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ACT2-(4)

「……………はぁ………。」

桜庭市営文化ホールの稽古場で満月はため息をついた。

「お嬢様、大丈夫ですか?」
「………ん、平気。ありがと。」


物吉から清涼飲料水を受け取り、満月はそれを口に含んだ。

今の時期は幕末天狼傳を公演することもあり、稽古練習も終盤に取りかかっていた。

「お疲れ様でーす。」

「あ、まこちゃん、お疲れ様!」

大和守安定を演じる日向誠が稽古場に到着し、満月は声をかけた。

4歳年上の誠は「まこちゃん」の愛称で呼ばれており、
特に女性から人気があった。

「満月ちゃん、もう来てたんだ。」

「はい、学校を早退してこっちに来ちゃいました。」

「満月ちゃん、まだ学生なのに凄いよねぇ。」

「……何しろ、衣装と楽曲を同時進行でやっているんだ。当たり前だろう。」

蜂須賀虎徹役の保住志鶴の言葉に堀川国広役の佐伯涼と和泉守兼定役の水泡千夏は
うんうと頷いた。

「………それに引き換え、こいつときたら………。」


「何で俺に話題を振るんだ、志鶴。」

長曽祢虎徹役の和蔵正宗は冷や汗をかいた。


「………全然、可愛げがない。」
「無茶言うな、この中では1番の最年長なんだから………。」

「………とか何とか言って、この間、政宗さんが表紙を飾った雑誌買ったの知ってますから。」

涼の発言に千夏はヒュゥ、と口笛を吹いた。

「志鶴、何やかんやで尊敬しているもんなー?」

「それは言わなくてもいい!!」

「何か綾人さん達を見ているみたいで面白いね。」

「………まこちゃん、それ本人の前で言わないでくださいね?」

「満月ちゃん、もうちょっと砕けてもいいのに……。」

「てか思ったけど、満月ちゃんわがまま言わないから助かるよね。
大体、末っ子だと超わがまま言うから…………。」


「ああ……千冬ちゃんのことですね………。
まあ、何ていうか私難産だったみたいだし、小さい頃は病弱だったから
皆、溺愛しちゃって。」

「逆に鬱陶しいってことはなかった?」

「いえ、全然。」
「満月ちゃん、良い子過ぎる。うちの妹にならない?」

「千夏、それは無理だと思うよ。」

涼の言葉に千夏はあはは、と笑った。


「おーし、稽古練習始めるぞー。」


「「「はーい。」」」



続く。

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