スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

ACT1-(4)

双葉が聖域に来てから、数日が経った。
双魚宮の手入れや、魚座の聖衣の装着など懐かしいことがあったが、
まずは魔宮薔薇の手入れに取りかかった。

「…………あの、アテナ。」


手入れの最中、視線を感じた双葉は振り返ることなく、後ろにいるシャルロッテに声をかけた。

「………やっぱりわかっちゃう?」


「………わかりますよ。それで私に何の用事ですか?」


「私のこと、ロッティって呼んでくれない?」


「…………またですか。」
「だって歳、そんなに変わりないじゃない。
それに気の置ける友達もなかなか、作れないし………。」

「まったく今生のアテナは子供っぽくて、仕方がないですね。」
「あら、人間じみてていいと思うけど。
…………それで、どう?呼んでくれるの?」

「…………公私混同するわけにはいきませんから、呼びません。」
「シオンのことは呼び捨てにするのに?」

「………んなっ、いや、あのですね、シオンは昔からの知り合いだし、
今まで通りで良いって言ってくれたから…………。」


「………ねぇねぇ、誰もいないから聞くけど、シオンのこと好きなの?」
「どうしてそんなことを聞くんですか………。言いませんよ。」

「ケチ、教えてくれたっていいじゃない!コイバナの1つや2つ、あったって!
それに聖闘士間の恋愛を禁止しているわけじゃないし!!」

目を輝かせるシャルロッテに双葉は後ずさりした。

「………アテナ、こんなところにいたのですか………。」

「あら、シエル。もう見つかっちゃった。」

「あまり、双葉を困らせないであげてください。
まだここの手入れも不十分なんですから、魔宮薔薇の毒でも浴びたらどうするんですか。」

「大丈夫よ。魔宮薔薇の毒は私には効かないから。」

にこにこと笑うシャルロッテにシエルと双葉はため息をついた。

「双葉、教皇様にお茶でも差し入れたらどうだい?
ここのところ、激務であまりお休みを取られていないようだ。」

「シエルまでそんなことを言うのか?」

「私はただ教皇様の身を案じているだけだが?」

「……………わかった。ついでに甘いモノでも用意しようか。アテナもほどほどに。
後で低カロリーのケーキをお持ちしますから。」

「だから、ロッティって呼んでって言っているのに………。」
「無茶苦茶なことを言わないでください、アテナ。」
「はーい。」
続く。

ACT1-(3)


双葉は黄金12宮をダニエルとシャルルと共に進んでいった。

「……今この時間だと、全員教皇の間に揃っているな。」

聖域に着くと同時にダニエルは黄金聖衣を身に纏った。さすがにTPOは弁えているらしい。

「そうだねえ。」

「…………。」

そして自身がかつて守護していた双魚宮に到着した際、双葉は懐かしさと歓喜の表情に溢れた。


「………ただいま、双魚宮………。」

「………おうおう。良い顔してんのな。教皇に会ったら熱烈な抱擁をするんだろう?」

「誰がするか。」

「えー、でも243年ぶりの再会だろ?絶対、抱擁すると思うけどなぁ。」

「……………。」

日本から持ってきた荷物を双魚宮に置き、双葉はダニエルとシャルルに連れられて
教皇の間に向かった。

「おう、蟹座のダニエルただいま帰還したぜ。」

「獅子座のシャルル、入りまーす!」

2人がそういうと教皇の間の扉が開き、残る8人の黄金聖闘士の小宇宙を双葉は感じた。
「……………!!!」


「………お待ちしておりました、魚座のアルバフィカ…………いいえ、蒼乃双葉さん。
ようこそ、聖域へ。
……あ、でもこの場合はお帰りなさいって言った方がいいのかしら。」


慈悲と慈愛のこめられた優しい声が教皇の間に響く。
玉座には小柄な体格の少女が座っている。
そしてその隣には懐かしき顔が立っていた。

「………お初にお目にかかります、アテナ。
懐かしき聖域に来られたこと、心より嬉しく思います。」

会釈して膝をつくと、アテナ………シャルロッテははにかんだ笑顔を見せた。


「……ああ、本当にアルバフィカに生き写しだな。
243年前とちっとも変わっていない。」

「…………本当に。あの時の出来事が昨日のように思い出されるよ。」


シオンと再会した双葉はポロポロと涙をこぼした。

「………………シオン!!!無礼を許して欲しい!!」

そういうと双葉はシオンに抱き着いた。

「………会えて良かった………。」
「……………双葉。」

残りの8人の黄金聖闘士達から、ひゅー、という声が聞こえた。
「ほらな、抱擁するって言っただろ?」

「まぁ、243年ぶりの再会だしねー。」

「本当に……積もる話もあるでしょうね。」

シャルルの言葉にシャルロッテはうんうん、と頷いた。

「………我が師よ、自己紹介をしてもよろしいですかな?」
「………あ、あぁ。そうだったな。皆、双葉に自己紹介をしてくれ。」

243年ぶりにアルバフィカ……双葉と再会したシオンは弟子に言われてコホンと咳払いをした。

「では私から。私は白羊宮を守護しています、モカと言います。よろしくお願いします。」

「金牛宮を守護するヴィゴーレだ、よろしくな。」

「……私は双児宮を守護するアダムだ。今この場にいないがイヴという弟がいる。」
「で、俺が巨蟹宮を守護するダニエルだ。」
「獅子座のシャルル、改めてよろしくな!」
「……処女宮を守護するクシナダだ。よろしく。」

「天秤宮を守護する童虎をすっ飛ばした先にいるのが天蠍宮のシャウラだ。」
「人馬宮を守護するシエルだ。よろしく。」
「……磨羯宮を守護するアルトリウスと言う。」

「宝瓶宮を守護するグラスだ。よろしく頼む。」
「………魚座のアルバフィカ改め蒼乃双葉だ。こちらこそよろしく頼む。」


…………かくして、聖域での双葉の生活の日々が始まった。


続く。

ACT1-(2)

日本を発ち、7時間ほどのフライトをして、
ギリシャの空港に到着した双葉はくたぁと体を伸ばした。


「はぁ………ホントに久しぶりだなぁ、ギリシャに来るのは。」

ロビーで入国手続きを済ませると、背中に箱を背負った男が待ち構えていた。


「……いよぅ。」
「…………………お前、蟹座の黄金聖闘士か。」

「初対面の人間に向かって、そう威圧すんなって。俺達ゃ、仲間なんだからよ。
俺は蟹座のダニエルだ。…………ホントに先代の魚座の生まれ変わりなのかい。」

「………ああ。私は蒼乃双葉。前世名はアルバフィカだ。
ただ、混同するなよ。
前世と私は全くの別人だ。アルバフィカ本人が生き返ったわけじゃない。」
「それはそうだろうな。
ま、長い時を超えりゃ世界の何処かに転生していてもおかしくはないさ。
………にしても、いいケツしてんな。スリーサイズ幾つだ?」
「………誰が言うか!」
ダニエルの言葉に双葉は眉間にしわを寄せた。
「ま、何はともあれ、聖域に案内するぜ。ついてきな。」


ダニエルの案内で双葉は聖域に向かった。



古き良き時代のコロッセオに到着すると双葉は懐かしさのあまり、涙を流しそうになった。
生まれてきてからずっと、帰りたがっていた聖域にやっと到着したのだ。


「………前世の記憶を持っているんだったら、勝手はわかるな?」

「ああ。………大がかりな改装とかしていないのならな。
243年前と全く変わっていない。」



「…………お、ダニエル!帰ってきたんだな、単独任務お疲れ様!」
コロッセオを通り、聖域に到着すると白羊宮から1人の少年が飛び出してきた。

「………ダニエル、彼女でもできたのか?」
「違わい。ほれ、教皇が言っていただろう。先代魚座の生まれ変わりだ。」
「へぇ、アンタが!?」

少年は純粋な眼で双葉をじろじろと見た。

「俺、獅子座のシャルルって言うんだ。よろしくな。……なぁなぁ、あんた何歳?」

「今月で18歳を迎えたばかりだ。……そういうお前は私よりも年下か?」
「うん、なるほど!じゃあ、俺の方が年下だな!俺、15歳だもん!」


にこにこと笑うシャルルに双葉はため息をついた。

「………さて、と。お前、前聖戦のどのタイミングで死んだ?」
「………聖戦が終結したのは知らない。多分、最初の方だと思う。」
「なるほどな……じゃあ、牡羊座と天秤座が生き残ったのは知らないか。」

「…………シオンと童虎が生き残ったのか!?」
「ああ、そうだ。童虎さんに関しては今、中国の五老峰にいるぜ。」

「……それで、シオンは………?」

「ああ、黄金聖闘士から教皇に大出世したぜ。
ったく、女神の加護だか何だか知らねぇが、無駄に長生きしているんだ。」

「………そうか、シオンと童虎が生き残ったのか………。」


懐かしい名前を聞いて双葉は目頭が熱くなったのを感じた。


続く。

前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2022年06月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30