落柿舎は元禄の俳人向井去来の住居だった。
去来は松尾芭蕉の門人であり、芭蕉は三度ここに来ている。
庵のすぐ前には、
樹齢300年とも言われる柿の木がある。
当時の庭に柿の木が四十本あり、
都からきた商人が一貫文を出して、
柿の実を買う約束をして帰る。
その夜のうちに柿の実は全て落ちてしまう。
翌朝さきの商人が来て、
こんなに落ちた柿を見たことがないと、
商人は買おうとしたことを詫びて、
お金を返してもらった。
このことからここを落柿舎と呼ぶようなった。
落柿舎の入口には常に蓑と笠がかけてある。
ここに蓑笠がかけてあったら在庵、
なければ外出中というしるしだったそうだ。
今は落柿舎のシンボルとして常にある。
庵といっても、ひとりが住みには、
ちょうどいい広さ。
ちょうど正月の千両の生花もあり、風情が増す。
苔むした鹿威しの手水鉢。
南天の赤い実に添えて、珍しい白い実で紅白。
この落柿舎から、少し歩いたところに、
去来の墓がある。
去年もここで、
柿の実が落ちるのを眺めていたのだろう。