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廃墟と小麦畑

 小麦の海原が広がっていた。黄金色が風に吹かれ波打ち、世界を彩っているようだ。その中腹に廃れて久しい古城が聳え立つ。すでに所々が朽ち果てていようとも、そこにある威厳はいまだ衰えぬことのないまま、そこに凄然と佇む。蔦がその壁を這っても、朽ちおちて城壁が形を失くしても。静謐があった。


五月二十五日、ツイッターより。

愛は怖いから。


 優しく抱かれるのは嫌いだ。そこにある感情に流されることになる。それをまだ自分は知りたくはない。温かさに溶かされて、満たされて、そして喪失を恐れるようになることが何よりも怖い。その情愛を如実に映した瞳に映ることすら怖かった。だから、それくらいならば、冷たさの孕んだ熱だけで良かった。

五月二十九日、ツイッターより。

世界への唄を


 軽やかに唄を唄う彼の人の背をいつまでも眺めていた。世界は黄金色に染まる。空も野も金に輝いて、世界は満たされているようだった。風がささやく音を伴奏のようにして唄うあの人の背を、いつまでも眺めていたかった。けれど世界は不変ではいられない。変わりゆき空ろゆく世界にあの人は飲み込まれていった。


五月二十九日、ツイッターより。

幾度目かのさよなら

さよなら。さよなら。 貴方へ、さよならと何度呟いたでしょうか。 肺の裏側の背骨との間。鎖骨より少しした辺りで渦を巻く棘の痛いこと。 穴があいて、さむくてくるしくて。 何かを埋めて置きたいけれど、私はこれ以上もう持てなくて。 ロボットのような肺を持ちたかった。

『 幾度目かのさよなら』

五月二十七日、ツイッターより。

贄の哭[緇衣の先に]

贄の哭[緇衣の先に]

緇林のおくぞこに
私の眠る象牙の褥が
ひややかにわたしを見ている
私を冱る指がなぞれば
無関心が誦経ように囀る。
私は口さきを吊り上げてみた
蠅はいまかと待ち侘びて
ミズカネは哄笑けたたましく
睥睨する緇衣がせかすように
大鷲は嘆くのを止めない。
あとは、白が舞うだけ


******

けれど捧げられた私は酷く穢れていて
むしろ穢れているからなのか
私をけがした緇に罪を、罰を
ミズカネは甘く、苦く、淫液のよう
無様なさまは、私か緇か
茎に歯を立てられた緇は
蔑みながらも私に愉悦を
与えようとするけれど
もう、そんなものでは、
穢れた私は、悦びはしないのに
手淫も口淫もつまらないから





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用語一覧
緇 くろ 墨染の衣のことを指す
緇衣 しえ
緇林 しりん 多くの僧が集まっている様
誦経 ずきょう 経文を唱えること
ミズカネ 水銀
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