桜庭市営文化ホールの稽古場で、稽古をしていた満月は一息ついていた。
「………はぁ………。」
「お疲れ様、満月。」
「差し入れ持ってきたよ。」
「お茶飲む?」
「それとも母さん手製のスコーンでも食べる?」
「………うん、1度に言われるとちょっと困ると思います。
直人兄様、結人兄様、悠人兄様。」
「3人とも、満月ちゃんが困っているだろ?」
タオルで顔の汗を拭いながら、芳樹は3人に言った。
「何だよ、たった1人の妹を心配したらダメなのか?」
「芳樹兄さんのところに嫁ぐまで後2年ぐらいしかないんだぞ。」
「そうだそうだー。」
「……兄ちゃん達、寂しがり屋なんだね。」
「まったく………満月の前ではカッコいい兄でいたいと言ったのは何処の誰ですか。」
「綾兄ぃが怖い!」
「同感。」
「2人に同じく……。」
「同じくじゃありません。まったく………。」
「良いじゃないか、兄弟仲が良いというのは。」
「祐一伯父さんの言う通りだー。」
「俺達は仲が良いんだぞぉ。」
「満月に対してだけでしょ。」
「4人も弟を抱えるとなると大変だな、綾人。」
「まったくです。」
「え、何、僕も入っているの!?酷くない!?」
和彦に肩車をされている幸人が、わーわーと叫ぶ。
「お前達が妹だったらゾッとしますね。」
「あ、酷い言い方!」
「満月、綾人お兄ちゃんになんか言ってやって!」
「……と言われても………。」
「もう、貴方達、何してるの!?」
智恵の叫びが稽古場に響き渡る。
「おおっと、五月蠅いお姉さんがやってきた。」
「何ですって!?」
「………やれやれですね。」
「ホントだよ。」
続く。