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白になる。


 ぽたりと落ちてきたそれは、雪交じりの霙だった。
 寒いわけだ。おそらく現在の気温は三度くらいだろうか。それ以下になるとこの辺りでは雪に変わってしまうから。
 寒いね。誰かがそばにいるわけでもないのに、ぽつり呟いた。
 手をそっと伸ばす。空を切るそれを濡らすのは冷たいもの。ああ、もう雪に変わってしまう。
 凍えて震える手を、それでも中空に差し出したまま、ただじっと立っていた。
 ここも来週には白に塗りつぶされるのだろう。一面の銀世界。消音作用を持つ雪は、私の息すら消してしまうのではないだろうかと心配した。
 寒さがこの躰を蹂躙しても、私はその手を伸ばし続けた。誰かが握ってくれるわけでもない。それでも白に届くだろうかと、ただ願い、というよりも祈りに近い何かを持って。
 寒いね。ほどなく、ぽたりと雪が手の中に落ちてくる。

 イメージBGM ずどどんP/croak www.nicovideo.jp【ニコニコ動画】【初音ミク】 croak【オリジナル】

小さな町

 この小さな町を劈くように雨が降る。灰暗い世界。冷たい雨は容赦なくこの町と私に降り注ぐ。冷たいモノで私を塗りつぶすように。
 寒い。とただ呟いた声すら掻き消され、耳朶を打つ土砂降りに途方もない迷子になったようだ。ここは、確かに自分が住んでいた町なのに。どうしてこんなにも冷たいものしか、ここには存在していないのか。
 泣きたくなる。この生まれ故郷に見放されたような、羊水の優しさから外郭に放り投げ出されような錯覚。倒錯する感情に、心が、頭が身体が追い付かない。
 やめて。
 いやだ。そんなことを。
 そんなことを思い出したくはないのだ。あの場所に、捨ててきたはずのその感情を拾うつもりはないのだから。

イメージBGM Cocco/小さな町
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