※jump今週号ネタバレ含む
君が抱いた闇を知ったのは、付き合い始めて少し経った頃だった。此処でも今でも無い、遠くを見つめて興味なさげに話してくれた。
『俺は造られた存在なんだ』
その意味を理解するには、自分は余りにも知識を付け過ぎていた。なのに、かける言葉は見つからず、ただ黙って冷たい手を握り締めた。
(嗚呼、何で)
自分を縋るように見つめる瞳は、いつもよりずっと幼くて、何故だかオレが泣きたくなった。
『泣くなよ?』
『泣いてないさぁ』
『嘘吐き兎』
抱き締められるべきは、彼であるはずなのに、オレが彼に抱き締められた。無我夢中で抱き締め返した体は、思った以上に小さくて、この体に背負わされた運命が憎らしかった。
『俺は平気だから、お前が気にする必要は無いんだ』
優しくオレを見つめるその瞳に見える世界が、背負わされた運命に負けず、綺麗なものであれば良いと、そう願って、また抱き締める力を強くした。
(なんてオレは無力なんだろう)
end
++++
久しぶりに本誌を見たら、まさかの展開で切なくなりました…。
ユウちゃーん…(泣)
なのに、来週から休載とは、有り得ないです、先生…
ユウちゃーん!(泣)
いつまでも一緒。
++++
空には何百、何千何億年前から変わらない、月。
欠けた形のそれは、生まれたばかりのもの。そして、僕の心の形。
(聞こえる?)
埋まらない心の隙間。
返らない、問いかけの答え。離れた、消えた、還ってしまった君。
(見える?)
僕は今日も一人、空を見上げてる。二人で見上げた、あの日の空を。
(ねぇ、もう一人の僕)
この空は、君の生きたあの世界と同じで、違うもの。でも、やっぱり同じもの。流れる雲は形を変えて、世界を巡るけど、空は太陽は、月は同じ。
(僕、頑張ってるよ)
君の消えた世界は、今まで通りに回って、ひどく寂しいけれど。
繋がりは、君と一緒に還ってしまったけれど。
あの日、君の世界で見上げた空と、今僕が見上げる空は同じだと、気づいたから。
(君と同じものを、僕は今も、見ているよ)
共に在った日々と同じように、離れた今も変わらず、見ていると、分かったから。
(だから、僕は大丈夫)
いつか、僕が全てを終えて、君とまた巡り会えるまで。どうか、あの日と同じように優しく微笑んで、待っていて。
(大好きだよ)
今日も明日も、変わらぬ空を、君の見上げた空を、僕は見ていく。
そして、いつかその先の場所でもう一度、君と見上げるんだ。
end
緩やかに加速する、二人を乗せた自転車。まだ冷たい風が、二人の頬を撫でる。
「うはー!冷たいさー!」
ブレザーの隙間から忍び込む冷たい風に、鳥肌が立つのを感じる。温もりは、しがみついてくる、彼の体温だけ。同じように冷え切ってしまった両手が、きつく腹部辺りの服を握り締めてくる。
「家に着いたら、茶ぐらいは出してやるよ!」
「あまーい、ミルクティーをお願いするさー!」
後ろに流れる風に連れて行かれないように、大声で言葉を交わす。そのやりとりが、何故だか可笑しく感じられて、ふっと吹き出した。
急ブレーキのT字路まで、後少し。
end
(そんな洒落たもんはねぇよ!)
(えー…)
儚い夢と知っていて。
++++
見つめてるだけで幸せでした。あなたが嬉しそうに笑うと、世界が彩り鮮やかに、僕に笑いかける気がしました。
『彩花』
あなたが呼ぶ名前が僕の全てで、その言葉ひとつだけで、あの狭い鳥籠の中も、気になりませんでした。
『おはよう、彩花。怖い夢でも見たの?』
だからあの時、この手が届かなくて、どれほど絶望したか。小さくなるあなたの姿に、世界が崩れる音が聞こえました。
『怖い、夢…?』
『うん、だって…すごく悲しそうな顔してる』
なのに今、あなたは目の前で僕に笑いかける。いつもと変わらない、僕の好きな笑顔で。
『そっか、夢…』
『彩花?』
まぁるい頬に、ふわふわの蜂蜜色の髪に、お揃いの瞳。心配そうに見つめる仕草、空気みんな。僕の知ってるあなた。
『怖い夢だったよ。すごく』
あなたがいなくなってからの、冷たい世界の姿。埋まらない心の穴。掠めることもできなかった、伸ばした腕。これだけ鮮明でも、あなたが怖い夢だと、僕に聞くなら、きっとあれが夢なのでしょう。
『大丈夫、彩花?そんなに怖い夢だったの』
『もう大丈夫だよ、めぇ』
『本当に?』
『うん。僕がめぇに嘘ついたことあった?』
『無い』
『でしょう?だから本当に大丈夫』
そう言えば、また笑って、空気が柔らかくなって、世界は光輝く。触れた掌の温もりが優しくて、何故か泣きたくなった。
『めぇ、僕たちはずっと一緒だよね?』
『うん。ずーっと一緒だよ!』
あなたの言葉ひとつ、それだけで僕は、幸せになれるんです。だから、大丈夫。
(あなたは一人で起きれない。でもあなたは僕を起こした。それが指す意味はきっと…)
儚い夢だとしても、目覚めた先に、あなたが映らなくても、信じている。あなたの言葉を信じている。だって、それが僕の全てだから。
(ごめんね、めぇ)
夢の中にあなたを探さぬよう、必ず見つけてみせる。約束だから、ずっと一緒に居ると。
だから今だけ、夢のあなたにさよならを。
end
++++
高速/エイジの彩→雨。
離れてしまった後の、彩花の悲しい夢。
ホント、最近は彩雨ブーム到来なんです。
遠い光の中に、聞こえる声。
++++
(冷たい…)
真っ白な世界。降り続ける雪も同化して、わからない。
(あれ、こんな服着てたかな)
自分の服も真っ白で、世界に溶けこむ錯覚。裸足の足だけが、異様に赤い。赤い足を見ていたら、何だか胸が苦しくなった。
(…傷があったのに)
そうだ、傷があった。靴も履かずに飛び出したから、傷だらけになってしまったのに。そうして、『君』が手当てをしてくれて、意外で、それ以上に嬉しくて切なくて。
(……『君』?)
ぽたり、白い空間に何かが落ちた。透明なそれは、すぐに同化して見えなくなった。ぽたりぽたり、落ち続ける、これは雫。
(泣いて、る?…何で)
白い世界が歪む。耐えきれなくなって、膝をつく。声をあげそうになって、慌てて口を抑えた。誰も居ないから、隠す必要も無いのに。
(違う、一人じゃなかった。『君』が居た。でも誰かわからない)
広がる疑問と、心の穴。きっと『君』は大切な存在だった筈なのに。
(忘れてしまった。忘れたくなくて、でもそうしなければ辛すぎたから)
肩にあった温もり、優しすぎた願い。だからこそ、苦しい現実。姿形さえわからないのに、探している心が叫ぶ。呼べない『君』の名前を。
(この世界なら、容易く『君』を見付けられるのに)
呼び続ける、叫び続ける。もう何もわからない、『君』のことを。忘れなければ辛すぎたけれど、忘れたままも苦しすぎる。名前を呼びたい、姿を見たい。側に居て欲しい、側に居させて欲しい。
『、っ――――――!』
ねぇ、君を喪った世界に、何の価値があると謂うの。
end
++++
アニメの終わりも切ないけれど、本誌の展開は更に切ないと思います。
だって、二人には幸せになって欲しかった…っ!(泣)