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ACT2-(1)

「ここが母さんの生まれ故郷………………。」
国際空港に到着した翼はシャルルと共に手続きを済ませ、日本に到着した。
「…………でもまぁ、聖闘士候補生が行方知らずになっているっていうのは穏やかじゃないな。」
「そうですね。………考えられるとしたら組織ぐるみの犯罪か……………。」
「ともかく、縁のあるところに行って話を聞くしかないな。」
「………ですね。」


「………ええ、そうなんですよ。数日前までは普通でしたし…………。」
「別にカルト宗教とかにハマっていたわけではないんですね?」
「そうです。日本人は宗教に無頓着だから…………。」
「……………他に変わったことは?
例えば、修行に行くのが嫌になったことを漏らしたりとか。」
「まさか。世界の平和を守るお役目ですからそんなことは………。
あ、でもそういえば。」
「?」

「黒ずくめの男達に声をかけられたって言っていましたよ。
聖闘士の力をビジネスに使わないか、とかわけのわからないことを言われたって。
丁重にお断りしましたけど。」

孤児院で話を聞いた2人はカフェで一休みをすることにした。


「考えられるとしたら、違法賭博か…………。」
「………アテナのために戦うよりも金目に目がくらんでしまった連中の行動か………。」
「……………でも、場所は何処にあるんでしょうね。」
「聖闘士候補生なら、まだ小宇宙の出し方とか教えて貰っていないだろうしなぁ……。
まだ、正規の聖闘士に修行つけてもらっているわけじゃないし。」

「………どう動きます?」
「そうだな……………。」


「………ねぇ、あの2人かっこよくない?」
「モデルさんみたいねー。」
「ねぇねぇ、声かけてみる?」
「ばっか、SNSに取り上げた方がいいんじゃないの?」


ヒソヒソと話をする女性達にシャルルはうーん、と呟いた。


「………………SNSに取り上げるのはちょっとなぁ……………。」
「…………あはは、聖闘士は秘密事項ですからねぇ。」
「………とにかく、ここを出たら、怪しげな場所を片っ端から探すしかないな。」
「………ダルいけど、仕方がないですね。」
「おぅ。」




続く。

ACT1-(9)

そして、時は流れ13年後。

「………………これがペガサスの聖衣…………。」
シオンと双葉の子供である翼はペガサスの聖衣をちょんちょんと突いた。
「………こら、翼。自分の聖衣なんだからもっと大事に扱いなさい。」
「はーい。」
「……………まったくもう、やんちゃなのは誰に似たんだか……………。
絶対シャルルの影響だな。」
「でも、シャルルさんに預けたのは父さんと母さんだろ?」
「確かにそうだけど………。よくまぁ、反抗期も起こさずにここまで成長したものだ。」
「あはは、母さんには敵わないし。」
「ほら、教皇の間に行くよ。シオンが待ってる。」
「うん。」

双葉は翼を連れて、双魚宮を後にした。



教皇の間では黄金聖闘士とシオン、そしてシャルロッテが待っていた。

「……………。」

厳かな雰囲気に翼は緊張感を持つ。

「………さて、翼。修行の方はどうだ?」
「もちろん、順調に怠らずにやっているよ。」
「………ならば、お前に初めての任務を与えよう。」

「は、はい……!」


「日本で聖闘士候補生となっている子供が行方知らずとなっている。
獅子座のシャルルと共に赴き、その原因を調べろ。」

「…………………は、はい!」

続く。

ACT1-(8)

………………そして、聖域での結婚式が行われてから1年が過ぎようとしていた。

聖域縁の病院でシオンはそわそわとしていた。

「シオン、落ち着いて………。」
「アテナこそ落ち着きましょう。」

「だってこれが落ち着いていられるものですか………!」

分娩室を前に、シオンとシャルロッテの2人は椅子に座ったり立ったりを繰り返していた。
それを見ていたモカは冷静に突っ込みを入れる。

おぎゃあ、おぎゃあ、という声がしてシャルロッテはシオンを見た。

「お生まれになりましたよ、元気な男の子です!」

分娩室から助産師が出てきて、シオン達にそう言った。



………………病室にて。

「あぁ、何て可愛いの………まるで兄弟ができたような気分だわ。」
「双葉、よく頑張ったわね。」
「…………うん。」

母親に頭を撫でられて、双葉は自分の横にいる息子を見た。

「…………小さい頃のお前を思い出すなぁ。」

父親の言葉に双葉はあはは、と笑う。

「シオンさん、良かったですねえ。」
「………………いかん、泣きそうだ。」

「ねぇ、双葉。名前は何にするの?」
「……実はもう決めているんです。翼、って言う名前に。」
「まあ、ツバサ!良い名前!」

シャルロッテは翼、と名付けられた赤ん坊の寝顔を見てうふふと笑った。

「これからの成長が楽しみねぇ………。」

続く。

ACT1-(7)

教皇であるシオンと双葉の告白と、結婚は瞬く間に聖域に流れ
お祭りフィーバーとなっていた。

「……まぁ、双葉。ホントに綺麗よ。」
「………ありがとう、母さん。」

双葉の両親はギリシャに移住することになり、その縁で聖域にやってきた。
交際期間がほとんどゼロの状態でいきなり結婚する、と言う話を聞いた時は驚いたが
それでも2人は双葉を祝福してくれた。
双魚宮で母親が式の時に来ていたというドレスを身に纏い、双葉は緊張していた。

「……まぁ、双葉様。お似合いですわ!」
双魚宮の女官達が感嘆の声をあげる。父親はこほんと咳払いをした。
「さて、じゃあ行こうか。双葉。」
「うん。」

双葉は父親と腕を組むとバージンロードを歩いた。
式は滞りなく行われ、シオンと双葉はアテナに永遠の愛と平和を誓った。


「………良いのかねぇ、こんな平和で。」
「まあ、良いのではないか。」
「今のところ、何も起きていないうちに済ませるものは済ませてしまった方がいいのかもな。」

シャウラとヴィゴーレ、アダムの3人は結婚式を見守りながらそう話をした。


「………ま、何にせよ、子供が楽しみだな。」

「それは違いない!」

「………きっといい子供が生まれるぞぉ。」




続く。



ACT1-(6)

にこやかに話をしている双葉とシオンを見て、モカとシャルルは微笑ましい表情をしていた。
「………あの2人、くっつかないかなぁ。」
「………確かにそうですね。我が師も良い顔をしていますし。」

「やっぱりそう思うよね?」

もぐもぐとお菓子を頬張りながら、シャルロッテはモカに言った。

「…………………243年ぶりに再会したんだし、双葉は女の子だもん。
くっつかせたいわね。」

「………アテナ、ホントに9歳ですか?」

「だって、聖域って恋愛の話、あまりしないもの!退屈になるわよ!」
「………………アテナ、どうしたんですか?」

大声を出したシャルロッテに気づいた双葉が声をかける。

「ねぇ、双葉。貴女、シオンのことが好きなんでしょう!?」

「ぶっ、アテナ、唐突過ぎます!」

「な、な…………何を急に………………。」

シャルロッテの言葉に双葉は顔を真っ赤にした。

「だって子供を作るかって話までしていたのだし…………。」
「いやあれはそのぅ…………。」

「………私は構わんが………。」

「シ、シオン!?」
「………はっ、すまない、双葉!」

お互いに顔を真っ赤にする2人にシャルルはひゅぅひゅぅ、と声を出した。

「もういっそ付き合っちゃいなよ、2人とも。」
「そうですね。これはもう明白です。12宮の皆には私の方から伝えましょうか。」

「………モカ!?」
「………ささ、邪魔者はとっとと退散しましょう!おやつタイムも終わったことだし!」
「あ、モカにシャルル、書類は……。」
「もう終わらせてます。後は2人だけですよ。」

それだけ言うと3人は教皇の間を後にした。
2人取り残されて、双葉とシオンは呆然となる。

「…………シオン、あの…………。」
「…………………………………1人の男として好いているのは確かだな。」

「シ、シオン!?」
「私はお前のことを愛おしいと思う。
………もちろん、アルバフィカ自身が蘇ったわけではないことも理解している。
しかし、私は嬉しいのだ。こうして再び巡り会えたことも。

だからこそ2度と失いたくないという気持ちもあるのも確かだ。」
「シオン………。」

「私の隣で、共に歩んではくれまいか?双葉。」

シオンのプロポーズともとれる言葉に双葉は首を縦に振った。

「………こちらこそ、不束者だがよろしく頼む。シオン。」


「ひゅぅひゅぅ!とうとうくっついた!」

「さて、ホントに12宮の皆さんに伝えますか。」

「結婚式の準備だってしなくちゃいけないわね。」


こっそりと3人が見ていたことにシオンと双葉は気づいていなかった。



続く。
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