■あらすじ■
でも、たぶん 知ってても 好きになった 好きに なってた。
従兄弟で親代わりの奏と二人で暮らす椎名サクヤは高校生の女の子。
辛い時や悲しいときは星を見上げ、星に励まされてきた。
"星が瞬くのは歌っているから" そんな風に思う。
親代わりの奏をはじめ 地域の地主の娘でちょっぴり辛らつだけど 優しい聖、明るいユーリなど 友達に囲まれて 慎ましいけど、穏やかな日々を過ごしていたサクヤだったが、18歳の誕生日の日 不思議な男の子・チヒロくんと出会う……
■レビュー■
「フルーツバスケット」の高屋さんの長期連載作品、全11巻。
フルバが23巻だったのに比べると大分コンパクトな作品だったなーという感じですが 中身は全くコンパクトでなくて笑、フルバの後期に強く表れた要素「トラウマを抱えた人が再び立ち上がる」ということをこれでもかってくらいしつこく、強く描かれた作品になっています。
高屋さんの「傷ついた人」に対する強い思い入れには毎度ですが舌を巻かされますね。
きっと高屋さんが描かずにはいられないモチーフなのでしょう。
というわけで、1巻時点では「明るくて普通のいい子」なのかな?と思ったサクヤの内面が描かれる3巻くらいから作品の色が急に出てきて、それまで どこかゆるーい、優しい学生生活が描かれていた分ものすごい落差があります。
3巻までの色が「あわないな」と思った方も3巻…いや、せめて5巻くらいまでは根気よく付き合ってみてください。
私も 1巻読んで しばらく放置していたのですが、思い立って5巻くらいまで読んだらその後は11巻までノンストップでした。
個人的に作品全体で最も印象に残ったのは、主人公・サクヤとその相手役の千広くんの両親のクズっぷりでしょうか。
ちょっとネタバレになりますが、サクヤの両親は離婚しているのですが その際 どちらも「サクヤをいらない」、「子供なんか生まなければ良かった」とサクヤを否定。
サクヤがどちらについて行くかはサクヤ自身が決めろ、と言われたものの どちらの親にも自分が望まれていないことを誰より知っていたサクヤは どちらも選ばない…というか選べずにいたが 結局 仕方なく、というカタチで父親がサクヤを引き取ることになるのですが 父親の再婚相手の女はあからさまにサクヤを邪魔者扱いする。
まぁ、やっと相手が自分と再婚してくれたのに 前の妻の子供がくっついてきて邪魔だった 再婚相手の気持ちもわからないではないのですが、それって 元を正せば誰のせい?ってやつで。
サクヤの両親の関係が終わったのは再婚相手が登場するしないに関わらないことかもしれませんが、少なくとも、サクヤを生み 育てる選択をしたのは アンタのお相手のサクヤ父で、サクヤ父はサクヤに対して責任も義務も負っている。
そしてそういう奴と再婚するなら あなたにもサクヤ父と同じ責任と義務があるんだよ って私はすごく思うんですが。
まぁ、そういうキャラづけもさることながら 最終巻までいってもこの両親たち なにひとつ改心してないのがさらに凄い。
世の中には絶対に分かり合えない人がいる、という残酷な現実を無情にも描ききってるなぁ と思いました。さすが高屋さんや…。
私の個人的な印象ですが、高屋さんは物語の中で現実を理想化はしないですよね。
どこかシビア、というか。
救いは用意するんですが、だからって サクヤは両親にわかってもらえて愛されるっていう未来は用意しない。
欠けたものは、一生埋まらない。それはサクヤがずっと抱え続けていく痛みで、それはどうしようもない。
でも、傷ついた過去があるから優しくなれるんじゃないか 欠けた場所を誰も埋められなくても、新しい場所に誰かが寄り添ってくれるなら それは幸せで暖かいことなんじゃないか そういう「救い」ですよね。
だから私的には最後くっつく相手は千広くんじゃないほうが今作のメッセージとしてはストレートだった気がするんですが、まぁ そこは少女漫画なので笑!ヒロインは最初に恋した相手と添い遂げねばならん法則 というやつで笑
いろいろ苦しいことは起こりますが、最後は綺麗なハッピーエンドになってますので 腰を据えてなにか読みたい というときにピッタリだと思います。
それぞれの抱える痛みを繊細に描く手腕は見事の一言ですので興味ある方は是非。