蓮の実、蓮華の香。

昨日、錯乱し、
落ち込んだあたしは、
あーちゃんを連れて
死のうとした。

あーちゃんの首をしめた。
おやつの入った口がパクパクして、
咳き込んでいた。
旦那が止めた。

明日の朝一番に一緒に死のう。
二人でドアノブに紐をかけて。
７秒で逝ける。
体重がかかるのが苦しいらしい。
そこでやめた人も多いと。

あーちゃん、ごめんね。
ママと一緒に逝こう。
あーちゃんを置いていけない。
勝手に決めてごめん。
1歳の誕生日を迎えられないでごめん。
可愛いあーちゃん。
愛するあーちゃん。
愛しいあーちゃん。
ごめん。
こんなママでごめん。
一人で逝けないよ。

遺書を書かないと迷惑がかかるらしい。

今までありがとうございました。
二人で死にます。
あーちゃんを置いけません。
ごめんなさい。
本当にありがとうございました。

最後にママに電話した。

あーちゃん、殺すなら
ここに連れてきなさい。
お母さんが殺してあげるわ。
あんたが死ぬなら母さんが死ぬわ。

生まれてくるんじゃなかった。

母は泣いた。
後悔した。
何て、バカなんだ。

朝、娘を見た。
無邪気に笑っていた。

どうしてこの子を連れて逝けよう。

何を血迷って考えた。

愛しい愛しい。
幸せになってほしい。

あたしにこの子の人生を
奪う権利はない。
それじゃあ大切に育てようじゃないか。

今でも涙がこぼれる。
ごめん、ごめんね。

誤ったよ。
もう、間違えない。
あなただけは守ろう。

自殺願望のある私を
ここまで生かした母のように。

絶対の味方でいよう。

愛しい娘へ。

黒い水溜まり。
そこに滴る赤黒いしずく。
あぁ、落ち着く。

このまま溶けてしまいたい。

沈んでしまいたい。

今日も明日もいらない。
今、この瞬間が続き続ければいいのに。

しずくは固まっていく。

もっと、もっと深く。

沈むんだ。

さあ、握ったもので刻んで。
忘れないように。

さあ…。