ねぇどうしてカムイお姉ちゃんはいないの?

目の前で暗夜に拐われたからだ。

ねぇ父上は、どこにいるの?

ガロン王が父上に手をかけたからだ。

カムイお姉ちゃんがいなくてどうして暗夜の王女がシラサギ城にいるの?

………。

誰も答えなかった。アクアが怖い。何かが怖い。リョウマお兄ちゃんもヒノカお姉ちゃんも暗夜に送られた魔物討伐とカムイのことをきにかけるばっかり弟として過ごす時間が短い。シラサギ城にいるのは母上と人質のアクアと産まれたばっかりのサクラだけ。

暗夜は、怖い国。僕の大切な物を奪い取り上げる悪い国。覚えていない姉の帰りを待ちわびるだけの時間が嫌い。タクミが夜怖い夢を見てシラサギ城の道場の扉が開いていることに気づきを中に入ると母上がいた。母上が青い光を帯びた玄を引いているのを見て声をかけた。

「タクミ眠れないのですか?」

「うん。怖い夢を見ちゃったの。母上は寝ないの」

「うふふ。あと三本出してから眠ります。」

「んんっ。矢がないよ。」

「これは、……です。綺麗でしょ」

「うん。ねぇ母上の………ならカムイお姉ちゃんつれもどせるんじゃないの?どうしてしないの?」

「白夜を守る者は死んではいけないのです。私が死ねば結界がなくなり戦意を取り戻した侵略者に蹂躙されてしまいます。それだけは、国を守る者の最低義務です。でも後ろを見てください。」

後ろ振り向くと白銀の髪をしたルビーのように紅い瞳をした年上の女の子が立っていた。

「カムイお姉ちゃん帰ってきてくれた。」

タクミは、なんとなく分かりカムイに抱きついた。後ろからミコトもカムイとタクミを覆うように抱きしめた。

「母上これからカムイお姉ちゃんと暮らせるね」

「それは、出来ないわ。」

「どうして?……?!」

青い矢がカムイの背中に突き刺さった。カムイの後ろに人が立っていた。

「そいつが母上を殺したんだ。」

顔がタクミに似て長い髪を結い上げた……を持った青年が見下ろし幼いタクミに言った。
「思い出しなよ。そいつが白夜になにかしたことを。母上のことも」

苦しそうに倒れる母が倒れ。

「白夜を壊し母上を殺した姉のことをね」


「クミさん…タクミさん気がつきましたか。」

「ははうえ……?」

ぼんやり母上の顔が見えたけど違った。寝起きの頭が覚醒しよく見ればフォレオが心配そうに目の前にいた。

「目が覚めてよかったです。子供になっているといえ一人で城の外へ出たらだめですよ。」

順を追って思い出す。レオンのサファイアの首飾りを壊したことでカムイお姉ちゃんに叩かれてそれから一人で城の外へ出た。ここはどころだろ?視線で場所を確認すると五人は入れる広い部屋。マネキンが二体。大きなテーブルに裁縫道具が並んでいた。花柄のベットは壁際にあった。

「少しお茶飲みますか。」

オレンジの香りがする紅茶が二つ置かれた。鼻腔が刺激されて手が伸びそうになったけどタクミは、首を横に振った。

「大丈夫です。毒も入ってませんし。」

「暗夜の人から何かもらってはいけないってヒノカお姉ちゃんから」

「僕は、暗夜に育ちじゃないから怖くありませよ。」

「暗夜の人から産まれたのに暗夜出身じゃないの。」

「育った場所が違うだけです。」

「そうなの?じゃどこで育ったの?」

「秘境という時間の流れが違う所で預けられて育ちました。」



上品にカップの紅茶を飲む。少し真似をして飲んでみる。

「美味しい。これなんていう飲み物」

「これは、紅茶っていう香りを楽しみながら砂糖で好みの味にかえって飲むものです。おくちに合いますか?」

「うん。美味しい。」

「それはよかったです。」

「おねえさん僕どうしてここに眠っていたの?。」

「買い物に帰る途中貴方が樹の根っこで眠っていたのを僕が見つけて連れて帰ったのです。」


「そうなの。おねえさん少し隠れさせて」

「イタズラでもしたのですか。いけない子ですね。では、しばらく遊んでもいいですよ。今人形遊ぶに使う服と装飾品出してきますね。」

フォレオが席から離れ取りに行った。国に産まれたらそこで育つものだと思っていた。フォレオは、泥棒の弟の息子だけど何かが違っていた。母上と間違えるくらい綺麗で優しくって笑顔が温かい。泥棒の弟
でもしなさそうな温かい笑顔を。


「お待たせしました。僕お手製の服と装飾品です。」

「これ全部おねえちゃんが作ったの?色々形が変わっているね。」

「白夜の服の作り方は勉強中で暗夜式のお洋服しか作れないのです。嫌ですか?」

「ううん。すごく綺麗で可愛いよ。」

「それは、よかったです。」

お手製の服で手持ちの人形に着替えさせて遊んだ。フォレオは、服とアクセサリーを作った。フォレオの手先を見るとサファイアが見えた。タクミがふざけて壊したサファイアと同じ。

「ふぇぇぇぇん。」

「タクミさんどうしたのですか?どこか痛いのですか?」

アクセサリー作りをやめて泣き出すタクミを抱き上げる。なかなか泣き止まずどうしたらいいか分からなくなると入り口がバタンっと開いた。

カムイをマイルームに休ませ城の中へタクミがいないか探して回っているとタクミを見たと言う人が教えてくれた。フォレオの自室兼アトリエに入ると探していたタクミがいた。

「何処にいていたんだ!バカ弟!!」

ヒノカがずかずかとタクミの前に行くとにらみつけた。

「どうしてタクミは、身勝手なことばっかりするんだ!散々人が心配ばっかりかけて!」

タクミがさらに泣きじゃくる。

「タクミほらカムイの所へ戻るぞ!!」

フォレオから引き剥がすもタクミはしがみついた。

「タクミ!!」

「あのヒノカさん少しは落ち着いて。」

「黙れ!タクミいいかげんに!痛い。タクミよくも……」

タクミが足でヒノカの腕を蹴った。

「ヒノカおねえちゃんの馬鹿!もう嫌い!大嫌い!!泥棒も!カムイお姉ちゃんも!嫌い!嫌い!嫌い!!」

怒鳴りながらさらに泣き出すタクミにフォレオもヒノカも呆然とした。少ししゃくりながら落ち着きを取り戻したタクミは、フォレオに顔を埋め。

「……なさい」

「へ?」

タクミが泣きつかれ眠った。

「弟が迷惑かけてフォレオすまない。預けていく。」

タクミを抱き上げるとフォレオに深々と頭を下げた。

ヒノカがタクミを抱えてアトリエへ出ていたのをフォレオのを止めた。

「タクミさん寝ぼけながら僕のことを母上と呼んいたのです。タクミさんのお母様どんな人でしたか。」

「優しくて聡明な人だったよ。私たち兄弟姉妹の前で暗夜の罠で亡くなったよ。母上を一番慕っていたタクミにそのことは、話せないよ。」

「…不快なことを話させてごめんなさい。タクミさん暗夜の王子である息子の僕のこと攻撃しませんでした。大人しく僕の手作りで遊んでいたのです。」

レオンに攻撃的だったタクミがフォレオに心開いていたのが珍しいとヒノカは思った。

「五歳のタクミにとってフォレオを母上と見間違えたんだろう。遊んでくれてありがとう。」

お礼僕に言ってヒノカさんがアトリエ出ていきました。

続く。