緩やかに加速する、二人を乗せた自転車。まだ冷たい風が、二人の頬を撫でる。
「うはー!冷たいさー!」
ブレザーの隙間から忍び込む冷たい風に、鳥肌が立つのを感じる。温もりは、しがみついてくる、彼の体温だけ。同じように冷え切ってしまった両手が、きつく腹部辺りの服を握り締めてくる。
「家に着いたら、茶ぐらいは出してやるよ!」
「あまーい、ミルクティーをお願いするさー!」
後ろに流れる風に連れて行かれないように、大声で言葉を交わす。そのやりとりが、何故だか可笑しく感じられて、ふっと吹き出した。
急ブレーキのT字路まで、後少し。
end
(そんな洒落たもんはねぇよ!)
(えー…)