きみが手を振ったのは
1週間前のこと
たった1週間
なのに
とてもとても昔のことのように
感じている
閉めようとしたドアのむこうに
その奥に
きみが寝そべるベッドがあって
ベッドもきみの姿も見えなくて
だけどわたしに振っている手だけが
見えていて
見えていてわたしは
手を
振り返したんだっけ
振り返してもその手は
きみの視界に入らないと思って
たしか
振り返さなかったんだ
振り返さずに
そのままドアを
パタンと閉めて
歩き出した
階段をおりる音が
そのベッドまで響いたと思う
窓からのぞけば
歩くわたしのすがたが
そこにあったとおもう
だけどきみは
何も思わずに
それとも何かを思って
眠りについたんだろうか
何も想像つかない
なにを思ったかなんて
まっしろなくらいわからない
ただ言えるのは
シンプルなきみが
悲しむなんてことは
ないような気がした
ありがとうとか
またねとか
それから何にも送ってない
きみからも
何にも送られてこない
だけど
なにかしらのアクションを
待ってるわけでもない
依存はきっと
お互いなんにもしていない
そんな
とても気楽な
不思議な関係
なんでかそれで
成り立っていた関係
会えたらうれしいのに
会える日を待ち望むのに
会えなくても全然
さみしいとは思わない
期待をしない
求めない
だからストレスなんて微塵もない
ほんとうにそんな
不思議な関係だった
何だろうね
どうしたんだろうね
寂しかったとか
安心したかったとか
こどもみたいな
それだけのこと?
痛いくらいきつく抱きしめるきみが
わたしがさわった瞬間
それを全部たぐりよせるきみが
目を離してくれないまっすぐなきみが
安心でしかなかったな
たとえことばが無くても
それだけが
何にも勝る
大きくてたしかな
安心感でしかなかったよな
それよりも大事なものが
あるというの?なんて
本気で思っていた
痛いわたし
何か悪いんですかと
本気で思っていたよ
ほっといて、
うるさい、
関係ない、
だれかに話して
なにか言われるのはごめんだったから
誰にも話さなかった
ここで書くだけの
そんな8ヶ月の思い出だった
ほたるにあえて
うれしかった
一緒にしてくれた花火も
きれいだった
きみの瞳が
世界でいちばん
きれいだった
わたしは
それでよかった
しあわせだった
それで
なにがいけないのって
春と夏のわたしに
いちばんに言ってやりたい