<梗概>
白熱する、対宝条戦。
その最中、黒崎に逮捕状が―――!?
世間を震撼させた巨額年金消失事件をモチーフとした【年金運用詐欺】、そして海外ブランドの日本進出に絡んだ【進出詐欺】を収録!!
今月末に発行される筈なのに、読書メーターで検索しても中々ヒットしなくて、ずっと
「今月『新クロサギ』出るよね?」
と不安に思っていたので、きちんと発行されたし読書メーターでも見つかって一安心。
しかし、内容は全然一安心じゃないよー。°(°´Д`°)°。
宝条を潰す為に、桂木さんと決別しアパートからも離れた黒崎……。
勿論、桂木さんが黒崎にとっての最大の仇で、殺してやりたい相手で。
何も持たない子どもだった黒崎が殺すことすら敵わない相手だった。
だから黒崎は桂木さんに頭を垂れて、詐欺のノウハウを教わり、あの人の命令に従ってあの人にとって邪魔な白鷺を片付ける役割を担っていた。
そこには何の感情も感傷も情もない、ただの利害関係しかない。
桂木さんは邪魔な白鷺を自らの手を動かすことなく消せる、黒崎はこの世で誰よりも憎い人種である白鷺を消せる。
利害の一致があったからこそ成り立っていた関係だったけれど、もうその利害関係すら成立しなくなってしまった。
宝条が桂木さんのマネーロンダリング稼業を担っていて、桂木さんにとって宝条が“使える”人間である以上、ただの白鷺掃除係でしかない黒崎が潰すのは許されない。
そんな動きを見せれば察知され、すぐに阻まれてしまう。
そして何より、自分の本業の邪魔をする黒崎を桂木さんは許しはしないから、宝条さんを本当に潰そうとするなら間違いなく黒崎を“消して”しまうでしょう。
本当に黒崎に宝条を潰せるのかは解りませんが、しかし自分の邪魔をするものを桂木さんは手駒に置けないでしょうし、黒崎も桂木さんの下にはいられない……。
だから、桂木さんからの命令はもう受けられないと決別を申し入れ、最終的には御木本と同じ結末を迎える覚悟もあることを伝えた黒崎。
そうまでしなければ、宝条を潰すことは敵わない。否、そうしたとしても宝条を潰すことが出来るかどうか――。
でも、本当にこれで良かったのか解らないのです。
そんなことをいったら、そもそも黒崎が詐欺師になった時から“それで良かったのか”と思うべきなのですが。
実際に父親を嵌めた御木本を潰し、父親を追い込んだ“銀行”でありその銀行を利用してのしあがろうとする宝条を潰し、そうしたら桂木さんを潰すのでしょうか。桂木さんを殺すのでしょうか。
そうしたら黒崎は満足するのでしょうか。幸せになるのでしょうか。
きっと、黒崎なら桂木さんを殺して自分も死ぬのではないかと思います。
それは情でもなんでもなく、仇である桂木さんを殺した先に、何もないことを黒崎自身が解っているからです。
アパートでの幸せは桂木さんを殺したあとにも続くとは、到底思えませんし。(桂木さん程の人を殺してしまえば、間違いなく黒崎は他の誰か(或いは早瀬)に殺されるでしょうし)
復讐は何も生まないし、永遠にループし続けるものです。
それでも黒崎はまだ止められないでいる。
本当に宝条を潰すことが出来るのかも不安でなりませんし、桂木さんに始末されてしまわないかも不安でなりません。
桂木さんは決して“良い人”なんかではない。
先ず間違いなく“悪い人”だし、黒崎の仇です。
だけど、本当にあの二人、特に桂木さんは黒崎に情も何もないのでしょうか。
早瀬が以前云っていたように、黒崎の人生に責任を感じているのではないでしょうか。
もっと云うなら、ガンスリのクリスティアーノがピノッキオに抱いた感情のように、損得勘定以外の某かの気持ちを、否それ以上の気持ちを抱いているのではないでしょうか。
勿論、それは解りませんけども。
桂木さんと仲良くして欲しい訳でもないし、黒崎に死んで欲しくもないです。
ただ、黒崎に幸せになって欲しいのですが、矢張りそれすら敵わないのでしょうか。
何だかもう全く纏まった感想でなくて申し訳ないのですが、そんな感じで波乱の18巻でした。
次巻からは「クロサギシリーズ」最終章ということで、『新クロサギ 完結編』として1巻から刊行されるようです。
次巻が刊行されるのが、今から待ち遠しくて仕方がないです。