双子カンナ♂♀で未来を語らうお話。

真夏の暑さが柔らかくなった夜のシラサギ城の中庭。誕生日の主役で白夜王国国王シノノメがシートの上でお酒を飲んでいた。

「シノノメ兄さん見つけた。」

「主役が一人お酒を飲んでいたのですね。」

酒瓶と器を持った見目麗し青年と女性がシノノメの前に現れた。

「休憩中だ。そうゆうカンナもカナも酒飲んでいいのか?まだ成人してねぇだろう。」

「僕が酒を飲んだことを黙ってくれるなら来賓にシノノメのいる場所を知らせない。」

「シノノメ交換条件です。一国王が未成青年の飲酒を黙る代わりに」

「兄弟妹で酒がのみたいと言うならそう言え」

「ではご一緒にさせてもらいます。」

兄の近くに双子が座り空っぽの器に酒をついだ。

「おぅカナ気が利くな。」

双子は母カムイに似て美しくなった。特にカナは母カムイとの面影が出ていた。幼さからなりを潜めて目上からの敬語をするようにもなった。

「カナ嫁ぎ先はどうだ?なれたか?」

「最初はみんな戸惑っていたけどよくしてもらっているよ。旦那様も優しい。寒いのが不満だけど。」

「そうか。俺も暗夜王国に訪れるぜ。カナの夫ともゆっくり話してぇ。」

「スボラの格好にならないでね白夜国王様。」

「安心しろよ。王族としての威厳を保つぜ。」

くいっとシノノメは酒を飲む。カンナも酒を飲む。

「どうだ。カンナ酒の味は。」

「まだ苦いかな。」

「年を重ねれば美味しくなっていくぜ。なんならジュースにするか。」

「いいよ。このまま飲む」

こうして兄弟妹と酒を飲める日がきてくれた。争いあっていた両国が平和になるまで色々あった。けっして平坦な道のりではなかった。見知った者たちとの数々別れを苦く経験もした。そのあとの出会いを果たした者ともぶつかりあった。だからこそシノノメは終わりを見届けることが出来た。

「シノノメ盃の器多くない?」

「これは父さんと母さんの盃だ。あの二人が生きていたら飲むやつだ。」

「お父さんお母さんあの世で見ていたかな。」

「子供の成長を見ない親がどこにいるっていうんだ。二人とも見てたよ。カナの花嫁姿も新しい白夜国王の即位式にも。この盃は客用だ。」

「シノノメ」

「なんだ?カナ」

「お父さんとお母さんの盃二人で飲んでもいい?」

「飲んでいいかは父さんと母さんに聞け。」

「じゃもらう。はいカナ」

カンナが二口飲むと次にカナへ渡した。

「もう二口残したら次はシノノメ兄さんが飲んで。」

「兄弟の盃か。」

「うん。」

「父さん母さんの許可は?」

「霊は飲まないから飲んでいいって。その代わり白夜王国と暗夜王国の歴史を後世に伝えることをしろって約束取り付けた。」

「そうか。では父さん母さんの盃を飲もうか。」

シノノメが酒を飲んだ。ブワッと涼しい風が吹いた。カナの長い髪が風で遊ばれる。その風は心地よかった。