スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

顔合わせ


「…………てなわけで、今度彼氏が家に来るから。」

初音美穂がそういうと両親と弟は固まった。

「………まあ、彼氏?良かったわね、美穂。」
「………う、嘘だろ?姉ちゃんに限って彼氏なんて………。」
「そ、そうだ。嘘だと言いなさい。」

「嘘じゃないわよ。ホントよ。」
「まぁまぁ、準備しないといけないわね。
今度、出かける用事があったけれど延期にしましょう、貴方。」


「わ、悪い男じゃないだろうね?」
「あら、良い男よ。……とにかく、今度連れてくるから!!!
じゃ、大学に行ってきまーす!」

パタン、と玄関を後にした美穂を見送り、にこにこと笑う母の瑞枝をよそに
父の孝一と弟の颯太は顔を真っ青にした。


「さて、と。どんな相手が来るのかしらね?」
「………絶対ロクでもない男だ……。」

「………うん、絶対ロクでもない男だよ……。」

………そして、迎えた当日。

「……初めまして。美穂さんとお付き合いをさせていただいています、姫宮綾人と言います。」

「…………。」
「…………。」

「まぁまぁ、姫宮グループの長兄さん?凄いわね、美穂。」

「この間、舞台を観に行ったって言ったじゃない?その帰りに傘をさして貰ったのよ。」
「まあ、素敵なお話ね。うちの娘なんかで良いのかしら?」


「ええ。美穂さんのおかげでお見合いを片っ端からお断りすることができまして……。
私にはもったいない人物です。」
「あらあら、長兄さんともなると大変よね。
社会的地位を狙ってくる馬鹿がいるんでしょう?」
「そうですねぇ。その点、美穂さんは良い女性です。」

「あらあら、普通に育てただけなんですよ。……ねぇ、貴方?」

「お、おぅ……。」

「……なぁなぁ、綾人さんってゲームすんの?」
「ポケモンはするさ。」
「………ガブリアスと言ったら?」

「いわなだれは必須だろう。ストーンエッジよりも命中率が高い。」
「……だよねー!!」

ハイタッチをする綾人と颯太に孝一はため息をついた。


「父ちゃん、綾人さんは絶対良いよ!良い人じゃん!」
「颯太、何を言っているんだ……。」

「そうよねぇ……あ、式の方はまだよね?」
「さすがにそれはご家族の方と相談しようかと思っていまして……。」

「でもできちゃった婚は嫌だから、先に済ませた方がいいかしら?」
「瑞枝、話!!飛んでないか!?」

「あら貴方、喜んでいないの?」
「いやいやいや、色々と突っ込みたいんだが!!」

「姉ちゃんは和装と洋装、どっちにするんだ?」

「幾ら何でもそれは早すぎよ…。
でもおばあちゃんの衣裳を着たいし……。」

「綾人君はどっちがいいのかしら?」
「私は和装でも洋装でも構いませんよ。」

「だから、話が!!色々と飛躍しすぎなんだって!!」

……悲しいかな、孝一の話を誰1人とて聞いている者はいなかった。

………それから数十分後。

「やぁねぇ、貴方。」
「父ちゃんも人が悪いなぁ……。」
「………ぐすん、何で私の話を聞いてくれないんだ……。」

「愉快な家族だな、美穂。」
「あはは、まぁね。……でも、綾人のご家族もなかなか愉快よ?」
「それはどうも。」

「………まぁ、ロクでもない男だと思っていたがそうでもなかったようだ。すまないね。」
「いえ、我が家はロクでもない男が多いですから。」

そういうと綾人と孝一はにこにこと笑い合った。

「……娘のことをよろしくお願いします。」
「………はい!」



終わり。

ACT1-(10)


総合案内所を後にした芳樹はさて、と呟いた。

「うーん、普通だったらストーリー順に行くのが普通だけど
今は緊急事態だしな。」

「………そう、ですね。他のプレイヤーもログアウトしてみようとしているみたいだけど……。」
「全然、できないもんなー………。」

律達をよそにプレイヤー達がログアウトを試みようとしていたがなかなかできなかった。

「………ふと思ったけど、芳樹さん達を強制ログインしてくれた人がここに入るっていうのは?」
「それも魅力的だが、芳川は戦力にならん。」
「何万人もいるプレイヤーをログアウトさせることができたら、苦労しません。
…………それにハッキングをするなら、内部よりも外部からの方が楽なんです。」

鶴丸の言葉に幸太はそうなのか……と頷いた。


「……………ラヴクラフトの居場所は何処なのか、まずそれを探ろう。」
「そうだな。ストーリー順で行くとラスボスがいるところに行けばいいけどなぁ………。」


「ストーリーはスキップできないから、色々とメンドイんです。
自動セーブ機能とかがあるし………。」

「………そうですか。じゃあ、ゴリ押しで何とかするしかないですね。」

そういうと物吉はにこにこと笑った。

「………え、物吉さん……何をする気なの?」

「芳川様みたいに行きませんが、僕もハッキングはある程度できますので。」
「何ぃ!?」
「嘘ぉ!?」

「というか、守り刀だったら大体習得していますね。」


にこにこと笑う鶴丸に律は満月の顔を見た。

「………守り刀って皆そうなの?」


「うーん……まあ、ハッキングが得意な子は何人かいるよ。」

「でも、新選組は1番酷いな。」
「……そうですね。得意というよりはデータをぶち壊す方が得意ですから。」

「1番器用そうに見える堀川も、ああ見えて派手だからなあ。」

「………え、新選組って………。」

「長曾祢さんに、和泉守、堀川、清光に安定の5人。
個人戦も凄いけど集団戦が1番厄介かな。まだ勝ったことないけど。」

「そうですねぇ。兼定派と堀川派も1番物騒と言えば物騒なんですけど………。」


「…………。」
「……………幸太。」
「………おう、間違っても守り刀には喧嘩挑まねぇよ……。」


「………私達、フツーでよかったね。」
「…………おう。」



続く。
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2022年06月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30