それでもあなたが好きだから。

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始めは、こんなにあなたを好きになるなんて思わなかった。あなたが気になったきっかけは、理由にするには凡そ似つかわしくなくて。



(なのに、)



今では、こんなにも苦しいぐらいあなたが好き、なんて。何度生まれ変わっても、あなたを好きになる。それぐらい好きになるなんて。



『黒崎君の、名前の由来って何?』



聞き取り方によっては、馬鹿にされてしまうだろう名前。漢字を見れば、何て素敵な名前だろうか、と思うけれど。



『大切な一人を護れるように、って意味なんだ』



少しだけ照れくさそうに、でもずっとずっと、誇らしそうに。はにかんで言ったあなたを、今でも覚えてる。



(出来れば、あなたの、その一人になりたかった)



気付いた時には、あなたの視線の先に彼がいて。あなたの隣に彼が居て。嗚呼、あなたの一人にはもうなれないのだと、泣いたことをあなたは知らないでしょう?



「一、護」
「ん?俺のこと呼んだか?」



何気ない日常の1コマ。見慣れたメンバーに、見惚れる程眩しい橙色。振り返ったブラウンの瞳に、込み上げる愛しさと悲しみを押し隠して、笑う。



「ううん。素敵な名前だなぁ、って思っただけ」
「おう、さんきゅ」



そうしてまた、談笑の輪の中に戻るあなたはまだ、気付かないでいて。
思わず呟いた名前に込められた、切ないぐらいの私の気持ちなんて。



end


あなたの一人じゃなくても、あなたを想うことを赦してね