すきになるのがこわいよって言ったら
どうしてこわいの?って聞かれて
それから
どうしてかの理由を探してたら
なみだが
ぽろぽろぽろとこぼれた
それでも
目を見て
ずっとことばを待ってくれて
それだけで
あんしんした
どれくらいかたって
ようやくことばがでてきた
“すきになったら
そのあとかなしいことが待ってるから”
そう言ったら
ふんわり
優しいうでがだきしめてくれた
でもわたしは
いま泣いているから
そのうでにあんしんするだけで
こころがもってかれることは
なかった
朝になって
よる、なにがあったっけと回想して
おはよう、と声をかけて
それから
うしろからまたふんわり
だきしめられたとき
ちょっと肩がすくんだ
たぶんこわかった
こんなに優しいのに
優しいからそれでいいってわけじゃなくて
なくて
わたしは
なにがほしいんだろうって
じぶんがわからなくて
ちいさなこえで
お水をくださいって言った
手が離れて
それから差し出してくれたつめたい水
ひんやりのどを通るのが気持ちよくて
お水おいしいねって言った
そっけなさのなかにある優しさは
あんなにぎゅって
わたしの心臓をつかんでいく
あんなにぎゅって
わたしの心臓を離さない
1週間たっても
2週間たっても
ひと月たっても
もしかしたら何年先までも
わたしの心臓をつかまえたまま
それくらいつよいちからをもつ
それくらいたぶん
優しいからだとおもう
優しい目をしてることを
優しいことばをもってることを
知ってしまったからもう
わたしのかんちがいだとしても
それでいいみたいに
なりたってしまうことが
ああなんでわたしは
まだこんなところで
ひとりでいるんだろうね
じぶんが望むほうに足をむけてきたよね
こんなにゆっくり
おなじところをまわっているのに
結局わたしのことを
だれも
だれも
掴めないよね