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ACT1-(7)

モスラの変身を解いた深愛は国道にそのまま着地した。
全身はボロボロ状態であるが、意識はしっかりとしている。
「…………最後の最後に熱線吐いてくれちゃって………。」

「海堂一佐、御無事でありますか?」

ヘリコプターが着陸し、三等海曹が中から飛び出して生存を確認した。

「すぐに手当を………。」
「あ、大丈夫。これぐらいの傷なら、G細胞の効果ですぐ治る。」
深愛の言葉と同時に、傷がみるみるうちに癒されていく。
「……………ホント、こういう時ってこの体便利だよね………。」

パンパン、と体についた土埃を払いながら、深愛は立ち上がった。

「…………怪獣の遺伝子を人間の受精卵に組み込むM計画………ですか。
非人道的な行為だとは思っています。
ゴジラを倒すためだけにどれぐらいの受精卵が犠牲になったのか。
自分には想像がつきません。」

「それでいいんだよ…………普通はね。
でもそれぐらい、防衛軍も追い詰められていたんだと思う。
防衛軍の総力をもってしても、ゴジラは倒せなかった………。
だから、人間の知性を持った怪獣を生み出そうとした。
でも、計画はなかなか進まなかった………。
人の身で怪獣の力をコントロールするなんて、無理があったんだよ。」

「だけど、海堂一佐という成功例が生まれてしまった。M計画は成功してしまったんですよね………。」
「………うん。」
肩を背負ってもらいながら、深愛はヘリコプタ―に乗った。

「……………私という存在が人間にどういう影響を及ぼすかわからない。
……今でもわからないな。母さんがどうして、私を人間として育てようとしたのか。
深愛と言う名前をつけたのかも。」

ヘリコプターは深愛達を乗せ、姫百合市にある避難所に向かった。


「………あ、深愛!!」
避難所に到着すると、涼子が駆けつけてきた。
「深愛、出動していたの?」
「まぁね。」
「何か凄い疲れた顔をしているよ?」
「………まぁ、色々とあってね。」
「私、何か飲み物持ってくるね!」
そういうと涼子は飲み物を貰いに、深愛から離れて行った。
「………お知り合いですか?」
「クラスメイト。」
「………そうですか。良い性格の方ですね。」
「何も知らないからね。
………でもまぁ、私の体質のことを知ったら恐れおののくと思うけど。」
「それはわかりません。いつか打ち明けられたらいいですね。」
「………うん、まぁね。」

続く。

ACT1-(6)

バババ………とテレビ局のヘリコプターが現場を避難所に中継していた。
モスラに導かれるように、南東へ移動するバラゴンを避難所の人間達は見守っていた。

「何で殺さないんだ!?」
「怪獣は大きいだけで、人間の経済を麻痺させるのに!?」

「………何よ………ただ地中から現れただけなのに、そんなこと言うの………?」
「涼子、落ち着きなさい。」
「気持ちはわかるけど、あの怪獣が地震の原因になったのもまた事実なのよ。」
健三と瑞枝に抑えられながらも、涼子は怒りをあらわにした。

「怪獣を始末するかどうかは防衛軍が決めることだ。
私達民間人は黙っているしかないんだよ。」
「だけど………!」


南東の山中に向かったモスラはバラゴンめがけて糸を放った。
バラゴンは熱線で糸をほどこうとしたが、それよりも早く全身に絡みつく。

「………よし、睡眠剤を撃て!!」
「はっ!」
防衛陸軍の青柳一等陸佐の指示で、戦闘機は睡眠弾を打ち込むため照準をバラゴンに合わせた。
バラゴンは最後の抵抗をするかのように、モスラめがけて熱線を吐いた。
「気にするな、撃てぇ!」
青柳一等陸佐の号令と共に、睡眠弾が発射された。
睡眠弾はバラゴンに命中し、速効性の睡眠薬が体内を駆け巡る。
体がふらついたバラゴンはそのまま地面に倒れた。


「………目標、沈黙しました。」
「よし、このまま怪獣島に移送する。ワイヤー準備!」
「了解!」
「それと海堂一等海佐の回収も忘れるな。バラゴンの攻撃を直に受けたからな。」


続く。

ACT1-(5)

地響きが鳴り、アスファルトの道路を突き破って地中からバラゴンが飛び出してきた。
「…………出るよ。
山中まで誘き出して、そのまま睡眠剤を打ち込んで。」
「了解です、お気をつけて!」

扉を開けて、深愛はヘリコプターから飛び降りた。
光の粒子に包まれ、深愛は人の姿から怪獣モスラに変身を遂げた。


地中から飛び出したバラゴンは空を飛ぶモスラに気が付き、威嚇した。
モスラはバラゴンに挑発を仕掛ける。
挑発されたことに気づいたバラゴンは怒りの表情を見せ、モスラめがけて熱線を放った。
だが、空を飛ぶモスラはそれをかわすと鱗粉攻撃を仕掛けた。
発散された鱗粉は空気中で爆発し、バラゴンに当たる。
モスラは翼を羽ばたかせると、南東に方向を変えた。
バラゴンは自分が誘導されていることに気づかず、モスラの後を追いかけた。

「…………よし、バラゴンが海堂一佐に食いついた。」
二大怪獣の様子を見ていた防衛空軍は戦闘機に行動をするよう指示を出した。
「バラゴンが道をそれるようなら、ミサイルで軌道修正しろ。」
「了解です。」
モスラの後を追いかけるバラゴンの背後を、戦闘機にいるパイロットは照準から見ていた。




続く。

ACT1-(4)

姫百合市内に避難勧告が出され、市民達は防衛軍の指示の元
荷物を持って避難所に移動していた。

「…………震度5強を計測したのに、揺れが起きないなんて………。」
「怪獣の仕業かな?」
「やめてよ、この間、怪獣が出現したから慌てて避難したら小さい奴だったんでしょ?
今回もそうなのかなぁ………。」

「……………。」
「どうしたの、涼子。」
「……深愛の姿が見えないな、って思って。」
避難所に到着した涼子は深愛の姿を探したが、見当たらなかった。
「どうかしらね………海軍だから、陸は管轄外だと思うんだけど……。
案外若いから色んなところに引っ張りだこにされているかもね。」

「………そうなのかな。」
「まあ、何か用事でもあればここに来るだろうし………。
そんな心配することはないんじゃないかな。」

健三の言葉に涼子はそうだね、と呟いた。


ババババ……と防衛軍のヘリコプターが姫百合市の上空を飛ぶ。
「…………上空からは見えない、か。
地中に潜り込んでいるのかな。」
「………どうします?ミサイルかなんか撃って誘き出すとか。」
「さすがにそれは止めて。何にもなかったら弾が勿体ない。」
「はは、冗談ですよ。……ここに怪獣に変身できる化け物いるんですから。」
「はいはい。化け物で結構だよ。」
操縦士の言葉に深愛はため息をつくと座席に座った。

「………で、移動しているの?」
「東西の方に移動していますね。
………別に食料を求めて移動しているというわけではないようです。」

「………じゃあ、何処へ行って何をしようとしているのかはわからないと?」
「そうですね…………。」
「………となるとむやみやたらと、駆除するわけにもいかないなぁ………。
怪獣島に連れて行くか………。」

「後1匹か2匹で定員オーバーになるって言っていたんですけど、良いんですか?」
「良いの。
どうせ、長期にわたる経過観察を済ませたら自然に放牧するんだからさ今回もそれで行こう。」

「了解です。」

続く。
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