えぬものを視ることができる。
だから、姫宮家は繁栄してきた。
満月をお前に預けるということは、綿貫家を更なる繁栄に導くことになる。
曾祖母の代で決めたこととは言え、お前と満月が不憫でならないよ。」
「…………姫宮をあらゆる方面から守る代わりに、女児が生まれたら綿貫に引き渡す。
それが曾ばあさんの決めた約束事だ。
満月ちゃんは良い子だよ。俺にはもったいないぐらい。
でもだからこそ、俺が守らなくちゃならないと思っている。
汚い世界に入り込まないようにはしたいけど、そうも言っていられないからね。」
「………まあ、な。」
「心配するな。満月ちゃんだって、自分の役割を果たそうと必死になっているんだ。
お前らお兄ちゃんが必死こいたおかげで、純真無垢なままで俺んところに来るんだから。」
「……………本当に悪い性格だな、お前は。」
「お前だって悪い性格をしているんだ、お互い様さ。」
芳樹の言葉に綾人はやれやれ、とため息をついた。
続く。