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ACT6-(1)

「………ねぇ、中井さん。何を聞いているの?」
ipod touthで曲を聴いていた中井亜理紗はクラスメイトの友井明美に声をかけられて
曲を止めた。
「………何だっていいじゃない。」
「あ、ご、ごめん…………。」
「もう明美ってば…………中井さん、曲を聴いている最中に明美がごめんね?」
明美の双子の妹である直美が亜理紗に謝った。
「………次から気を付けて。」
そういうと亜理紗は椅子から立ち上がり、教室を出ていった。
「………中井さん、とっつきにくそう………。」
「アンタ、良くも懲りずに声をかけるね。」
「だって……友達の1人や2人、居た方がいいんじゃないかなぁ?って。」
「たまには思い止まることも必要よ、アンタ。」


学校の屋上にあがった亜理紗はスマホを取り出した。
「はぁ………満月ちゃん、癒される…………。」
公式HPの有料会員クラブに登録している亜理紗はスマホの待ち受けを見て、顔をほころばせた。
「満月ちゃん、綺麗で美人だなあ………。
綿貫さんもカッコいいし………。
はぁ………今度のライブ、絶対に抽選当たってみせるんだから………!
そのためにもバイト頑張らないと………!!」


…………放課後になり、亜理紗はバイト先であるメイド喫茶に向かった。


「お帰りなさいませ、ご主人様!」

学校にいた時とは打って変わって満面の笑みを見せる亜理紗は、
客を見て驚いた。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「へ、へーき……………。ここで一休みすれば何とか………。」
物吉の肩を借りる形で、何処かぐったりとした表情をしている満月の姿があった。

「熱中症ですか?すぐにお席にご案内しますね。」
母親が内科医である亜理紗はそういうと、満月と物吉をテーブル席に案内した。
「店長、経口補給液をお願いします。
後、タオルと氷と、それから扇風機も。」
手慣れた手つきで指示を出す亜理紗に物吉は感心していた。
「結構軽い熱中症なので、経口補給液を飲んで一休みすれば大丈夫ですけど
かかりつけのお医者さんに相談してみてください。」
「ありがとうございます。随分と慣れた手つきで指示を出しますね。」
「私、母親が内科医でこの時期になると熱中症の患者がよく駆け込んでくるので、
慣れたんですよ。」
「そうですか。」
「……今日は真夏日ですからね、満月ちゃんぶり返したんですか?」
「そうですね。ここのところ忙しかったから、ロクに休んでいなかったかもしれないです。」
「なら、ここでしばらく休んでいってください。
応急処置はしておきます。」
「ありがとうございます。」
「ありがとう…………。」


それから数十分ほど経ち、満月は亜理紗の応急処置を受けてとりあえずは回復した。
「………あ、若旦那様。」
「満月ちゃん、大丈夫!?ここに駆け込んだって聞いたけど、熱中症は平気かい!?」
「大丈夫です………こちらのメイドさんが、適切な処置をしてくれたので。」
「そうか、ありがとう!!」
亜理紗は駆け付けた芳樹に手を握られ、ブンブンと振られた。
「あ、いえ、そんなお礼を言われるほどのことはしていないです………。」
「ありがとう。満月ちゃんに何かあったら、俺は発狂しているところだったよ。」
「若旦那様、大袈裟過ぎです。」
「でもそれだけ、満月ちゃんのことを愛しているってことなんですよね。
凄いと思います。」
「ところで、君、名前を聞いてもいいかな?」
「え?あ、はい。中井亜理紗です。」
「中井………ひょっとして、中井内科クリニックの?」
「あ、はい。中井内科クリニックは母が経営しています。」
「とても評判がいいと聞いているよ。
もしよかったら、これを受け取ってくれるかい?」
そう言うと芳樹は数枚のチケットを亜理紗に渡した。
「今度のライブの最前列の席だよ。満月ちゃんを助けてくれたお礼。」

「あ、あ、ありがとうございます!!」

芳樹からチケットを貰った亜理紗はよっしゃぁあ、とガッツポーズを取った。



続く。
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