スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

2人の馴れ初め。


「………美穂。これを。」

「まあ、今年も素敵な薔薇のブーケだこと。」

「ママ、良かったね。」

「私達からはパパとママの似顔絵だよ!!」
「うん!」
「だー!!」

綾人と子供達からプレゼントを貰い、美穂は微笑んだ。


「そっかあ………もう8年になるのねぇ……。」
「何やかんやで色々と任せきりにしてはいるけど、ここまでこれたのもお前のおかげだと思っている。
………ありがとう。」

「………いえいえ。こちらこそ。」

「ねぇねぇ、パパ。ママ。2人はどうやって知り合ったの?」

「そうねぇ、学生時代の友達が綾人の出演する舞台のチケットを取ったんだけど
友達が忌引で見に行けなくなったから代わりに見に行ってって言ったのが、きっかけかしらねぇ。」

そういうと美穂は当時のことを思い出した。



「美穂……ゴメン、チケット取ったんだけどおじいちゃんの葬儀があって見に行けなくなったから、
代わりに見に行ってきて!!」
「………えぇ……?興味ないのに?」
「アンタ、どうせ暇なんでしょ……お願い、観に行って!!ね、ね?」


「もう……わかったわよ、でも感想期待しないでね?」

美穂は友達の頼みに折れ、舞台を見るべく劇場に向かった。

華やかな舞台と俳優達の演技に美穂は圧倒された。

「(これは確かにハマるのもわかるわ………。)」




「………こんなに買っちゃった…………。」

バッグにグッズをしまったと同時に、女性客とぶつかった。


「あいた!」


「きゃ、すみません!」


ぽっきりとヒールが折れ、美穂はガクッとなった。

そしてロビーから劇場外に出た時、雨が降っていた。

「………最悪…………傘なんて持ってきてないわ………。」

柱に背中を預け、美穂はため息をついた。


「…………はぁ、ツイてない………。やっぱり私みたいな人間は浮かれちゃいけないのかしら。」
「………そんなことはないですよ。浮かれる時とそうでない時の気持ちは切り替えが大事なのですから。」



スッと傘をさされ、美穂は隣を見た。

「失礼。余計なお世話でしたかな?」
「……いいえ。とんでもない。とてつもなく困っていたところだったの。
余計なお世話でもなんでもないわ。」

ひょい、と綾人の太腿から満月が顔をのぞかせた。
「あら、可愛い!妹さん?」
「ええ、体調が良いのと大千秋楽ということもあって来てもらったのですよ。」

にこにこと美穂に微笑まれ、満月は照れくさそうに微笑み返した。

そして、すぐ後ろにやってきた芳樹に気づくと、彼の方に走って行った。

「自慢の妹さんなのね。あんな可愛い子がいたら、確かに溺愛したくなっちゃうかも。」

「男ばかりのところにようやく舞い降りてきた天使なのですよ。
……まあ、この話をすると大体ドン引きされますが。」

「あら、良いじゃない。慈しむのは素敵なことだわ。
あんな可愛い天使、確かに守りたいって思うのは当然かもね。」

美穂の言葉に綾人はフッ、と微笑んだ。

「………貴女のような人は初めてです。いかがでしょう?濡れる月を一緒に眺めませんか?」



回想終了。

「…………それでそれで?ママは何て答えたの!?」


「お言葉に甘えさせてもらうことにしたわ。ヒールが壊れていたし、土砂降りの雨に濡れて帰るのは
嫌だったから。
それで結婚を前提としたお付き合いをしませんかって話になって、結婚したのよね。」

「パパ、口説くの下手くそだね。」
「………下手でいいんだよ。それでも構わずノッてくれた美穂には今でも感謝している。」

「パパの下手くそな口説き方は忘れられないわぁ………当時の私からしてみれば、素敵だったもの。」
「へぇ………芳樹おじちゃんはロマンもへったくれもないって言っていたよ。」
「……芳樹め、今度あったらコブラツイストを食らわせてやる。」

「でもパパ、ママの話する時、とても嬉しそう。」
「うん。ママのこと大好きなんだもんね。」
「ね!」
「だー。」

「あら、ママもパパのことは世界中の誰よりも好きなのよ。何てたって、世界一カッコいい人なんですもの!!」


終わり。
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2022年06月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30