不安だった。
だって、どんなに頑張ったって結果はついてこない。
いつも空回りしているみたいで、地に足がついてないみたいだった。
どんなに足掻いても藻掻いても一向に前に進んだ気にならない。
不安が絶望に侵されていく。
何もないのに、何もないから、目から涙が溢れた。

「もう……やめる」
ボソッと呟いた声はしっかりと向き合う相手に聞こえていたようで、少し動揺を顔に滲ませた。
「…はっ!?」
何度も言わせんなよ。
言いたくない言葉を口にしてるから、酷く不安定な気持ちになった。
イライラしてるような、悲しくて泣きたくなるような、それでいて悔しくて悔しくて仕方なかった。
黙り込む自分をよそに、相手は怒鳴りつけてくる。
「おまっ…マジで言ってんの!?ふざけんなよ!」
「るせーよ、声がでかい」
「そうさせてんのはオマエだろ!?」
「だからうるせーって!」
はっとした。
自分の怒鳴り声に自分でも吃驚したからだ。
これじゃ八つ当たりだ。
「…悪ぃ」
「…やめる理由は?」
一番聞かれたくない質問は、一番聞かれると思う疑問と同じだったから、何て答えようか考えた。
でも結局答えは出なかった。
「限界ってやつ…?ほら、別にオレ特に才能とかないし、逆に普通の人よりないくらいだし、それを努力の積み重ねでここまで来ただけで、こっからはもうオレには無理だなって思ったんだよ」
何か口走ってるけど自分でも何言ってんのか分からない。
本音のようで、でもまだ何か足りないような。
モヤモヤしたものは自分の胸の中でざわめく。
これが最後なのに。
「…オマエの言うこっからとか意味分からん。何勝手に線引きしてんの?」
「ん〜、でも必要なものだろ。どっかで線引きしなきゃグチャグチャになる」
「グチャグチャなのはオマエの頭だろ」
ああ、うるさい。
なりたくてなったわけじゃない。
才能がある奴はいいよな、努力した分身に付いて。
オレなんか全然どうにもならないのに。
押し付けがましくガタガタ言わずに受け取れよ。
お前みたいなやつにオレの気持ち分かるわけねえだろ!
「…っ、もう限界なんだよっ!!」
俯いて絞り出した言葉はやけに寂しく聞こえた。
オシマイなんだ。
好きだからって、どうにかなるわけじゃない。
どうしようもないことだってある。
それをこいつは才能ってやつでねじ伏せる。
でも才能のないオレはここまでだ。
それを分かれという方が無理なのは分かってる。
でも引き止めるなよ。
これでもない頭フル回転で出した答えなんだ。
否定すんなよ。
「……………オマエって」
「………………」
「バカだろ」
もう何も言いたくない。
顔もあわせたくない。
聞きたくない。
でもお前が言うだけ言って去っていってくれるなら、何でもいい。
言いたいこと言えよ。
そしてもうオレに関わるな。
「何で黙ってんの?」
「……………」
「悔しいくせに」
「!!テメェ!」
煽るような言葉に顔を上げた。
「オマエ本当に理解して言ってんの?オレには到底そうは見えないんだけど。好きなのに何で諦めなきゃいけねんだよ」
「黙れ!」
「黙んねえよ。つか、何にキレてるか自覚してる?」
アホでも見るかのような呆れた視線を無遠慮にぶつけてくる。
ついに堪忍袋の緒がキレた。
「テメェだよ!!テメェにキレてんだよ!!人を馬鹿にした態度のテメェにキレてんだ!!!!」
「馬鹿にしてんのはオマエじゃねえのかよ。何が限界だ」
「はあっ!?底無しのお前と一緒にすんな!!オレは普通なんだよ!誰にだって普通は限界があるんだ!!」
そうだ!こいつはなくても普通はあるんだ!!
お前と一緒にされたらこっちが困る。
お前はみんな一緒みたいな考え方だけど、みんな違うんだよ。
………分からないのは、理解できないからだ。
こいつが才能があるせいだ。
才能のないオレの気持ちを理解できないからだ。
今だってこんなに辛いのに。
ぜぃぜぃと肩で息をつく。
悔しくて涙がこみ上げる。
絶対泣きたくなんかない。
こいつの前で泣いたら、何もかも失う気がする。
「オマエの普通がオレには理解できないな」
当然だ。
出来てたまるか。
「でも言っておく」
「…何だよ」
「限界って決めてんのは自分だぜ?」
「…はっ」
鼻で笑った。
何だよそりゃ。
「限界なんかないんだよ。自分で諦めるからそこが限界なんだ。ついでに言えば、別にオレはオマエが言うほど底無しでもなきゃ才能もないから」
「……………」
「オレのこと天才だとでも思った?」
「オレよりはな」
即答すると重い溜息がこぼれた。
「……はぁ。馬鹿決定」
「はっ!?」
「オレは努力してるよ?確かに才能は少なからずあるかもしんない。でも自分で磨かなきゃ石ころで終わるだけだ。オレはまだ諦めない。諦めたくない」
そういうこいつの目は明らかに怒りが滲んでいた。
さっきのオレのように。
まるで理解されない苦しみを胸に抱いたような目だった。
「オレ…だって本当は諦めたくねえよ」
俯いてしまう。
目を合わせたくない。
「オマエが頑張ってんのはみんな知ってるよ」
「でも出来ねぇんだよ…!」
「出来てる」
「え?」
「ついこの間までは出来てなかったこと、今日は出来てたじゃん」
「あんなのは…」
「欲張りだな」
欲張り。
だっていつも隣にいるお前はオレより随分先に行ってる。
隣にいるはずなのにレベルの差を見せつけられる。
同い年でどうしてこうも差が出るのか。
悔しくて前を見ればずっとお前の背中ばかり見てなきゃならない。
「…もういいよ。諦めたんだ、何もかも。辛いんだ」
「プライドも無駄に高いし」
「だからもう…」
そうしてもう一度だけ顔を上げた。
視線が絡み合う。
いつも一緒に下らない会話をしていた奴が、真剣な目をしてオレを見ていた。
まるで別人のようだ。
「こたえてやれよ」
真っ直ぐに射抜くような視線。

「他の誰かじゃない、お前のプライドに応えてやれよ…!」
傷付いて悲鳴を上げている自尊心。
折れてしまったそれは、それでも自分を起たせる為に懸命に働いていた。
「…うっ」
ついに涙腺が言うことをきかなくなった。
嗚咽が漏れるほどの激情が胸からこみ上げる。
いたい、痛い、居たい。
そこで、オレは諦めたくなんかないんだって、心が叫んでる。
どんなに辛くても、まだ終わってないのに自ら幕を閉じるなんて嫌だって、本当はずっと叫んでた。
小さななけなしのプライドが叫んでる。
負けんな…!って。
「ふぅぅっ…うっ」
涙が止まらない。
そっと頭を引き寄せて、奴は肩を貸してくれた。
ずっと無言のまま、ただそのままでいてくれた。
涙が止まるまで、ずっと。





単に言わせたい台詞を思いついて書いた駄文。
久々に書いたら本当に酷いwww
つか、『相手』は『自分』に恋してればいい。

自分から諦めるほど辛いことはない。
諦める方が楽なんて嘘だ。
死ぬほど辛くてもそれにしがみつく方がまだ軽い。
諦めると言うことは、そういう事だ。