サイゾウが寝込んでしまったことで急遽シノノメが鍛冶屋の当番をすることになった。
城にある施設の当番は、大抵人が来ないと仕事ができないもの。仕事の依頼が来ないときは、武器を磨いたりして時間を潰す。
「自分が強くとも扱える武器がなまくらだと格好がつかない。」
シノノメは、そう思いながら武器磨きに精を出していた。
「‥‥シノノメお兄ちゃん」
「おぅカナか。どうした鉱石の交換か?」
ブンブン。首を横に振る。
「じゃ手持ちの武器か?見せてみろ。」
ブンブン。首を横に振る。
「イ‥ゥは」
「なんだ?よく聞こえない」
「サイゾウは?」
「サイゾウさんなら大ケガをして治療中だ。命に別状はねぇよ。何かあったのか?」
「うわーん!」
妹が急に泣き出した。シノノメは驚いたものの妹が泣き止むまで待った。
「するとなんだ。飛び出してきた武器のなだれからカナを庇おうとして爆炎を使って大ケガをしたのか。」
「うん。そのあとお母さんが爆炎の音を聞きつけて鍛冶屋に入って来て。その 前にサイゾウがカナを隠してくれた。」
なるほどな。甘い食べ物が嫌いなサイゾウがカナに食べさせる物を懐にいれていたのは、そうゆうわけっか。
爆炎を使ったことで懐に入れていた食べ物も爆発。そのままサイゾウの身体に甘い香りがまとわりついたのもカナが原因か。
「カナ、磨こうとした武器の箱の中身は覚えているか?」
「たくさん入っていたよ。」
「そうじゃねぇ。中身は種類別に入っていたのか?追い剥ぎする武器しか入っていたのかを聞いてる。」
「武器は種類を分けて入ってなかったよ。上から刀を取ろうとしたらいきなり矢が飛び出してきた。」
「他には。」
「驚いて後ろに下がったら突然箱から「シュッ」と音がして。すると箱から刀と手裏剣と薙刀と弓の矢が溢れてきて。」
「サイゾウさんは、カナに武器を磨けと頼んだか?」
「ううん。頼んでない。」
シノノメは、一呼吸をおいた。
「カナ。サイゾウをいじめようとしてワザとやったのか?」
「違うよ。カナは、サイゾウから武器を磨くなと聞かれていなかったもん。」
「カナ。頼んでいないことを手伝うということはありがた迷惑に繋がることがある。そのせいでサイゾウさんは、使わなくていい爆炎使って大怪我したろう。」
「うん。」
シノノメのいう通り。カナは、鍛冶屋の当番にはあまりならない。武器が苦手だから。
「危険物に触らないか?」
「うん。触らない。あっでも。もしあたしが鍛冶屋の当番になったな。何をした方がいいの?危険な武器を磨けないとなると鍛冶屋の手伝いができないよ。」
「それなら俺を呼んでくれないか。俺が近くにいれば傷の手当てができるし。武器の種類分けを手伝えるぜ。」
「いいの?迷惑じゃない?」
「鍛冶屋当番をやる前に声をかければいいぜ。俺が駄目なら父さんに話そうか。」
「そうする。」
「おぃおぃ。父さんが好きだなカナは。」
「ううん。鍛冶屋の仕事を何回かやっているシノノメとお父さんなら怖くないなって。」
「そう言ってくれて嬉しいぜ。」
「わー。」
シノノメが妹の頭を撫でた。妹は、笑顔になった。
区切り。