悪夢を祓う歌姫

タクミとレオンが幼児になって早4週間。子供になってからの二人は、記憶も子供そのものになってしまっている。

「アクア」

裾を掴まれて見るとタクミが珍しくしがみついていた。

「アクアお願い僕の部屋で寝て。」

「えぇ。いいわ。」

添い寝を指名されタクミの布団に入った。

「怖い竜が出る夢を見るようになったの。アクアと寝れば竜が出る夢を見ない。」

「大丈夫よ。竜が出ても追い払ってみせるわ。ユーラリー、ユーラリーうたかた」

子守唄でタクミを寝かしつけた。竜に襲われたのは、本当にあったことだった。竜の正体は、カムイである。子供に戻ったからそのことをタクミは、忘れてしまっているだけ。

頻繁にタクミは、寝る前にアクアに一緒に寝るようおねだりするようになった。悪夢を見ないようにするものだ。怖い竜の次は、知らない青年がタクミに意地悪する夢を見るようになったらしい。魘されでば、タクミを起こし落ち着くまで腕のなかで抱きしめるようになった。

アクア目線終わり。



風神弓サイド

たーいくーつだ。手入れは、キサラギがやってくれているもののタクミ程に上手くもないし。休むのももう飽きた。向こうから「タクミ」に似た子供が来た。子供が私を持ち上げ車のついたソリーの上に置いた。

城の外へ連れて行かれ。森を出って。泉で水を飲んで。

「ここどこ?」

ソリーを引いて私を連れた子供が迷子になってしまった。

「白夜王国どこ?母上。リョウマお兄ちゃん。ヒノカお姉ちゃん。カムイお姉ちゃん。」

「タクミ」に似た子供が膝に顔を埋めて泣き出した。向こうから人が来た。

「タクミさん見つけましたよ。」

「カムイお姉ちゃん〜」

「またレオンさんとケンカしたのですか。何も言わずに勝手に外へ出たらダメですよ。」

タクミが首を横に振る。

「冒険でもしていたのですか?」

さらに首を横に振る。

「目的地に行こうとした。でも途中で道順が分かんなくなった。」

「目的地は何処ですか。」

「白夜王国に行こうとした。異界の城に暮らす前のお姉ちゃんと過ごしたことがおもいだせないだ。白夜王国に行けばお姉ちゃんと過ごしたこと思い出せるかもと思って。」

白夜王国。人質になっていた姉として過ごすはずだった第二王女。二つの言葉が子供から出たことで「タクミ」だと私は、知った。どうして子供に戻ったのか聞きたいけど弓である私には、出来なかった。カムイがタクミを抱き締めた。

「タクミさんまだ急には、白夜王国に帰れないけど。一段落ついたら白夜王国に行こう。その時には、タクミさんが知っている白夜の場所お姉ちゃんに教えてくれる。」

「お姉ちゃん変なの。僕に案内頼むなんて」

「そうしてもらったらお姉ちゃん嬉しくなるからだよ。本当の兄弟姉妹でまた白夜王国を歩けることで思い出せることが増えるからだよ。」

「わかったよ。」

「迷子になるといけないからほら背中に乗って。」

「うん!」

人の体温の感触がないものの。タクミは姉の背中の心地よさに眠ったそうだ。

風神弓サイド終わり。


それゆけカムイ先生!!

「カムイ様紅茶が入りました。」

「ありがとうジョーカーさん。」

紅茶の時間に部屋に入ると暗夜の歴史書物と絵に使う具材が散乱していた。

「タクミ様にお勉強教えたいそうですね。」

「うん。嫌がるのは分かってるよ。少しだけ暗夜の不信を拭えればいいなって。」

机に暗夜の兄弟姉妹らしい色使いと絵がかいてあった。参考書を広げて分かるように問題の文章も書いてあった。

「人に勉強教える教材作るのって難しいな。タクミさんに分かるように暗夜のこと分かればいいのに。」

暗夜に対する不信が強くなっている子供タクミに至難の技だった。同時にカムイは幽閉されて育ったことで暗夜王国を歩いた試しが少いから流行りが分からない。

「カムイ様私もお手伝いさせてください。暗夜王国のことなら私でも質問しても答えられます。」

「じゃ私は、暗夜の兄弟姉妹のことでも教えよう。」

生徒にエリーゼ、サクラ、タクミで授業を始めた。カムイが自作の絵で暗夜の兄弟姉妹の説明をして。暗夜の環境で生活の営みをジョーカーが答えた。

「暗夜は、色々かわいそうだねー。僕だったら息が詰まりそうだよ。」

「あぁ。そうだ。上級貴族も暇さえ見つければ捌け口にさせられ罵りあう。火の粉も子供にあたることも少なくない。タクミ様も耐えきれず泣き出します。」

「僕は、強いもん。泣いたりしない。」

「泣かなくても。ガラの悪い奴らに格好の的になります。」

「お姉ちゃんの所に隠れるからいい。」

「おやめください。ずっと外に出ない条件を守れるわけありまけん。」

「お姉ちゃんに遊んでもらうからいい。」

「レオン様と顔合わせになっても暴れたりしないようになさい。」

「ジョーカーが接待すればいいじゃない!僕は、お姉ちゃんとしか会わない!」

ジョーカーとタクミが言い合いになった。

「姉様は、外に出たいと思わなかったのですか?息が詰まりそうです。」

「会える日付が一番の楽しみでした。エリーゼさんも遠いところからよく遊びに来てくれたから寂しくもありませんでした。」

「うん!お姉ちゃんよく私と遊んでくれるもん。」

「そうなのですか。」

「お姉ちゃん暗夜の王族と会う以外でどんなことして過ごしたの。」

「ほとんど本を読んだり。ジョーカーとフェリシアとフローラで文章の意味を解釈しあったり。物語の登場人物になって真似もしていました。」

物語の主役の役と登場人物役と悪役になって真似をする遊びは子供にとってのごっこ遊ぶであった。

「おもちゃとかないの。」

「マークス兄さんがぜんまいの人形とくまのぬいぐるみ。カミラ姉さんがアクセサリー。エリーゼがよく花とかもらっていましたよ。」

後はガロンから最低限の生活環境と使用人を与えられ外へ出さなかった。

「 カムイお姉ちゃん今は、外へ出られて幸せ?」

「忙しいくも充実は、しています。こうしてタクミさんの子供の姿が見れていやされます。」

「僕もお姉ちゃんが帰ってきてくれて嬉しい。」

体当たりするようにタクミがカムイに抱きつく。元のタクミなら絶対しないことを子供ならではの素直さに嬉しさが胸にこみあげた。

「そろそろ休み時間入りますー。」

黒いオーラー出しながら笑顔でジョーカーがタクミを引き剥がした。



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