気がつくと冬になっていた。
季節を先取りして卸したはずの上着も、いつの間にか相応しいを通り越して、もはや物足りない。
内側に羊が仕込まれているお気に入りのその上着は、こっそり暖かくなれるので秋にはとても重宝した。
そんなことを考えていたら、今度はもう花粉の季節になっていた。
そろそろあの上着もお役御免だろうか。
逃げたい逃げたい
ずっとそればかりが頭の中を回っている。
回ったまま、季節が何回も巡っている。
特にこの一年間はなんというか、サウナみたいだった。言わずもがなサウナは嫌いだ。
地獄とまではいかない、耐えられる程度のいき苦しさ。
でもそのおかげでやっと辞める決心がついた。
と思っても、その決心はすぐに揺らぐ。
逃げたい逃げるな逃げたい
責任とか、せっかくここまで続けてきたのにという勿体ない精神、名残惜しさとか、これしき耐えられなくてこの先どうするのか、どこに行っても結局は同じではないのかという不安とか。
一方で、その役目は自分ではなくても良いとか、これを続けたところで何が変わるのか、名残惜しさのために浪費するのかとか、器は人によって違うから比べるべきではないとか、逃げでも良いよという。
そういう一巡。
どちらが悪魔の囁きなのかもわからない。
頑張れと言ったり、頑張りすぎるなと言ったり、もうわからない。
その結果考えることを放棄して、忙しさを言い訳に、というかもう何もかもが面倒になって、ただ目の前のことをこなしてとりあえずを凌ぐ。
一番駄目そうなことを続けて、気がついたらまた、あの上着を出しているんだろうか。