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ACT3-(2)

…………アクア・ファンタジア。

水族館と遊園地が一体化した桜庭市最大のテーマパークである。

「予想はしていたけど、人が多いな………。」

「そりゃ、休日だからな。」

本日のメンバーは芳樹、満月、綾人、美穂に加えて守り刀の小狐丸と物吉に鳴狐、
美花、美鳥、美風、美月の11人である。

「ねぇ、あれって綾人さんと芳樹さんに満月ちゃんじゃない?」
「ホントだー!!」

「え、うっそぉ!?本物!?」

受付に並び、談笑していた来援客達は芳樹達を見て黄色い歓声をあげた。

「お待たせしましたー……何名様ですか?」

「大人7人に子供4人で。……あ、乳幼児は無料でしたね。」
「は、はい。」

受付嬢からチケットを貰い、園内に入場すると美穂は美月をベビーカーに乗せた。

「……………。」

「………鳴狐、どうした?」
「視線が気になって仕方がない。」
「鳴狐さん、こういうところ嫌いですか?」
「大事な人と見に来るのは楽しい。………今のところは。」
「……………お前の人嫌いは今に始まったことじゃないからな。」

「あ、ナッキー、こぎにポンポンされた!」
「いいなぁ………。」
「パパ、ポンポンして!」
「はいはい。」

「………さすが子煩悩な綾人だな。」
「芳樹も子供ができたら、絶対子煩悩になるぞ。」
「確かにそれは言えているわね。満月ちゃん大好きっ子だもの。」
「……美穂さん、褒めているのかな。それは。」
「褒めているのよ、これでも。」
園内に展示されている生物達を見ながら、芳樹達はゆっくりと歩いた。



続く。

ACT3-(1)


…………とある昼下がりの午後。綿貫家の別邸にて。

「満月ちゃん、準備はどう?」
「はい、ばっちりです!」

芳樹と満月はキャリーケースに荷物を入れると、玄関の鍵をかけた。

「まとまった休みが取れて良かったですね。」

物吉の言葉に満月はうん、と頷いた。

「さて、と。そろそろ、来るはずなんだけど………。」

「芳樹おじちゃん、満月お姉ちゃん!!」

「物吉ー!!」

「おじちゃん、お姉ちゃん、元気だった?」

美花、美鳥、美風の3人が元気よく駆け寄り、芳樹達に抱き着いた。

「お久しぶりです、美花様、美鳥様、美風様。」

「こら貴女達、いきなり抱き着くのはやめなさいって言っているでしょ?」

「美月ちゃんもお元気そうで………美穂お義姉様。」

「満月ちゃんも相変わらずねぇ。………無理していない?」


「何かあったらすぐに周りに訴えるんだぞ、満月。」
「はぁい。綾人お兄様、心配性なんだから。」

「…………まあ、貴方のシスコンは今に始まったことじゃないからいいんですけど?」


「………………。」

「……美花ちゃん、何があったの?」

「ううん、いつものことだよ?パパが満月お姉ちゃんのこと大好きだー、って言っているから
ママは拗ねているだけ。」

「確かにいつものことだな、それは。」

「ねぇねぇ、それより早く行こうよ、アクア・ファンタジアに!!」

美花の言葉に綾人ははいはい、と頷くと車の扉を開けた。


続く。

ACT2-(13)

第2部が終わり、会場から観客達が退場していくなか、芳樹達は控室に向かった。

「………あ、芳樹さん!綾人お兄様達も!」

「お、智久も来ていたのか。」

「お久しぶりです、皆様方。」

「おう、久しぶりだな。
………しっかし何度見ても鶴丸は別嬪さんだなぁ、おい。」

「やらんぞ、俺に贈られた守り刀だからな。」

「満月ちゃん、初日お疲れ様。」


芳樹に頭を撫でられて、満月はえへへと笑った。

「あー、羨ましいねぇ。」


「まだ俺らは独身を満喫したいからいいけどさ、
将来のことを考えると芳樹も満月ちゃんも大変だよなぁ。」

「そうですよね…………世界を背負って立っているんですから。」

「…………重たいんだよ、変わるか?」

「え、嫌ですよ。僕、重すぎるのは嫌いなので。」
「あはは、ほれ、明日も早いんだろう?皆、公演に備えてぐっすり寝れよー。」
不知火の言葉に全員ははーい、と答えた。






「…………………眠たくなってきちゃった…………。」
「今日は初日だったからね、はい、満月ちゃん。」
「お邪魔しまーす。」

満月は芳樹の背中に乗ると、満面の笑みを浮かべた。
「何か小さい頃を思い出しますね、芳樹さん。」
「そうだね。遊園地に行った時、満月ちゃん転んで泣いて俺がおぶったんだよね。」
「大した怪我もしていないのに、綾人お兄様達、救急車を呼ぶだの入院させるだのと言ってくれて。」

「あら、極度のシスコンじゃないの。貴方。」
「…………まあ、確かに歳が離れているとどうしても甘く見てしまうからなぁ………。」

「そうそう、毎日写真を撮ってはアルバムに収めていたもんな。君らは。」
「…………でもまぁ、それも大事な思い出さ。」
「そうですね。」

芳樹におぶられて安心したのか、満月はウトウトと眠り始めた。

「若旦那様、荷物をお預かりいたします。」
「うん、よろしく。」
荷物を物吉に預け、芳樹は満月の寝顔を見るとクスリと笑った。

「今も昔もこの可愛い寝顔は変わっていないなぁ………。」



続く。

ACT2-(12)


沖田総司を巡る幕末天狼傳の第1部は何事もなく終了を迎えた。

第2部のライブは20分の休憩を挟む形で行われることになり、
観客達はトイレ休憩に行ったり、飲み物を買って時間を潰していた。


芳樹達はペンライトの電池を確認し、赤色にセレクトした。

「……皆、考えることは一緒なのね。」
「そりゃもちろん、満月が大好きだからな。」
「あら、私と満月ちゃん、どっちが好きなのかしら?」
「両方に決まっているだろ……まったく、究極の二者択一は止めないか。」
「綾人兄ちゃん、顔が赤いよ。」
「抓るぞ、幸人。」
「もう抓っているじゃんかー!」

綾人と幸人のやり取りに芳樹と智久は腹を抱えて笑った。


………そして、場内アナウンスが流れ、会場は暗くなった。

「………よし、来るぞ………。」


イントロが流れ出し、曲に合わせてライブ衣裳に身を包んだ満月達が舞台に登場した。
MCタイム(本日の禊も含み)を挟み、歌い舞い踊る満月達に合わせて観客達はペンライトを振った。



そして客降りの曲が流れ、満月達は舞台から観客席に降りた。


芳樹達の姿を見つけた満月はパァ、と笑顔になりウィンクと投げKISSをした。

「ぐはぁ!!」

「ちょっと、芳樹君。鼻血を出さないの、みっともない………。」

慣れた様子で堀川がティッシュを取り出し、芳樹の鼻にあてた。

「め、面目ない………。」

「綾人も、鼻血出さないの。………この服、誰が洗濯すると思って?」
「す、すまない………。」

ライブの時間はあっという間に終わり、トリの曲まで歌い終わると観客席から拍手が送られた。


続く。

ACT2-(11)

「……………あ、若旦那様達。お待ちしておりました。」

芳樹達が桜庭市営文化ホールの劇場に入ると、
守り刀である和泉守兼定と堀川国広が待っていた。

「よ、和泉守、堀川。久しぶりだな。」

「智久様、お久しぶりです。」

「………何で堀川達がここに?」

「ちょっと、闇呪が現れてな。お嬢様の勘が当たったんだ。」

「そうだったのね。お疲れ様。」

美穂が労いの言葉をかけると2人は笑顔を見せた。

「若旦那様、キャーキャーし過ぎてない?」

「キャーキャーし過ぎてると思うけど、清光。」
「あはは、それは確かに言えてるなぁ。
缶バッジガチャ、俺と芳樹は満月ちゃんが当たったが他の皆は外れだ。」
「皆、良い性格しているんだけどなぁ…………。」

「…………若旦那様もタチが悪いですぞ。」

「……おぉぅ、長曽祢がそんなことを言うのか?」

「お前、いい加減蜂須賀とくっつけよな。」
「な、俺に蜂須賀は似合いませんし、若い連中は若い連中とくっついた方がいいでしょう!?」
「若旦那様に向かって無礼だぞ、貴様!」
「もー、長曽祢兄ちゃんも蜂須賀姉ちゃんもピリピリしすぎー!!」
「……賑やかしいのがさらに賑やかになった………。」

「お、奥様、落ち着いてください…………。」

「……とりあえず、そろそろ始まる時間ですし、座りませんか?」

鶴丸の言葉に芳樹達は席に座った。



……そして、場内アナウンスが流れ、舞台が幕をあげた。

続く。
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