スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

ACT2-(3)


「…………はぁ………小百合の布教には参ったもんだなぁ………。」

親友の宮本小百合と別れた七瀬愛梨は母親から頼まれたお使いのため、商店街に来ていた。

「でも、確かに満月ちゃんは可愛いから、ゾッコンしたくなる気持ちもわかるなぁ………。」

八百屋に到着した愛梨はメモを片手に食材をカゴに入れていく。

と、前方不注意でカゴが前にいた客のカゴとぶつかった。


「………あ、すみません!大丈夫ですか?」

「こちらは平気です。………食材、大丈夫ですか?落ちていませんか?」

「あ、はい……………って、ええ!?」

客の顔を見た愛梨は思わず絶叫しそうになった。

目の前に立っていたのは、つい先ほどまで小百合が熱く語っていた姫宮満月その人だったのである。

「………どうしたの、満月ちゃん?」

「………あ、芳樹さん。ちょっとこの人とぶつかっちゃったので。」

「そうなんだ。………怪我はないかい?」

「あ、はい、大丈夫です………。」


………それから数分後。愛梨はなぜか、芳樹と満月に連れられてカフェに来ていた。

「ホントにごめんなさい。これはお詫びってことで。」

テーブルにパフェが置かれ、満月はスッと愛梨にそれを渡した。


「え、でも、いいんですか、その、これってまずいっていうか……。」

店内にいる客達の視線にくじけそうになった愛梨は申し訳なさそうに言った。

「大丈夫、大丈夫。これぐらいで嫉妬するようなら心が狭いってことになるからね。」
「これもコミュニケーションの1つだと思ってくれれば………。」

「そうですよ!あまり気にしないでください。」

隣に座っている物吉貞宗の言葉に愛梨は内心ホッとした。
「あ、はい………。」


「………あ、そうそう。サインいるかい?」
「え、くれるんですか!?えっと、友達の分もお願いしてもいいですか?
強欲ですみませんけど………。」
「いいよいいよ、友達の名前、何ていうの?」

「小百合です、宮本小百合。私は七瀬愛梨です。」

さらさらと慣れた手つきでサインを書いた2人は2枚の色紙を愛梨に渡した。

「あ、ありがとうございます………。
あの、2人については友達から布教して貰ったばっかで………。」

「あ、じゃあビギナーさんなんだ。」
「そうなんですよ…………。
友達がすごくお2人を推しにしていて、待ち受けも公式サイトの画像にしているんです。」

「………へぇ、それは嬉しいな。ね、満月ちゃん。」
「はい。」

「………あの、2人はデートだったんですか?」
「そ。デート帰りに食材を買いに行こうと思ってね。
愛梨ちゃんは家のお使いなのかな?」

「そうなんですよ……うちのお母さん、幸人君のファンで………。」

「そうなんですかぁ?」

ひょい、と横にいつの間にか幸人が座っていた。

「うわぁぁ!?ビックリした!!」

「ゆき、驚かせたらダメだろ?」
「そうですよ、幸人お兄様。」

「若旦那様、お嬢様、ごめんなさーい。止めたんですけど………。」

幸人の守り刀をしている今剣が両手を合わせて謝った。


「八百屋に行ったら、3人がいないから何処に行ったのか聞いたらここだって教えてもらったんですぅ。
貴女のお母さん、僕のファンなんですねー。はい、これ僕のサイン入りブロマイドですよ!」
「え、いいんですか!?お母さん、狂喜乱舞しそう………。」

「えっへへぇ、ぜひ狂喜乱舞してくださいね?」

店員を呼び止めて注文をする幸人に芳樹はやれやれ、とため息をついた。

「騒がしくてすまないね。」

「いえ、私にも弟がいるので気持ちはわかります。
もう、やんちゃというか遊び盛りの時期なので、面倒見る方も大変なんですよ。」

パフェを食べながら、愛梨は芳樹にそう言った。

「でも、ちゃんと言うことは聞いてくれるし、
私が寝込んだ時なんかは友達との約束を延期にして看病してくれたりとか。」


「へぇ、良い弟さんなんだね。
なお達とは偉い違いだ。」

「直人兄ちゃんも、結人兄ちゃんも悠人兄ちゃんも、早く結婚してくれないかなぁ……。」
「それを言うなら、ゆきもだろ?」

「僕はまだ仕事が恋人だから良いんですぅ。どっちかっていうと綾人兄ちゃんの方が大変じゃない。」

「あー………姫宮の次期当主云々がありますからねぇ……。
芳樹さんも、綿貫グループの次期当主っていうのが双肩にかかっていると言えばかかっているし……。」

「…………あのぅ、凄く大変なんですねぇ…………。」

「ま、こればかりはしょうがないよ。なお達も婚約者探しが大変だしね。」

「(それに闇呪のこともあるから、それを平気だと思える人がいないとそもそも婚約できないし………。)」
「(逆に美穂お義姉様は凄いあっさりとしていたから、お強いなぁとは思っているんだけど。)」

「………?」

6人がカフェを出ることにはすっかり遅くなっていた。

「……あ、姉ちゃん!遅いよ、心配したんだよ!!」
「ごめんごめん、ちょっとお話してたの!有名人と!」
「うっそ、マジで!?」

「ママもカンカンにキレていたよ。」
「ふっふっふ、私には最終兵器があるから大丈夫なのだ。」


「どんな最終兵器だよww」

「じゃあ、芳樹さん、満月ちゃん、幸人君、今日はありがとうございました。
次の幕末天狼傳、絶対観に行きますね。」

「うん、その時を楽しみにしているよ。」

「………はい!!」


続く。

ACT1-(1)


「私はいつもこの毒薔薇といた……だが、今初めて思う……この花を美しいと……。」


………彼女の1番古い記憶は薔薇の花弁が宙に舞っていくなか、意識を失う記憶。
ただそれは今生の記憶ではなく、前世の記憶。
壮絶な戦いを繰り広げ、仲間と自身を慕う少女に見守られ、最期を迎えた青年の名は
「アルバフィカ」。
………ギリシャ・聖域において、88人いる聖闘士のうち、
最も頂点に立つ12人の黄金聖闘士の1人であった。
そして、最も美しいと評された彼は冥王ハーデスに仕える三大巨頭と戦い、その命を落とした。
…………はずであった。



日本、都内にある国際空港。

「……ふぅ………。」
蒼乃双葉は空港のトイレで鏡を見ながら、ため息をついた。

「………双葉、体調はどう?大丈夫?」


トイレから出てきた娘に、母親の一葉は声をかけた。

「大丈夫だよ、母さん。」

「何だかあっという間だったわね………18年間、何事もなく過ごしてくれて。」

「………うん。こちらこそ、申し訳ない。ギリシャに行きたいって小さい頃から駄々をこねて。」

「仕方がないわよ、貴女聖闘士の記憶を持っているんだもの。
でも、約束は約束で守らないとね。」

アルバフィカの魂と記憶を持って日本人に転生した双葉は資産家の両親の庇護下で
健やかに過ごした。
……ただ、小さい頃からギリシャの聖域に行きたいと困らせていた。


外交官であった父親が半信半疑ながらも聖域について調べると、
双葉の素性を知った教皇がぜひとも聖域に来て欲しい、と言ったのだ。

ただ、18歳になるまでは日本で過ごすようにと言われた。
そのため、双葉は日本で来たるべき時に備えて鍛錬をし、つい先日高校を卒業した。


そして今日、双葉は両親に見送られて聖域に旅立つ。

「………向こうの方々によろしくな。だけど辛いと思ったら、いつでも帰ってきてもいいんだぞ。」
「………うん、わかったよ、父さん。」

「前世では親の愛情に恵まれなかったアルバフィカの分まで愛情を注いだと思うが………。」
「………あ、うん。そこら辺は大丈夫。
親代わりの先生から厳しいけれど優しかった愛情を貰ったし。
でも、今生では十分すぎるほどの愛情を貰ったから………。」

そこまで言いかけて、双葉は両親に抱き着いた。


「……………親不孝な娘でごめんなさい。でも私はやらなければいけないから。
聖域での務めを、果たすっていう。」

「………ああ、そうだな。」
「………体に気を付けるのよ。」

ギリシャ行きの便が準備できたというアナウンスが流れ、
双葉は両親に手を振って搭乗する便に向かっていった。


続く。

プロローグ

………聖戦。

数百年に1度、アテナの聖闘士が総力をあげ臨まなければならない戦い。


そして現代において、243年前の時を超えて1人の青年が少女に転生したことから、

波乱の物語が幕を開けた………。
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2022年06月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30