月夜の黒い夢

暗いです

めがっさ暗いです

暗い暗い水の底

降りやまない雨が彼女を濡す

強く、激しく、痛々しく

黒衣の彼女はただジッと

彼女を見つめているばかり

蔑むように、憐れむように、戒むように

彼女を濡す雨は降りやまない

それはやがて濁流と変わり

彼女を飲み込むだろうか

否、黒衣の彼女が阻むだろう

それを許しはしないだろう

決して楽になどさせない

それでいて黒衣の彼女は

彼女を救いはしないだろう

救いの手を拒み、払い除け

黒衣の彼女は彼女を傷つけ

その両の腕で守るだろう

否、それは救いなどではなく

精神の破壊

それでいて壊れることさえ

黒衣の彼女は赦さない

壊れることも

救われることも

望めない

望めばそれは

黒衣の彼女を傷つけるだろう

彼女と彼女が分かたれたその時から

互いの幸福など成し得ない

互いが互いに望むほど

互いを傷つけ絶望し

雨は激しくなるだろう





あぁ誰か！

彼女を滅して

あわよくばそれが黒衣の彼女と成り代わることを