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ACT1-(5)


「………ええっと、ステータスを見る限りだと
芳樹さんは魔法剣士、姫宮さんは魔女、物吉さんは召喚士か………。
パーティだったら、それなりにバランス取れているんだな。」

「ちなみに召喚士……と言ったら、どんなのが召喚できる?」
「基本的には自分がイメージしたものを具現化するって言えばいいのかな……。」

「………ああ、幽☆遊☆白書の鴉か。」

「………鴉?」

「………90年代のアニメはちょっとわからないけど……。」
「まあ、敵キャラクターに自分のイメージしたものを具現化する能力を持った奴がいたんだよって話。」

「………物凄く変態な奴なのですが、説明は割愛します。」
「昔の漫画を議論している場合じゃないからね。」

「は、はい……そうですね。」

「とりあえず、聖獣や魔獣の類を引っ張り出して召喚すればいいですかね。
データについては……。」

「それだったら、ユグドラシルに直接アクセスしていつでもデータを読み込めるよう
リンクしておいた方が良いと思います。」
「そうだよな。ユグドラシルとリンクしておいて損はないと思う。」
「なるほどなるほど。」
「ちなみにリンクするためにはどうすればいい?」

「えっと、このクエストをクリアしないといけないんですけど………。」
「…………。」
「……………。」
「……………。」


「………あの、どうしたんですか?」
「やっぱり、無理があるんじゃねぇのか?」
「……よし、やろう。」
「ですね。守り刀の力を発揮するとしましょう。」

「じゃあ、後方支援はバッチシ任せてください。」

「え、えぇぇぇぇ!?」
「大丈夫なのか!?」

…………そして、それから1時間後。


カンカンカン、とゴングが鳴り響き、芳樹と物吉はノーダメ―ジフィニッシュを決めた。

「………はい、これでユグドラシルとデータリンクすることができました。」
「すげぇ………初心者だったら、攻略本を片手にしないとクリアできないクエストなのに……。」
「ビギナーズラックが効いているのかな?」

「まあ、物吉は戦場に出るたびにいつも勝利していたっていう逸話を持つ刀の名を襲名しているから。」
「満月ちゃんの守り刀だけどね。」
「…………そもそも、守り刀って何だ……?」

「あ、えっとね。刀の名前を襲名した使用人兼護衛の人達の総称のことなの。
綿貫グループと姫宮グループの血縁者を守ることを使命としているんだよ。」

律の説明に幸太はへぇ、と納得した。

「じゃあ、綿貫さんにもいるのか?」
「当然。」
「俺、剣道やっているんだけど手合わせお願いしてもいいかな?」
「アンタ、ソッコーでボコボコに負けるわよ。」
「俺は強者に挑みたいの!強い奴には憧れるだろ、フツー!」

「………この時代遅れの熱血少年!!」

幸太の言葉に律はプツン、とキレると文句を言い始めた。

「青春だねぇ………。」
「そうですねえ………。」
「まあ、喧嘩するほど仲が良いといいますし。」

「……………でも、戦い慣れているんですね。何かゲームでもやっていたんですか?」

「ポケモンやっていた。」
「はい。」
「ポケモン、楽しいから………。」

「………わかる。ポケモン、未だに種類が増え続けているからなぁ……。」
「ひょっとして、XYをやっているんですか?」

「そうだね。俺と満月ちゃんのお兄さん達が特に盛り上がっていたな。」
「……綾人お兄様達、厳選厨の廃人ですからね。」


「ちなみに満月ちゃんは色違いホイホイだね。
満月ちゃんを膝の上にのせてゲームをプレイすると、ひかるおまもりも真っ青になるほど
色違いと遭遇していたから。」

「………でも性格とか個体値とかはあまり狙えないんですよね……。」

「色違いあるある事例だな……。」
「………うん。」



続く。

ACT1-(4)

PMWの世界にログインした芳樹達は自分達のデータを確認した。

「…………まぁ、ステータスは仕方がないか。」

「そうですね。強制ログインしたせいでもありますけど………。
それはそれとして、まあいいんじゃないでしょうか?」

「役重さん、今何かイベントでもやっているんですか?」

「うん。期間限定イベントをやっているから、ログインしている人達は結構いると思うよ。」
「………その中から、犯人を探すのは大変だね。」

「ひとまず、クエストをこなしてアイテムを回収していきませんか?
無難ですけどそれが1番かと。」

「そうだね。後、強制ログインしたことは黙っていようか。」

「………そ、そうですね。皆、暴動起こしちゃいそう………。」


芳樹の言葉に律は頷いた。


「それで幼馴染は何処にいるの?」

「………多分、総合案内所にいると思う。
クエストをする前に、そこに行くから。」

「なるほど。」


芳樹達が総合案内所に行くと、キョロキョロと誰かを探している魔法剣士の姿があった。


「………幸太!!」

「律!?おせぇよ!!」

「この馬鹿、おせぇよじゃないでしょ!?」

バッと抱きついてきた律に幸太は顔を真っ赤にした。

「馬鹿野郎、抱き着くアホがいるか!!」

「おばさん、心配していたんだからね!!保護者による強制ログアウトができなくなったって
泣きついてきたんだから!!」

「そ、そうだぜ……他のプレイヤー達もログアウトできない状況になって
総合案内所はパニックになっているんだ。
AIも応答しないし、何がいったいどうなっているんだか……。」

「小野幸太君だね?ちょっと話をしたいから、こっちまで来てくれないか。」

「え?何で俺の名前知って………。」

「私が教えたからよ!」

場所を移したところで芳樹は改めて自己紹介をした。


「俺は綿貫芳樹。こっちは姫宮満月ちゃん。で、その隣にいるのが物吉貞宗だ。」

「小野幸太です。えっと、律の幼馴染です。」

「律ちゃんにはすでに話してあるんだけど、今、この世界は内部から
何者かがアクセスしてログアウトできないようになっているんだ。」

「だ、誰かが!?何のために!?」

「そこまではわからない。で、俺と満月ちゃん、物吉の3人で
不正ハッカーを探しに来たんだけど……。
何分、PMWの知識が不十分なんだ。」

「そこで役重さんと小野さんに、私達を支援して欲しいの。」


「俺は別にいいけど、律は?」

「私は即時OKしたよ。アンタのことが心配だったし。」

「……じゃあ、俺も協力する。」


「ありがとう。感謝するよ。」

「何か警察みたいな仕事をするみたいでワクワクしているんだけど。」


「幸太、一応遊びじゃないんだからね?」


「わかってるよ………ったく、心配性だな。」


「…………今の状態では何の手掛かりもありませんから、まずは何しましょうか?」

「………レベル上げかな?」

「うーん、綿貫さん達のレベルは今、1だから……。
短期間でレベルアップとなるといきなりだけど、上級者向けのクエストをしてもらうことになるんだけど……。」

「………えっと、姫宮さん達ポケモンをプレイしたことは?」
「あるよ。」

「うん、ある。」

「ありますねぇ。」

「………えぇっと、モンスターとの群れバトルが無難かな。
上級者向けだけど、成功すればあっという間にレベルアップできるから。」


「……うん、じゃあそれで行こうか。」

「よろしくお願いしますね。」


「わかった。じゃあクエストの場所まで案内するよ。」



続く。

ACT1-(3)

「………姫宮さん!どうしよう、幸太がログアウトできなくなっちゃった!!」

パソコンルームに通されるなり、律は満月に駆け寄って幼馴染の幸太がログアウトできなくなったことを
伝えた。

「私、ママからお使いを頼まれたからログインしなかったんだけど………。
家に帰ってきたら、おばさんから幸太がログアウトできなくなったって
連絡が来て……。
それで本社の方に行けば、ログアウトできなくなった原因がわかるんじゃないかなって……。」

「………そうだったんだ………。」

「今、PMWは内側からハッキングされて外部アクセスを受け付けていない状態なんだ。
誰が何の目的でそうしているのかはわからないけど………。
俺達これから強制ログインして入るところなんだ。」


「………強制ログイン?そんなことできるんですか?」

「うん。芳川さんこう見えても、ハッカーの腕前が凄いから。」
「でも若旦那様、お嬢様。PMWの知識はお持ちで?
強制ログインできたとしても、外部からのサポートは一切できませんよ?」

「………となると、助っ人が必要だな。今ここにいるメンバーでPMWに詳しいって言ったら………。」


芳樹はそう呟くと律の顔を見た。

「………役重さん、私達と一緒にログインしてくれる?」

満月の言葉に律はえ、と呟いた。


「そうですね、役重さん常連さんですから詳しいですし、信用できます。」
「俺からも頼むよ。来てくれると心強い。」

「………は、はい!私でよければ喜んで!」

「ただ念のために親御さんに連絡しといてくださいね。
しばらくログアウトできませんから。」

「あ、は、はい!!じゃあ、ママに連絡をして………。」


律はスマホを取り出し、母親に連絡を取り始めた。

「………ええっと、そしたらユーザーデータの登録から始めないといけないか。」

「若旦那様と僕は戦士系、お嬢様は魔女系ですね。」
「うん、そうだね………。なんていうか色々複数の職業があるから、大変だ……。」


「ママからOK貰いました!無理しないようにねって。」

「よし、じゃあユーザーデータの登録をして……。
芳川、智久に連絡を頼む。」
「了解です。」


「犯人が外部からアクセスしていた場合、確保しなくちゃならないからね。
智久と鶴丸の2人に任せるとしよう。」

3人は悪戦苦闘しながら、ユーザーデータの登録を完了した。

「んじゃまあ、ゲーム用端末を用意してヘッドホンを付けてください。
強制ログインしますんで。」

椅子に座った4人は芳川の指示に従い、ヘッドホンを着用した。


芳川はハッカーの腕前を使い、データを一部書き換えて4人がログインできるようにした。


『ようこそ、Phantasm Mythlogy World、“PMW”へ。
ユーザーデータをリロードします。』

アナウンスと共に4人のデータがリロードされる。


そして、4人が目を開けるとそこにはPMWの世界が広がっていた。



続く。

ACT1-(2)



「………おう、律。今日もPMWやるんだろ?」
「うん、やるよ。今日から期間限定イベントだもんね。」
「よーし、一緒にやるか。」
「うん。」
家に帰宅した後、律は母親からお使いを頼まれた。
「帰ってきて早々に悪いんだけど、お使い頼まれてくれる?」
「はーい。幸太、ごめん。ちょっと遅れてログインするね。」
「へーへー。
(せっかく一緒にログインしようかなぁって思ったのに、
何でタイミング悪いんだよ……。)」
表面上は仕方ないなぁ、と思っていたが内心ではつまんないのと思った
幸太であった。
家に入って自室に戻ると、ゲーム用端末を机の引き出しから
引っ張り出して、ヘッドフォンを装着して端末をパソコンに繋げた。
どさっとそのままベッドに倒れこんだ幸太は瞼を閉じた。
『ようこそ、Phantasm Mythlogy World、“PMW”へ。
ユーザーデータをリロードします。』
寝ているような状態で、意識だけが仮想現実空間に飛ばされる。
個人差はあるが、人によっては乗り物酔いになるとか。
いつも通り、ユーザーデータをリロードすればゲートに転送される。
短時間で終わるクエストを消化しながら、幸太は律がログインするのを
待っていた。
……この時、既に。異変が起きていたことを。
幸太は知る由もなかった。

その日の夜。芳樹はゲームの開発会社取締役をしている
学生時代の同級生から大至急来て欲しいという連絡を受け、
満月を連れて本社に来ていた。
「すまん、綿貫。急な呼び出しをしてしまって。」
「気にすんな。同じ学校のクラスメイトのよしみだ。
……で、急な呼び出しというと話は悪い方か?」
「あ、ああ。
俺の会社が製作したPMWについてなんだが……。
……今日の夕方にログインしたプレイヤーが全員、
ログアウトできていないんだ。」
「強制ログアウトとか、いろんな手を試してもですか?」
「ああ……。
理由は俺にもわからん。何故かPMWのデータが一部書き換えられて、
管理権限を持つ俺達のデータを一切受け付けていないんだ。」
「マジか。」
「……マジな話だ。強制ログアウトもできなければ、
ログインもできない。
おまけにAIとの連絡も繋がらない。」
「AI?」
「万が一の事態に備えて、強制ログアウトとかを行う権限を持った
AIがいるんだ。こちら側の応答に反応しないということは
もしかしたらハッキングされた可能性がある。
このままだと催眠状態になっているプレイヤーが、
昏睡状態に陥ってしまう。」

「………わかった。とりあえず、詳しい奴を呼ぶよ。」

芳樹はそういうとスマホを取り、グループに連絡をした。
そして綿貫グループお抱えのハッカーである
芳川が本社にやってきた。


「どうも、綿貫グループお抱えの芳川と言います。」

芳川はそういうと制作会社取締役の櫛木に名刺を渡した。

櫛木から話を聞いた芳川は早速パソコンを経由して
プレイヤーがログアウトできない原因を調べた。


「………むぅ。」

「芳川さん、何かわかった?」


「外部からハッキングされた痕跡はないですね。
内部からハッキングされています。」
「だ、誰が何のために!?
綿貫、俺はどうすればいい?」
「落ち着け、櫛木。
警察を呼んで、事情聴取をするから集合をかけてくれないか?」

「あ、ああ………。」

芳樹の言葉に櫛木は頷くとその場を後にした。


「………で、どうする?」
「一応、俺の腕ではハッキングできるから、中に入れる。
PMW内に、必ずいるはずなんだ。このゲームをハッキングした犯人が。」

「じゃあ、俺と満月ちゃんと物吉の3人でこのゲームに参加しよう。
そうすれば、何とかできるはずだ。」
「はい、わかりました。」


「………あ、あの………ちょっとよろしいでしょうか。」


パソコンルームに櫛木の秘書が入ってきた。

「……どうかしましたか?」
「幼馴染がPMWにログインしたまま、ログアウトできなくなったという常連さんが………。」

「……常連さん?」

「はい。役重律さんと名乗っていますが。」

「………通してやってください。満月ちゃんの同級生ですから。」

芳樹の言葉に秘書はわかりました、と頷いた。



続く。

ACT1-(1)


「…………PMWってそんなに面白いの?」


とある日の午後。満月は同級生と共にシスターからPMWについての注意喚起を受けた。

「面白いらしいよ。
ただ、中毒性が強いらしくて3度の飯よりPMWをっていうプレイヤーが続出しているみたい。」

「別の学校なんか、クラスの大半がPMWの中毒性にハマって何日間もログアウトしていないとか
何とか。まあ、衰弱して救急搬送されたとかどうとか。」

「……………現代社会が抱える故の闇、だね。」

「そうですね…………。」

満月と物吉は同級生の話に耳を傾けながら、帰宅の準備を始めた。


「…………やあ、満月ちゃん。」
「あ、芳樹さん!」

学院の駐車場で満月と物吉は芳樹と合流をした。

「今日、シスターからPMWについて注意喚起があったんですよ。」
「………ああ、中毒性の高いゲームだったよね。
パーティを組んだり、ソロで活動したりしている人もまちまちだとかで。」
「まあ、僕達はそんなゲームをしている余裕なんてありませんけど………。」


「確かにそれは言えてるかもね。」

「………………。」


不意に視線を感じ、満月は後ろを振り向いた。

そこには1人の少女が立っていた。


「………どうしたのかな?」
「……ああ、役重律さんだったよね。確か。」

「え、えっと、私の名前、知っているんだ………。」

「どうしたの?」

「ええっと、その……サインを貰いに……。」

「いいよ。………芳樹さん?それとも私?」


「りょ、両方!!」

そういうと律は色紙を2人に手渡した。
満月と芳樹は色紙にサインを書くと、律に返した。


「ありがとう、姫宮さん。綿貫さん。
………幸太に自慢できる。」


「……幸太?」


「あ、別の学校に通っている幼馴染なの。小野幸太。
今日も一緒にPMWをやろうって話をしていて。」


「…………意外。役重さん、そんなのもやっているんだ。」

「うん。でも親に色々と条件つけられているけどね。
シスターから注意喚起されちゃったけど。
…………面白い分、中毒性がかなり高いから。」


「………へぇ、ちなみに役重さん。職業何なの?」
「え?私?私、アサシンだよ。
守りを一切廃した攻撃型であるため、一撃を放っての戦線離脱が基本なの。
あ、これね。」

律はそういうとスマホを取り出して、自身が操作している分身を見せた。

「わあ、可愛いね。」
「ホントだ。良くできているなぁ。」

「もし興味があるんだったら、やってみて。………あ、でも2人とも忙しいかな?」

「時間に余裕があったら、やってみるよ。」
「お誘いありがとうね。」

「………うん!」

そういうと芳樹と満月、そして物吉は律と別れた。

続く。
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