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晩秋


 秋の氷雨ほど寂寞を感じることもないなと、ふと思った。レンガ畳みの公園脇の上り坂の小道をゆったりと登る。
 一見緩やかそうに見えるこの坂だが、中々どうして斜度はある。
 秋も終盤を迎えた銀杏並木からは、雨粒を受けた黄色が重たそうにぶら下がっている。
 もうすぐ、この並木は別の賑わいを見せるだろう。街にイルミネーションが灯されて、その灯りに人々が集まる。
 濡れたレンガ畳が足を取られた。崩れかけたバランスに一瞬ぞくりとしたが、力を下半身に集中させて重心を元に戻し、はっと息を吐いた。吐き出された息は白く姿を現し、くゆりと混じっていく。この寒い空気のなかへ。
 そういえば、傘を持つ手が悴んでいることに気付いた。ああ、もう手袋を出さなくては。あとマフラーも。
 ふと、かすかな振動が傘を伝って手の中に落ちてきた。見上げれば、傘に一枚の黄色がある。終わりを告げる黄色にそっと目を閉じた。寒い秋の雨の日だった。


 イメージBGM なれのはて/梨本P
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