リョウマには妹が三人いた。大人しいヒノカ。元気いっぱいのカムイ。産まれたばっかりのサクラ。特にカムイはヒノカとタクミでよく遊ぶことが多い。リョウマと過ごす時間が長いほうでもない。

「リョウマ兄様(にいさま)。お手玉たくさん投げれるようになりましたよ。」

「見せてくれないかカムイ。」

「はい。ひとーめのふたつ」

カムイはお手玉を投げた。歌を終えるまで落とさずに。

「カムイすごいじゃないか。長く投げることが出来ている。」

「本当?じゃリョウマ兄さんカムイに剣道教えてくれるよね。」

「?」

「あー!リョウマ兄様忘れてる。お手玉は武術の稽古になるから長く投げることができたら剣道教えるってカムイに約束したじゃない。」

ぷぅーとむくれるカムイ。少し思いだそうとした。竹刀の素振りをしているところを見たカムイが自分もやりたいと言ってきた。そのあとヒノカに止められた。きずつけることをやめなさいと。そこでリョウマがカムイにお手玉をあげた。お手玉は反射神経と動体視力が鍛えられるからと。

「思い出した。ではカムイ走り込みから始めよう。」

「走るの?どうして?」

「稽古には体力が必要なことだ。それには走って持久力を」

「兄様(あにさま)なりません!」

兄妹の間からピンクの袖をひらつかせながらヒノカが割って入ってきた。

「カムイに怪我をして痕を残らせたらどうするのです!カムイも自分で危ないことをしない!」

「ヒノカ姉様(ねえさま)ダメなの?」

「女の子に武器を持つことはもっての他です!武器は男の子が持っていればいいのです。さぁカムイあっちでままごとしましょ。今日はカムイに好きな役をやってもいいのですよ。」

ヒノカがカムイの手を引くもすぐにカムイは手をほどいた。

「やだ。今日はリョウマ兄様と剣道がしたい。」

リョウマの手を握りしめてヒノカに言うカムイ。

「カムイどうして男の子のような危ないことをしようとするのです。」

「リョウマ兄様と剣道しないと過ごす時間がとれないからです。」

ヒノカは苦い顔をしたものの表情を戻した。

「わかりました。カムイは今日は兄様(あにさま)と剣道してもいいですよ。ただし私も近くにいましょ。怪我したときに手当てが出来るように。」

「やったー!ヒノカ姉様大好き!」

ヒノカに抱きつき。次にリョウマに抱きついた。ゆるふわな銀髪をゆらしながら笑うカムイに愛しくなり抱き上げた。

「カムイは俺とヒノカどっちが好きだ?」

おしとやかでお姫様らしいヒノカ。女の子の遊びをたくさん知っている。人形遊ぶ。まりつき。花冠作り。おしゃれ。それが楽しいからカムイはヒノカと過ごすことが多い。

「リョウマ兄様。」

ほらヒノカと答えあれ?今なんて言った。

「リョウマ兄様大好き。カムイはリョウマの兄様のお嫁さんになる。」

嬉しい。すごく嬉しいことを言ってくれる。返事を考えてカムイに応えようとした。



















「‥‥さ‥ん。お父さん。」

「‥‥カムイ」

「お母さんじゃないよ。カンナだよ。お父さんの娘のカ・ン・ナ。」

赤い着物を着てゆるふわに髪をおろし横に髪飾りをつけた愛娘がリョウマの上に乗っていた。まわりはいつものツリーハウスの部屋。どうやらリョウマは夢を見ていた。小さい頃の夢を。

「カンナかわいいくなったな。まるでお姫様だ。」

「えへへ。白夜の姫らしい?」

「とっても可愛いぞ。」

「ヒノカお姉さんとオボロお姉さんが見立ててくれたの。お父さんが誉めていたことを聞いたら二人とも喜ぶね。」

カンナが無邪気に笑う。小さい頃のカムイと瓜二つの笑顔がリョウマの心を満たしてくれた。


終わり。