真っ白

通りすぎていくのが

楽しいのかな

わたしはそれを

楽しいとは思ってないよ

だからきみのくちびるの

記憶にのこるキスをしたい

生まれつきおぼえてた

生まれつき知っていた

キスのしかたをきみに

教えてあげるね

と言って




ぼくも勉強しておくねと言うから

じゃあわたしも勉強してくるねって

言ったらすぐに

やめてって言ってくるきみの

早口になったこえが

かわいかったよ




あんなのだれにも

教えたくないって

思ったほうが負け

楽しそうに笑っている

くらいの余裕が欲しいよね

余裕がないのがたのしそうで

かわいかったきみ

そんなきみの傍にいながら

ねむたそうな目と声が

とくにすきだなぁと

思っていたわたし



きらいなところは

なかったかな

なかったよ

だって

ぜんぶかわいかったもの

ぜんぶ

ぜんぶ

愛おしかった

愛おしくて

苦しかった

なんて

言わない






たいせつなことでも

覚えてないって

わたしが何度

言ったって

覚えてないの?って

ちゃんとこまかく

教えてくれるきみが

やさしくって

ぜんぶちゃんと

覚えてくれてるんだって

うれしかった

だからわざと

いつも忘れたふりをしたこと

























未完成なままの君を抱いて

どこまでも

とべるようなきがした?

してない

この場所から見えるのは

ずっとおなじ景色だ

それでも

それでもわたしは

君のすり抜けるような手を

この指ごとからめて

夜空のサーカスの

空中ブランコから飛んで

目の前をまたたく星

できるだけたくさんかぞえるから



この町にも

ほたるがいるんだって

しっている?


次の晴れた夜に

君を連れていくね

君とてをつないで







かなしいときにはきみのこえを

朝、たのしくばいばいして

ゆるりと過ごした昼下がり

しごとがいそがしくて

3ヶ月も行けてなかったいきつけのカフェへ

やっぱりおいしいなあ

ほっぺたがおちてしまうくらいおいしい

いつものクリームリゾット

おいしいですって言ったら

店主さんがわらってて

しあわせだなあと思った



そのあと

母が用事を作って会いに来た

あずけていたものが

かなしい姿になって返ってきた

お気に入りのものが

こう変わってしまっては

それに加えて

いらないものを渡されては

わたしも笑えない

わたしが忙しくしていて

言いそびれていたことがあって

それに困ることなどは何もないけど

腹をたてている母

わたしだって本当は

言いたいことがやまほどあって

空気を悪くしたくないから

それをひとつたりともつたえず我慢しているのに

なにも知らないで

言いたいことだけ吐き捨てて吐き捨てて

帰って行った

ああ、なんのためにわざわざ来たんだろう

愚痴を伝えに来たの?

なみだも出ない

鏡をみると

けわしい顔のわたしがいた

さっきまでの穏やかなものが

消え去ったことがかなしくて

こんなことのために

わたしの今日があるのかとおもうと

生きていること自体が悲しくなる



よる、あのこが

一瞬だけ会いに来てくれた

貸してくれたものを取りに

一瞬だけコンビニに行って

アイスとおかずを選んで

ポテトチップスをわけあって

じゃあね、ばいばいと

帰って行った

ふれてもいないし

すっぴんがはずかしかったから

そんなに目も合わせていない

だけど

そんなひとときが

汚くなった気持ちを

きれいに洗い流してくれたんでした

ねこになったら

ことばが喋られないから

わたしはただすり寄って

そしたらきみは

ずっと

かわいいって言って

なでてくれるのかなって

ねこになりたいなって

また、思ったよ









ふわりとうかべたこころのうえ

かわいくて

やさしい声がして

わたしのなかにとけこんできた

いじわるもたまにするけど

かわいいからすきだよ

ふわふわのわんちゃんみたいなきみが

かわいいーって

ねこをなでているのが

いとしかったよ

わたしもねこになりたかった

ずるいなあねこは

そう思っていたらつぎの日

わたしのあたまもなでてくれた

ずっとなでてくれた

たいせつってなにか知ってるのかな

きみがわらっているのは

たまにふしぎになるけど

きみがわらってくれたら

なんだかすごくうれしいよ



ほんとうに足りないものなんて

べつにそんなないんじゃない?


今日とっても

しあわせでした

いっぱいたくさんわらった

おなかがいたくなるくらい

わらった

安心した

そんなひとに会った


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