天界。ここは、死んだ者を七人の神が英雄として迎える場所。俺は、今…
「猫ちゃん猫ちゃん」
生きている人間の子供に撫でられている。俺は、人間界に来ていた。
「ニャー!(なんじゃこりゃー!」
どうしてこうなったかというと遡ること天界から人間界に来る前の一時間前。
「がぅ」
気持ちいい午前の昼寝から目がさめて くぅぅーと伸びをした。家から差し込む柔らかい日差しがベスターを撫でるように暖かい。心地好い目覚めは、このことを言う。
「君」
「ガルル」
声のする方を向けるとウェルデがいた。
「君の実験したいことがある。いいね。」
ふざけるな。ウェルデに引っかこうと身体を動かすも動かない。はっと気づいた。動かないじゃない。薬品の臭いがした。臭いを嗅ぐと眠気がきてクラクラする。
「無駄だよ。君は、私の実験体に相応しいか検査して終わらないと動けないから」
天界の七人の神で変わり者のウェルデは、英雄でも神獣でも研究の実験台に使う科学者。ベスターは、最悪な状況だ。変わり者に煮るなり焼くなりされる。
「ベスター 君は、人間に興味があるかい?」
「ある」
あれ?低い声がした。
「あっ君の部屋から漂う臭い嗅いだだろう。それは、この部屋にいる間、嘘を言うと本当の言葉を言ってしまう効果があるんだ」
ガーーン。
「さぁ 続けよ。君は、人間界に行ってみたい。」
「行きたい。」
「うん。合格。」
ウェルデが注射をベスターの前脚にさした。
ベスターの意識が暗くなって。
子供がスルメをベスターの口に差し出した。
「あれ食べないね?」
ベスターは、爪で子供を引っ掻いた。
「いってぇ」
草むらに入ろうとしたら尻尾を掴まれた。次に身体を叩かれた 前脚から血が出た。尖ったのに突かれたんだ。
「に”ゃ」
ガリガリガリガリ。隙が出来てベスターは、草むらに入る。
走って。走って。子供が見えなくなった。水溜まりを見つける。水溜まりを覗いてショックを受けた。
水面に写ったのは、紅い目をくりくりにした白い子猫。
ウェルデェェェェ!!!