ほたるを見たあと

そのままキミの家へ向かった


“ただいま”

わたしの家じゃないけどそう言って入った

まだここへ来るのは2回目なのに

おじゃましますって気持ちじゃなかった





今まで男の人の部屋に入ることって

そう多くもなかったけど

そのなかで好きな部屋って

今まで一回もなくて

だけどここは唯一

わたしの好きな

男の人の部屋だと思った




ほどよく片付けられた部屋には

ベッドとギターと

ちいさなテーブル

それから君に似合う服がかかってる



カーテンがいつもふわふわ揺れていて

外にはのどかな景色がひろがる


すぐ近くに水路が見えて

その水音が部屋いっぱいに響いてる


近くに田んぼがたくさんあるから

無数のかえるのなきごえがする


水の音もかえるも大好きなわたしとしては

どれもこれも心地よさでしかない


窓辺に座ってレースのカーテンにくるまって

そんな景色をぼーっと眺めるのがすき

ここへ来たらいつもそうしてしまう

こんどはこの家の周辺を

ひとりで探索してみようかな

そんなことを考えてた




部屋に入るなり

我慢できないみたいに

いつもじゃれてくる彼

こうやって部屋に連れ込む女の人が

ほかに何人かいるのかもしれないけど

女がつかうものはこの家に

なんでか何ひとつなくて

扉になっている歯ブラシたてには

君の歯ブラシと

わたしの歯ブラシしかない


戸棚にはわたしが開けた

誰も使ってないコットンしかない



不思議だな

ここには誰も来ないかわりに

君が遠征してるのかな



君とさよならしたあとには

そんなことを考えてしまうけど

君と会ってる間は

そんな邪念はでてこないね



寝そべったままこっちを見上げる君と

上から見下ろすわたし

まっすぐ離さない君の目が

いちばん綺麗で

それがすべてだから

そんな君の目を

わたしもまっすぐに見つめて

離さないんだ



わたしの歯ブラシが

ケースに入ってないとき

歯ブラシは?って聞いてきた君

ただ入れ忘れてただけだよと思いながら

なんで聞いてきたのかなって考える



わたしがトイレのドアを開けっぱなしにする癖を

指摘して笑ってくる



わたしがいつも電気消してって言うから

言われる前にもうちゃんと消してくれる



くっつこうとしたら

それ以上のちからでくっついてくる



今はやめて、なんて

されたことがない

他の人にはよくされたよなぁっておもいだす




だから




無表情で口数の少ない君の

行動とか態度がちゃんと優しくて

わたしはうれしくて安心するんだ



好きなのかなって

そんなことば

結局聞けなかった



でも好きじゃなかったら

こんなところまで来ないし

そんな顔もしないよ






7の月には

花火をしようって

約束した