好きという思いが強すぎて、何一つ伝えられぬまま、結局は完全燃焼する事も出来ず、ただ、燻り続けることしか出来なかった。
それが私の感想。
何度考えても、なにを視点に移し変えても、結局邪魔してるのは『好きという思いが強すぎる』ためだ。
好き、であればあるほど、人は愚かになる。
正確な冷静な判断が出来なくなる。
言葉が足りなかったり言葉が過ぎたり、真に受けたり考えすぎたり。
そして何が大切なのか見失う。
あまり良く思われてはなかったと思う。
お互いに。
そう、お互いの周りに。
それはそれで仕方ないのだが、どうも辛いのだけは抜けきれなかった。
不幸を呼んでる気がして、私以外の全ての人が不幸になっているような気がした。
相手を含めて。
でも相手は含まれてはなくて、どちらかと言えばそれはそう考える私が不幸にしていたのだと今更ながら思う。
だからみんな不幸だったのだろう。
そう、それから逃げ出すことが出来なかった。
突破出来なかった。
『怖いものなし』
そう当時のその人に言わせただけあって、私は怖いものなしな性格だったらしい。
人とズレてるだけで、本当は怖い物はあったのだけど。
当時一番怖かったのは、失うこと。
手に入れるまでは怖くなかったそれが、急激に跳ね上がった。
その人を失うのが怖い。
だから、意見を言わなくなった。
意見を言うことで傷つけるのを何回か見てきたから。
言うからには絶対譲らない。
口に出したからには譲らない。
だから、言わなかった。
あまりにも強く出る意志に、その人が傷つくのが嫌だった。
そしてそれで嫌悪の色をした目で見られるのに耐えられなかったから。
言わなければ頷いていられる。
けれど口にすれば絶対引かない私だから、やっぱり言えなかった。
例えばそこに違うと思ったことがあっても、黙秘するしか出来なかった。
嘘は吐かなかったが、本当のことが言えなくなってはいた。
嫌われるのが、何よりも嫌だった。
それをきっとその人は知らないのだ。
ただ、何も云ってくれなくなった位にしか、思ってないに違いない。
それに気づいたのは随分後だ。
別に分かって欲しかったわけではないが、それに対して苦しませていたのが、非常に苦しかった。
何をしても駄目なんだと、思った瞬間だった。
隣にいる大好きな人が、もし他の人にはいろんな意見を言うのに、自分だけ言わない…なんてことがあれば、やっぱりその他の人とやらにヤキモチを妬くだろう。
私なら妬くだろう。
けれどそれは、どちらも相手のことを思ってのことだった。
その人は私に意見を言う資格ってのを剥奪していた所があったから、とりあえず我慢できる部分は我慢していた。
要は、聞き手に徹しろということなんだと思う。
けれど本来の私はそれじゃない。
どちらかと言えば逆だ。
勿論聞く耳は持ってるとは思うが、やっぱり口出しする方が多い。
だから正直我慢していたし、辛い部分があった。
けれどもそれを良しとしないなら、他の人とやらにも「意見を言うな」という事になる。
それはあまりにも身勝手ではないか。
それなら聞き手タイプの人間を選ぶべきだ。
それをしなかったのは自分なのに、そんな根本的なそれを変えろというのはあんまりだと思う。
よく分からんが。
なんて、毒づいてみたりする。
あちらはあちらで、嫉妬に狂っていた節がある。
その他の人とやらにやけに嫉妬していた。
完全に自分のことは棚に上げている。
正に似た者同士だ。
私は私で怖くて言えなかったし、自分の物差しでしか計れずに「まさかそんな意味不明なことは考えてないだろ」で判断していたから、その苦しみに気付くことなく他の人には口出ししていた。
相手は相手で恐らくは自分にも他人にも口出しすることなく聞いていればいい…いや、他人の話なんか聞く必要はない、位に思ったのだろう。
実際に他人の相談事にすぐ同調しては落ち込む私にその台詞を言われたことがあります。
想ってるのだろうね。
でも、全く伝わらない。
実際それに対して私は嬉しかったと同時に「でも見捨てるなんて出来ない」と思ったのを覚えてます。
それ自体がその人を苦しませるとも思わずに。
ここまで来ると、大好きだけど合わないという言葉がピッタリだと思う。
伝わらない想いが見え隠れするが、けれどやはり何を指すのかわからない。
お互いに何考えてるのか分からないと思っていたのだと思います。
ただ分かるのは、本当にどうしようもなく好きだったという気持ちが在る…ということ。
好きすぎて動けなかったり、逆に傷つけたり。
それでも想いがあったから、やっぱり私達はそこから動けなかった。
悲しい恋愛だなぁ。
馬鹿馬鹿しいなぁ。
私は今は臆病だから、正直二度と恋愛したくはないです。
絆は深かったが、伝える手段が分からなかった。
今も分からない。
素直に云っても伝わらないし、黙っていても伝わらないから。
きっと緊張して、どうすればいいのかパニクって頭が回らないのだと思う。
相手は相手で難解な言葉を出してくるし。
私の常識では理解不可能なそれを、どう足掻いても理解出来ないまま。
無理難題を平気で言うし、我が儘にしか聞こえない。
それを冗談にとればいいのか、本気で聞かなきゃならないのか、もう分からない。
せめて認めて欲しかったと思う。
ただ、人形のように扱うのではなく、私が私だからこそすることを、認めて欲しかった。
それを否定されたときに、別れれば良かったのかもしれんな〜なんて、今なら思うんだけどね。
大好きでも、それは譲ってはならない。
今はそう思う。
だってもしそれを許したら、その人が一番嫌っていたそれに成り下がることを手伝ってしまうことになるのだから。
人の意見を聞かず、自分の意見が全て。
それが通らなければ暴力で廃する。
それが嫌で、嫌で、嫌だったから、泣いてきたはずなのに。
それを知ってる私は、やっぱりそれを許すことは出来ない。
幼いあなたが悲しんだそれを、させるわけにはいかない。
しかもあなたが好きな私に。
それは決して繰り返してはならないから。
だから。
この未来は偶然こうなったのではなく、やっぱり必然なのだろう。
お互いにどれだけ好きでも、別れることは決まっていた。
そうする道を、お互いに自分自身で選び取って来たんだ。
……選べなかったね、共に歩く道を、私達は。
そしてその失敗は、別れた今もう取り直すことは叶わない。
私は焦っていたんだろうな。
ピリオドを自分で打った。
それをしなければ、未来はまだ消えてはいなかったのに。
そう、ここまで来たら引き下がれないと当時の私は思ったが、やっぱりあの時は今ならまだ間に合うだったんだ。
ただ、それが分かっていたとしても、当時の私は歩を止めることは出来なかったろうが。
こう分析すればするほど、悲しくなるし、苦しくなるし、苛立つし、馬鹿馬鹿しくなる。
いいことなしだ。
それでも考えてしまうのは、やっぱり大好きだったからに他ならない。
どれだけ悪態をついても、好きな気持ちは変わることなく胸にある。
ただ、やっぱりそれは優しく過去になったけれど。
多分、きっと。
イマイチ分からんのだが、断言出来んのだが、きっと、ね。
何が正しいのかは、やっぱり分からないけれど、いつかそれが分かる日は必ず来るから。
その日まで、ただ生きていく――…。
耐えられないと思った。
でも耐えた。
それが答えなのだと、思う。