暗夜王国。貧しく作物が育たない朝の来ない夜だけの国。 そこに暮らす人達は、疑り深く攻撃的で僻み人を陥れるのが日常茶飯である。王族も王族の縁者もその人種で少ないわけがない。

とある飼料館マークスは、目ぼしいものを探していた。

「これにもないか。では、これか。」

なかなか見つからず最新の記録を探しても見つからなければ床に投げた置いた。

「何をしているマークスよ。」

「父上!用が済めば片付けますので気になざらずに。」

後ろから父が声がかかりマークスは、驚いた。

「飼料館では、記録してはならぬものもある。探しても見つからなければ白夜王国へ侵攻して女王の元へ尋ねればよかろう。」

「白夜への支配は、我が悲願」

父上が最近出るようになった口癖。先代のスメラギが不慮の事故で崩御したことにより統治者が後妻のミコトに代わった。情勢が不安な状態なら攻め落とすことが出来なくない。だが白夜には特異な術を使う者がいることで有名でゆだんができない。

「北の城塞にいる子供は、誰の子供でしょうか。」

「亡霊が出るところに行ったか。憑りつかれずによく戻って来てくれた。」

「カムイと名乗っていた生きた女の子でした。父上の子供なら何故王城ではなくあのような場所に暮らさせているのですか。白夜の王族の兄弟姉妹には5人いたはず。そのうちの一人が行方不明なのは、おかしい…はっ!」

「マークスあれは、お前にとって義理の妹だ。」

「父上!どうして暴挙に出たのです。前までは、他国に手をあげなかったではないですか!」

矢継ぎ早に質問するマークスにどこ吹く風もなく平然とガロンは、言った。

「白夜王国が前から気に入らないかったからだ。白夜は、暗夜に助けてくれたか。作物に困窮している暗夜を豊かに作物が育ってられた白夜は、食べ物を恵ませてくれていたか。」

「いいえ。」

「疫病で苦しむ子供や老人のために白夜は、暗夜へ腕の良い癒し手を往診に遣わせたことがあるか。」

「いいえ。」

「表面上心優しく平和を愛している白夜王国は、自分達が平和に暮らせばそれでいいと考える者が多い。それを暗夜が白夜の浅はかさを正さねばならぬ!」

父が胸に握り拳を作りマークスに演説した。白夜王国は、確かに礼儀に重んじ清く正しい眩しい国であった。父の言葉には、力が強い。暗夜王国にも暖かく照らす光をもらう権限がある。

「私も日の光が見たい。」

「マークスよ。王命を言い渡す。」

「はい。」

「カムイを暗夜の王族として育ってよ。処遇は、お前に任せる。」

「はい父上。第一王子が白夜第二王女カムイを暗夜の王族として信じこませてみせます。」

「期待しておるぞマークス」

資料館から出るガロンにマークスは、こうも質問した。

「父上。カムイを拐ったのは、白夜王国の侵略の鍵としてですか?」

「違う。あやつは、暗夜を照らす光だ。けっしてその光を枯らしてはならぬ。」

今度こそマークスへの質問が終わるとガロンは、出ていた。


数年後ー。カムイは、育った兄弟姉妹を裏切り白夜王国に味方をした。白夜の第一王子の安堵の表情とマークスに刀を向けるカムイの表情に怒りを通り越し嫌悪を覚えた。例えるなら雛鳥が突然可愛くもない鶏に成長したのと同じくらいに。

次にカムイと再会したのは、アミュージア公国。最後に再会したのは、暗夜の王城。争いは辛うじてマークス率いる暗夜軍が勝利に終わった。そうしてマークスは、行方不明になった父王から王位を継承した。暗夜王国国民から先代の圧政のせいでマークスに怒りをぶつけられたり。白夜王国から不信感からギクシャクされたものの。持ち前の誠実と勤勉さと気配りの上手さからマークスは、「豹変する前のガロン王の再来」と祖国から呼ばれるほどに信頼を取り戻していた。

「マークス様が国王になられてから飢えずに済めてよかったわ」

「白夜王国からも食料の輸入が出来るからマークス国王様万々歳。」

「マークス様国王になられたのなら妻となる人がいないのよね。」

「私お妃の候補に入ろうかしら♪」

「よしなさいな。あなたのようなぼんやりじゃマークス様は見向きもしないわ。それにマークス様には、もう奥様がいるのよ。」

「え?それは、誰!」

メイドがマークス国王に花を咲かせて話している頃噂の当人は。


「ただいまカムイ。」

車椅子に乗っているカムイに声をかけた。カムイが肌身離さずに持っている竜石を手のひらに持ち上げる。

「‥‥‥‥」

「カムイ寂しかっただろう。だが今は、安静にしていろ。先の戦争でまだ本調子ではないのだから。」

「‥‥‥‥」

「子供達に会いたいのか。カムイは、子供想いで優しい母親だ。全てを終わらした後でまた家族と穏やかな時間を取り戻そう。」

「‥‥‥‥」

楽しそうに話すマークスにカムイは、返事をしなかった。いやカムイは、まるで人形みたいに大人しくマークスの話を聞かされるだけの物言わぬ存在になっている。それでもマークスは、構わず兄のように。恋人のように物言わぬカムイを愛でた。

コメント

本編のマークスお兄さんもいいけど。白夜についた義妹のことで病むマークスお兄さんもまた違う魅力を感じるから捨てがたい。