「そんなのお断りだ!!」

「シノノメこればっかりは駄目なのです。聞き入れてください。」

カムイに背を向けて懐からおんぶの紐を取り出した。背中に弟を。前に妹をおんぶすると外へ飛び出した。

「シノノメ待って!」

母の悲痛な声など聞こえない。ただシノノメは両親から離れたいことしか頭になかった。

秘密基地に行くと簡素な寝床に双子のカンナをおろした。双子は両方同じ名前カンナ。女の子は、カナと呼んでいる。

「シノノメ見つけたぞ。」

「サイゾウ。父さんの命令か。」

「いいえ。命令ではございません。俺はあなたが心配だから探したのです。」

弟がくずりだし泣き出した。同時に妹も泣き出した。

「よしよーし。泣き止め。ほーらサイゾウの顔だぞ。」

更に泣き出した。サイゾウが懐からミルクを取り出し双子の口に運ばせる。

「シノノメはカナに飲ませろ。俺がカンナを見よう。」

「おぅよ。」

言葉もぶっきらぼ。顔も怖い。リョウマの親友に言われた通りにする。双子は寝息をたてた。

「シノノメあなたには無理です。両親の言う通りになさい。」

「やなこった。いくらなんでもそれはねぇよ。というかサイゾウ見ていたんだったら俺の味方になれよ!」

シノノメが人指し指をビシッとサイゾウに向けた。サイゾウはぷぅと笑った。

「泣き止まない赤ん坊に手間取ってよくいえるな。」

「仕方ねぇだろう。ミルクをわすれちまったんだから」

カナが泣き出した。

「今度はなんだ。げぇくせぇ。」

「ほらオムツどうぞ。」

「あぁありがとな。カナ替えような。」

双子を寝かしつけたあとまたシノノメはほっとした。弱くて無防備な双子の赤ちゃん。シノノメの弟と妹の寝顔が綺麗だと思った。

「あなたには双子の世話が出来やしない。貴方はまだ子供。産まれた赤ん坊は秘境に育つことが決められているのです。」

「だからと言ってどうして双子とも別の秘境にいさせようとするだ。どうして俺の秘境にいちゃいけないだ!」

両親と言い合いになったのはそれだった。両親は産まれた双子をシノノメのいる秘境と別の秘境に預けようと話していた。それを立ち聞きをしたシノノメが割って入って猛反対した。弟と妹を同じ秘境にいられないかと訪ねるとカムイから衝撃のことを聞いた。

「秘境に暮らす人間はほとんど秘境を創った星竜たちの手で空気から造られた存在です。秘境にいれば並外れた力と生命力で見えない敵の襲撃から守ってくれる。反面それは産まれた秘境にいればの話で秘境を離れると無力になってしまうのです。」

「マジで。」

「はい。加えて繁殖能力がありません。星竜次第で
老若男女を造ったり。星竜が死なない限り秘境があり。人があるのです。星竜は秘境を委ねていると言ってもいい。」

「それじゃ何?秘境の人間は「赤ちゃんが欲しい。でも産むことが出来ない。カムイ様が戦争に専念できるように産まれた赤ちゃんを秘境に預けて育ってさせるてあげるから」ってお互いの利が重なっているからあっさり双子を預けようとするわけ!」

「そうなりますね。」

「なんで父さんと母さん寂しくないのか。自分の子供を他の人に預けることが」

「秘境は平和ですが外に出たら戦争で荒れた世界です。だからこそ産まれた赤ん坊を危険に晒したくないのです。親として赤ちゃんを育ってられる最適な場所が秘境以外ないのです。聞き入れてください。」

「やなこったそんなのお断りだ!」


そうして現在に至る。


「とにかく!俺は双子と離れるのは反対だ!俺がそこの槍術士に負けないくらいに強ければカンナ達を別の秘境にいる必要がないだろう。」

「ふむ一理あり。兄として弟と妹を守れる強い男になれば。両親が安心してシノノメの元へ暮らせるように進言してくれるでしょ。」

「なら早速。」

「お待ちください。」

「なんだよ!」

「貴方には負担です!」

サイゾウがかっと片眼を見開いて言った。

「貴女はまだ幼い。両親の言うことを聞き入れなさい。特に貴女のお母さんはあれは甘ったれなものの決めたことには決して曲げることができません。」

「マジで」

「えぇマジです。両親はシノノメをのびのびと育ってさせたいのです。いきなり赤ちゃんをシノノメの元へ置いて育ってようとはしません。」

「なんだよ。俺の味方になってくれる一人もいないのかよ。どうしても双子を別の秘境にいさせたいのかよ。」

しゃがみふて腐るシノノメ。

「秘境がなくならない限り「星界」に出られることが叶いません。」

「そんな話もあるのか。」

「聞きたいですか。では「星界」に出された人物のお話をシノノメにきかせましょ。」

サイゾウはシノノメに語りだした。