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「月くん、お腹が空きました」
「冷蔵庫からなんか出して食べろよ。ワタリさんがテトリスのごとくケーキの箱をつめてたじゃないか」
「月くんも一緒に食べませんか」
「だから僕はあんまり甘いものが」
「……これは?」
僕の背中に覆いかぶさっていた竜崎がそばにあった紙袋のなかから一冊のアルバムをだした。それは妹の粧裕が持ってきたもので、家族の、おもに僕の写真がおさめられている。
「…………これは、私のために?」
「どこをどうしたらその解釈につながるんだよ! おまえのどこが世界の探偵なんだ!」
思わず声を荒げた僕のつっこみをスルーして、竜崎はアルバムの写真一枚一枚をなめるように嗅ぐように微に入り細を穿ち夢中になって眺めている。
「これは……素晴らしい成長記録ですね。ところで月くん」
「……。なんだよ」
「これを私にください」
「断る」
「まだ小さくてあどけない月くんもたまりませんが、とくにこの高校の制服姿が抜群です……」
「気持ち悪い」
「月くんがもう少し年下だったら、私は大学生ではなく、高校教師になっていたかもしれません。そして生活指導と称して毎日月くんを、」
「即刻懲戒免職になって失せろ」
・月のブレザー姿は犯罪的に可愛いと思う。
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「イヴァン、おまえほっぺにケチャップついてんぞ」
「んあ? ……ここか?」
「ああ、と、そっちじゃなくて……ちょっとこっち向けって」
「ん」
「はい、オッケ〜」
「おい、てめえも顔にチョコレートソースついてんじゃねえかよ、ジャン」
「ん? ここけ?」
「そこじゃねえ、そのナプキン貸せよ」
「んー」
「取れた」
「ん、さんきゅう」
「………イヴァンとジャンカルロって、こんなに仲よかったかしら?」
少し不思議そうにそして複雑そうに首をかしげたロザーリアのひとりごとに驚いて、ルキーノは手にしたナイフを取り落としそうになった。
めずらしーもん見たなあ、スパルタ教師の失態なんて、と。真正面でにししと笑うジャンをねめつけながら。内心でルキーノはマイアミの海よりも深く反省しため息をついた。
慣れとは実に恐ろしい。
――いつしか、こいつらの無自覚のじゃれ合いに違和感を感じなくなっていたなんて。
・目の前でいちゃつくふたりにもう慣れてしまったルッキーニ。
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「設楽せんぱーい、お呼びですかー?」
花畑にでもいるような笑顔で駆け寄ってきた小波が、開口一番にそんなことを言うから、俺は怪訝さを隠さずに返した。
「おまえが俺をここに呼び出したんじゃないのか? わざわざこんな裏庭に」
「……へ?」
心底ふしぎそうな声をあげる後輩女子の顔を見ていたら、なんだかばかばかしくなってきた。こいつに呼びだされて、のこのこ来たりして俺は一体なにを期待してたんだ……。
「……俺は帰る」
「へえ!? ちょ、ちょっと、待ってくださいよう!」
「用が無いなら帰るしかないだろ。大体、おまえは誰に言われてここに来たんだ?」
「ルカくんです」
「……だったらなおさら俺じゃないだろ、なんで俺がわざわざルカを経由しておまえを呼ぶんだよ?」
「……ということは?」
「騙されたな、俺たちふたりとも。あいつに」
「……え、イタズラってことですか?」
「ああ、たぶん」
「そんなあ……」
そう答えると小波はわかりやすく肩を落とししゅんとして見せたがしばらくすると、突如としてもう然と顔をあげた。
「わ、わたし、ルカくんをしかってきます!」
言うやいなやくるりと向いたブレザーの背中がやけに白い。
あきらかな違和感に俺は眉を寄せて、小波の背中を引き留めた。
そこにはルーズリーフの切れ端が貼ってある。ブレザーに広がる白い染みのようなそれはやけに目立っていた。
「なんだよこれ」
「へ? なんですか?」
「その背中の……、ああもういい、ちょっとこっち来い」
「? はい」
剥がした紙をふたりして覗き込むと、そこには――。
“設楽先輩だいすき! つきあってください☆ by小波”
と踊りだしそうな文字で書いてあった。呆然としていた小波の顔がみるみると愉快な色に変わる。
「こ、これ……ひ、ひどい、るかくんのばかーっっっ!」
再度、駆け出そうとした小波を俺はもう一度呼び止めた。
「小波」
「な、なんですか?」
「返事はいいのか? 聞かなくて」
「…………へ、返事?」
振り向いた頬は羞恥によってだけでなく、真っ赤に染まっていた。
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「あのう、竜崎、ちょっといいですか」
「なんですか松田さん」
「月くんって、ツンデレじゃないんですか?」
「………」
「あれ、なんだか竜崎から蔑みの目線をかんじるような……」
「月くんは月くんです」
「はあ、でも月くんってツンデ」
「月くんは月くんです。夜の神に月と書いて夜神月。月くんをそのような思考停止なカテゴリにいれないでください。あえてカテゴライズするなら月くんは、月くんしかありえません」
「はあ……。でも月くんがツンデレだったら可愛くありませんか?」
「思いません。さっきからそんな凡庸な言葉でしか月くんを表現できない自分が恥ずかしくありませんか?」
「……すみませんでした」
「わかったなら、冷蔵庫からティラミスとってきてください」
「はあ……」
松田にだけ冷たい竜崎もえ。
今年もこの季節が! やってきた! 今年は今年は9・連・休! 幸せをじゅわーと噛みしめてみる…。
なかなかサイトをいじる時間がないので、ちょっとした小ねたをこっちで投下したいと思っている。
それから彩雲国等の過去log目当てのかたは現在不通になっててたいへん申し訳ございません…! メールのお返事も……(陳謝)
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バンビのGW予定
「あっ、平くんいっしょに帰らない?」
「こ、小波さん……俺で、いいの?」
「? うん、もちろん!」
「(幸せだ……!)」じーん
「もうすぐGWだねえ、9連休ってただごとじゃないよね」
「えっと、小波さんは、GW予定あるの?」
「うん! るかくん、コウくん、設楽先輩、紺野先輩、ニーナ、不二山くんとデートして6日でしょ。残りはみよとカレンとお泊りして藍沢先生とこ行って、野球部の後輩くんとプールに行く予定」
「………すごいんだね」呆然
「じつは今日も素敵な男の子と過ごす予定があるんだよ」照
「……ええと、それってなんとかっていうPSP版の隠れキャラの?」
「ううん、平くんっていう男の子と過ごすつもり」
・バンビ恐ろしい子…!