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ACT2-(6)

涼子の話を聞いた健三はうむ、と頷いた。
「涼子がそんなに熱心に言うのなら、行ってきなさい。
若いうちに色々経験しておくのは悪くないことだ。」
「やった、ありがとう、パパ!」
そういうと涼子は健三に抱き着いた。
「深愛ちゃんについていくのはいいけど、怪我や病気には気をつけなさいね。」
「はーい、わかっていますって。」
「医療行為は時に危険な場所で行う時もあるからね。
のほほんとしたところばかりで行うのは医療従事者としては甘いよ。」
「うん!」
「そうと決まれば、後は海堂さんのお父さんを説得するだけだね。
自信はあるのかい?」
「もちろん!!」
「じゃあ、しっかりおやり。」
「はーい!」

…………それから2日後。深愛と涼子は防衛海軍基地に来ていた。
「………何でここから?」
「インファント島までの直行便はないからねぇ。
………というわけで、私の船を使って行くんだ。」
「………え?船って………護衛艦?」
「うん。一応、自分の船を持ってはいるんだけど、ほら。色々とやかましいからさ。
艦長代理を任せているんだよ。普段は。」
「…………深愛、ホントに大変だねぇ。色々やっかみがあるっていうのは。」
「ホントに………。」
「てなわけで私の船、イージス艦『しののめ』にようこそ、涼子。」
「ぶ、ふぅ!?い、い、イージス艦!?」
イージス艦『しののめ』を見た涼子はぽかん、となった。
「海堂一佐、お疲れ様であります!」
「お迎えご苦労、藍堂二佐。
………あ、この子が言っていた薬師寺涼子。」
「初めまして、艦長代理を務めている藍堂氷雨二等海佐であります。」
「は、はい、初めまして、薬師寺涼子と言います!」
敬礼をして挨拶をした氷雨に涼子は会釈をした。
「普段は学園都市にいるからさ、ここにはなかなか乗れないんだけど……。」
「何を仰いますか、非戦闘時は学生として日常生活を満喫せよという御父上のお考えです故。」
「…………藍堂さん、本音は?」
「まあ、正直に言うと戻ってこいって感じなんですがね。
ただ、色々とやっかみが五月蠅いんですよ。
私としてはだからなんじゃい、って話なんですが。」
「藍堂さん、強いんですね!」
目を輝かせる涼子に氷雨はうふふ、と笑った。
「それでは参りましょうか、インファント島に。」
「あの、本当に大丈夫ですか?涼子さん。」
「大丈夫よ、のほほんとしたところで医療行為しているようじゃ、
医療従事者としてはやっていけないってパパが言っていたもの。」
「………いえ、あの、吸血植物があるので気を付けてくださいね。」
「………………………え。」
「それを先に言わないで、どうするの!?」

平和に行けると思ったインファント島であったが、そうでもなかったようである。

続く。

ACT2-(5)

2人が周囲を見回すと、ひらりと何かが飛んできた。
「え、何々?」
「……………………。」
深愛と涼子の前に現れたのは、小さい蛾の怪獣に乗った小人サイズの少女2人であった。
「うわ、小さい!…………って深愛?どうしたの?」
「ひょっとして………インファント島から来たの?」
「………はい、そうです。」
「私達は貴女を探していました。海堂深愛さん。」
「…………え、探してたって………もしかして深愛がさっき言っていた先住民?」
「そうです。私はアミ。こちらは妹のティエです。」
ペコリと会釈する2人に涼子もつられて会釈した。
「……………何をしに来たの?」
「1度、インファント島に来ていただきたいのです。」
「待った待った。話が見えない。順番を追って説明してちょうだい。」
「………うん、涼子の言う通りだ。いきなりこういう場所でそんなことを言われても、困る。
それに私達が降りないと、不審に思われる。ここは場所を変えよう。」
「わかりました。」
「ええっと、そうしたら何処に行くの?ここからなら、私ん家が近いけど。」
「………いいの?」
「いいのいいの、気にしないで。」


薬師寺家。

夜遅くにも関わらず急にやってきた深愛を瑞枝と健三は暖かく受け入れてくれた。
「夜分遅くに失礼して本当に申し訳ありません。」
「いいのよ、気にしないで。お友達を連れてきてくれて嬉しいわ。」
「何もないけど、ゆっくりしていきなさい。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、私の部屋に行こうか。」
涼子の一声で深愛は彼女の部屋に向かった。


「……………で、本題に入っちゃうけど…………インファント島で何があったの?」
「16年前、日本から海堂詩織さん率いる防衛軍の特別研究チームが来た際、私達先住民は
最先端の医療物資と引き換えにモスラの遺伝子を提供しました。」
「まさか、ゴジラを倒すためだけに人間の受精卵に怪獣の遺伝子を組み込むためだったとは思ってもいなくて……。」
「………よく、遺伝子提供したよね?」
「言語が通じていなかったって言うのもあるけど、
先住民の方も最先端の医療物資を使わざるを得ない状況になっていたんだね?」
「はい。日本では廃れた流行り病が先住民の間で流行り、最先端の医療物資を使わなければ
全員が死んでいた……とそう聞いています。」
「………で、何で今になってモスラは深愛のところに貴女達を遣わせたの?」
「………実はモスラの寿命が尽きかけているのです。」
「ええ!?」
「……そっか。代替わり………。」

「そうです。モスラの代替わりが行われようとしているのですが、死ぬ前に
貴女に会いたいと。」
「会って、どうしたいの?話でもしたいの?」
「はい、そうです。」
「………………そっか。普通に考えてみればそうだよね、自分の遺伝子が人間に使われたんだもの。
そりゃ、話したくもなるって。
深愛、私は行くべきだと思う。防衛海軍に話をしてさ。」
「そうしたいのはやまやまなんだけど、私、日本を守るための要なんだ。
そう簡単に離れるわけには………。」
「1日ぐらいなら問題ないって。ゴジラが上陸したらわかるようになっているんでしょう?」
「…………そりゃまあ、ね。」
「別に深愛の存在を否定しているわけじゃないんだからさ。ここはほら、里帰りって言うのも変だけど
会った方が絶対良いって。
お父さんの説得は私もするから。
というか、私もインファント島に行く!それなら問題ないでしょう?」

「………え、えぇ?でも、急にそんなこと言われたらお父さんとお母さんの許可いるんじゃ……。」
「ちょっと相談してみる!」
言うが早いか、涼子は部屋を飛び出すと両親の元に向かった。



続く。

ACT2-(4)

その後も難なく肝試しをクリアした深愛と涼子は屋上に向かった。
「うわぁ、絶景かなぁ。こういうところってなかなか来れないよね。」
「確かに。………えぇっと、スタンプはっと………あ、あったあった。」
用紙にスタンプを押した深愛と涼子は、屋上から見える学園都市の夜景を眺めた。
「………そういえば、何だっけ。ここの怪談。」
「確か夜中に来ると、何かがやってきて何処かにさらわれるとかどうとか……。」
「極端な話、夜中に来ると足元が危ないから気をつけろって話だよね。」
「まあ、怪談って大体、
いつまでも学校に残っている生徒を帰らせるための嘘だとか何とかっていう話も
聞くし。」
「そうだね。大体そんなもんだね。」
「…………でもここってさ、案外良くないものもあったりしない?」
「例えば?」
「悪気のない邪気とかそういうの。」
「…………ああ、それエンジェル様とかコックリさんとかそういうのね。」
「深愛的にはどう思う?」
「ど素人が手を出したらまずいけど、その手のプロがやると違ってくるからね。」
「………え?やっぱり、プロいたりするの?」
「海外の先住民となると、怪獣を神様扱いするからね………。」
「………ああ、確かに何か先住民って信心深いというか信仰深いというか…………。」
「私に組み込まれた遺伝子元の怪獣はモスラって言うんだけどさ。」
「うん。………え?モスってことは………蛾の怪獣?」
「そうだよ。」
「…………………へぇ。」
「モスラは南洋諸島にいるとかなんとかっていうのを聞いたことはある。」
「…………そうなの?え?じゃあ、今もいるってこと?」
「みたい。モスラの遺伝子を最先端の医療物資と引き換えに入手したって聞いたよ。」
「……………ひょっとして、先住民とですか?」
「ひょっとしてなくてもそうです。」
「……………まあ、そりゃ開発途上国の先住民程最先端の医療物資は欲しいよね………。
でもそれにつけこんで入手するなんて、タチが悪いのね。」
「それだけ切羽詰まってたんだよ、当時の防衛軍は。」
「じゃあさ、今も先住民怒っているのかな?」
「どうなんだろうな…………わからないよ。行ったこともないし。
行こうとは思わないし。」
「………そりゃ、複雑だよね………。
自分の元になったオリジナルのところに行くと、先住民に何て言われるか。」
「それなんだよ………。」
「深愛も色々大変なんだね。
……………ところで、何で海軍なの?モスラ、空を飛べるなら空軍じゃない?」
「私、海中戦もできるから。水中モードになれるんだよ。」
「嘘ぉ!?マジで!?」
「マジで。さすがに陸は専門外だけど、
空と海両用できるってことで海軍の方が良いだろうって父さんが。」
「…………あー、なるほどね…………。」
その時、ふわりと風が舞った。
「……………そろそろ戻ろうか。」
「そうだね。」


「…………待ってください!」
「貴女達に聞きたいことがあります!」


「………え?」
「へ?」



続く。

ACT2-(3)

自分の椅子に座ると深愛はふぅ、とため息をついた。
「母さんが怪獣の遺伝子を人間の受精卵に組み込む研究をしていたっていうのはホント。」
「………ホントなんだ。」
「うん。でも理由がないわけじゃないよ。
ギリシャ神話に出てくる記憶の女神のムネモシュネの頭文字をとってつけられた計画があったんだ。
それがM計画。」
「………M計画?」
「そう。日本に何度も上陸しているゴジラを倒すためだけに、
怪獣の遺伝子を人間の受精卵に組み込む計画。」
「………ゴジラ………。聞いたことがあるかも。
おじいちゃんおばあちゃん世代の時に、人間が行った核実験から生まれた悲劇の存在だって。
でも、それと同時にあらゆる兵器を寄せ付けぬ脅威の破壊神だって。」
「そ。元々は大戸島の海の生物の名前から由来が来ているらしいけど。
とりあえず存在自体が天災でいかなる存在であろうと、
圧倒的破壊力で蹂躙するっていうのがゴジラの特徴。」
「……人災によって生まれた天災で、異常気象みたいなもの?」
「うん、そうだね。
………まあ、ともかく。ゴジラを押し返すのではなく、打倒を考えていた当時の防衛軍も、
この計画に賛成。
ただ、論理的な問題やら何やらで秘密裏に研究チームを特別編成して、
極秘に計画を実行、実践していったんだ。
……だけど16年前の研究事故で資料もろとも施設は全焼、
犠牲者は出なかったけどたくさんの負傷者を出したことから、
計画は凍結。研究チームも解散となった。ってわけ。
で、私は研究唯一の成功例として防衛軍に所属することになりゴジラ討伐のために
任務をこなしているわけ。」
「これが世間に知られたら防衛軍要らずになっちゃうね。」
「………驚いた?」
「うん、かなり驚いているよ。………深愛のお母さんがしたことはいけないことだけど、
それだけゴジラが恐怖の対象になっていたんだね。」
「母さんも、両親や親族を立て続けにゴジラの二次災害で亡くしているからね。
ゴジラに対して憎しみを持っていたんだ。」
「………でも、深愛を人間として育てることにしたの?」
「………16年前、ゴジラに襲われそうになった時、私がバリアを張って皆を守ったらしいんだ。
それが心境の変化になったのかどうかわからないけど、私を被検体としてでなく
人間として育てることにした。
でも、やっぱり色々と無理があったんだよ。
怪獣と人間の体を持っているからね、消費カロリーが半端ないんだ。
だから、怪獣に変身した後は薬を飲まないとお腹がものすごく減っちゃうし。」
「………あ、バラゴンの時に言ってた薬ってそのことだったんだ。」
「そういうこと。」
「…………深愛を前にこう言いたくはないけど、私普通の人間でよかったかも。
食費だけでエンゼル係数が馬鹿みたいになっちゃうもん。」
「気を付けないと食べ放題の店でも出禁になりかねないからね。」
「………食欲半端なくない?」
「できることなら怪獣に変身せずに一生を終えたいんだけど、人間との寿命に差異があるらしくて………。」
「何もメリットだけがあるわけじゃないんだ。デメリットもあるんだね。」
「うん。」
教室をガサゴソとあら探ししていた涼子はスタンプを見つけるとにんまりと笑った。
「でも聞けて良かった。怪獣に変身できる力を持っているから、深愛は一佐になったんだね。」
「………まあ、望まない結果にはなっているけどね。」
「じゃあ、このことは私と深愛だけの秘密だね。
公にしちゃったら、深愛は生きづらいもん。」
「………………ありがとう、涼子。」

続く。

ACT2-(2)

夜になり姫百合大学付属高等学校の校庭には、全校生徒の半分ぐらいが集まっていた。
「………何ていうか、暇人なのね。皆。」
「何やかんやで気にかかるんだ、こういうのって。
でも、スタンバイしている生徒もいるみたいだから大半は作り話だろうけど。」
「そうなの?」
「うん。」
「なーんだ、じゃあ怖がる必要はないってことね。」
「でも、怪獣災害が一般的になっている分、案外人間の手に負えない何かもあったりして………。」
「深愛、怖いよ!」
「じゃあ、それでは肝試しを始めまーす!2人1組になって校舎内を回って
スタンプを押してきてください!
ちなみに校舎の中には脅かし役の生徒がいまーす!」
七不思議研究会の会長である吾妻香苗がそういうと、生徒達ははーいと頷いた。
「……何だろう。こういった類の話よりも怪獣の方が怖いと思うのは私だけかしら。」
「涼子の感覚は至ってまともだと思うよ?」
「……………でも念のために手、繋いでくれる?」
「別にいいけど………。」
そうこうしている間に、深愛と涼子の番になった。
「さて、お次は薬師寺涼子さんと海堂深愛さんね。それじゃあ、行ってらっしゃい。」
香苗に見送られて、2人は生徒玄関に入った。

懐中電灯のライトが暗い廊下を照らす。
「………夜の学校って不気味ねぇ………。」
「怪獣の方が怖いって言っていたのは何処の誰だったっけ?」
「あはは、私でした。」
七不思議研究会が用意したであろう仕掛けに注意しながら、2人は廊下を歩く。
「………うわ、これこんにゃく?食品の衛生上、よろしくないんんじゃ………。」
宙にぶら下がったこんにゃくを避けて、2人は前に進んだ。

「…………………。」
「………………。」
「…………………。」

校庭で貰った用紙にスタンプを押し、涼子と深愛は次に進む。
自分達の教室に移動すると、2人はスタンプを探した。


「………見つからないねぇ。」
「そうだね。」
「…………………………。」
「…………………………。」
「…………………………。」

「……………この際だから聞いてみるけど、深愛さ。」
「うん?」
「………………深愛のお母さん、非人道的な研究をしていたって本当?」
「…………何でまた急に?」
「パパがね、噂で聞いたことあるって言ってたの。詩織さんだっけ?
怪獣の遺伝子を人間の受精卵に組み込む研究をしていたとかしていなかったとか。」
「……………はぁ。やっぱり有名なんだね、うちの母さんは。」
「…………で、どうなの?実際のところは。」

「…………そうだね…………。」


続く。
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