終電を待っていたのに
だれかが線路にとびこんで
足止めをくらってた
たまたまそばにいたわたしに
きみは声をかけてきたね
歳を聞けば10歳も下だったけど
背が高いだけで見るからに若くて
『わたしのこと何歳と思ってるのか知らないけど
びっくりさせるから言わないでおくね』
ふたりになるときみは教えてくれた
かつていた最愛の人に
わたしが似てるんだって言った
もう結婚してるんだけど、って
切ないカオして言った
写真見せてとせがんだら
ちゃんと見せてくれて
未練たらたらだね
こんな可愛いこに
似てるなんておこがましいって言った
言わかなかったけど
わたしのかつて愛したひとに
あなたも似ていたんだよ
お互いに
夏の幻として会っていた
どうせきみも本気にならないって思ってた
だけど名古屋からわざわざ
頻繁に会いに来てくれてたあのときは
じつはほんのすこしだけうれしくて
勘違いしそうだったよ
だけどはっきり
俺に期待せんといてなって
他の人も見てなって
そう言うからわたし
すぐにさよならした
遠回しでもなく振られたんだと思ったから
振り返りもせずにさよならした
ちょっと最低だなと思って
さよならしたけど
今なら優しさだったなと思うよね
10歳も年上だから気を遣ったんだね
それからまだ3年もたってないのに
その間にわたし
『結婚して離婚したよ』
きみは驚いて、だけど変わらなくて
いまも若者みたいなふりをして
さかなみたいな眼をしてる
面倒のない女だけ家に入れて
しんだように生きないでよ
そんなさみしい生き方なんて
してないでよ
30過ぎればそんなきみの眼にも
光がさすのかな
たぶん変わらないよね
こどもみたいに純粋なんだろうね
ひとは変われないよ
いつまでもほんとはきれいで
大丈夫なふりとよごれたふりが
上手くなった気がするだけ
ほんとは全然大丈夫じゃないし
むしろつよさなんてどこかに置いてくる
だからひとりだけ
甘えさせてくれるひとが欲しいって思う
弱さを知って受け入れてくれるひとが
たったひとりだけ欲しいと思ってしまうよ
だからそんな大人になった顔で
かっこよくなって
迎えにきたりしないで
何回も泣かせないで