泣き虫で。甘えん坊で。お人形が大好き。年の近い姉であるカムイお姉ちゃんから見た僕。小さい頃の僕は、幼稚じゃなかった。人形もぬいぐるみも好きじゃなかった。

「お父様ぬいぐるみを修繕しました。」

「ありがとうフォレオ。あとは、カムイお姉ちゃんを通してタクミにあげて。」

「まわりくどいこともせずにタクミさんに直接渡せばいいのではないですか。」

「いいや。」

「ウサギのペアぬいぐるみに何か思い入れがあるのですか。」

「カムイ姉さんが僕の八歳の誕生日プレゼントにくれたんだ。」

「汚れているのを見ればお父様よっぽどこのぬいぐるみが好きだったのですね。」

「いいや僕じゃない。ほとんどエリーゼがそれを遊ぶ方が多かった。」

「捨てないでよく持っていましたね。でもどうして使いの人に昔のぬいぐるみを探して引っぱり出して。僕に修繕頼もうとしたのです。」

「カムイ姉さんは、僕にウサギのペアぬいぐるみあげたかったんじゃない。本当に渡したかったのは、タクミの方だったから。」

弟王子二人同じ日に同じ時間で若返りの水を飲んだせいで10年分も幼くなった。

魔力の質が優れているレオンは、記憶が戻れた。

記憶も身体も子どもにもどっているタクミは、カムイと本当の姉弟の時間を取り戻すように友好的に過ごしている。

「小さい頃のカムイ姉さんは、僕のことを「甘えん坊の泣き虫で人形好きだ」と思い込んでいたときがあってその時にそのウサギのペアぬいぐるみを僕にくれた。でも僕は、そこまで幼稚じゃなかった。」

「えぇーーー。」

「何を想像していたんだ!ウサギのペアぬいぐるみをカムイ姉さん通してタクミに返すよう頼んできて!」

フォレオの足を押して頼む子供姿のレオンにクスッと笑みをこぼした。

「お父様は、優しく律儀ですね。」

可愛いらしいラッピングにウサギのペアぬいぐるみを入れるとフォレオは、カムイを探しに行った。

「カムイ姉さんは、タクミのことを覚えていた。だから僕のことをタクミに見立ててアリスのペアうさちゃんぬいぐるみをあげたんだ。」

今度は間違えない。本当にカムイ姉さんがあげたかった弟の手にペアのうさぎさんぬいぐるみが渡ることをレオンは祈ることにした。

おしまい。
















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