夜が明けくる。

耳朶がジリジリと寒気に炙られて、まるで取れてしまうのではないかと云うほどに傷んだ。
手先の感覚も似たようなもので、末端神経の悲鳴が聞こえるようだった。
わずか白んでいた夜の世界は、瞬く間に色彩を取り戻していくように、新たになっていく。
世界がまた、静寂の産声を上げていく。色を以って、それを知らしめていく。
地平線に滲む朱はその血潮に等しい。
呼気は空中で姿を現した。吸い込んだ酸素のみずみずしさよ。
天中に煌めいていた星の影は焼かれて追いやられて。

夜に思いを馳せながら、ゆっくりと目蓋を落として。

冬の日の数を指折り、來たるらいじつに怯える。











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春が来るのは嫌いで春になるのは好きで。
冬が殺されていくのが、何よりも、嫌いだ。