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日々の戯言や、二次創作など。 最近は版権+オリジナルの俺設定小咄多しヽ(`Д´)ゞ
黒ばす×オリジナル×幽霊パロ
黒子テツヤは爽やかな風が吹き抜けた公園の隅、手入れもそこそこに、雑草が生え空き缶やごみが散らかる植木の奥をじっと見詰めていた。太陽は一番高い位置から少し傾いた場所にあり、その強い日差しを遮るものはここには無い。風が生暖かくないのが幸いだ。ただ、じりじりと焼かれる暑さがあった。
公園に子どもの姿は無い。それもそのはずだ。ここ数日記録的な夏日が続いており、炎天下の下でわざわざ子どもを遊ばせる親は少ないだろう。午前中や夕方、日が翳り比較的過ごしやすくなればもう少し人の姿が見れることを黒子は知っていた。
じわりと滲み出てきた額の汗を手の甲で拭う。公園の真ん中で何もせずにただ突っ立っている光景は、端から見たら異様なものに見えるだろう。だが、時折公園の脇を通っていく人々は、まるで黒子の姿など見えないかのように無関心に通り過ぎていく。
黒子にとってそれは日常的だったので、特別気にすることは無い。下手をすれば目の前に立っていても存在に気付かれず、話しかけて驚かれることすらある。自他共に認める影の薄さ、それが黒子の個性だ。
黒子は喉の渇きを覚えていた。家を出たのは10分前くらいで、麦茶をコップに3杯飲み干していたのにこの熱斜線には勝てなったらしい。それに、アレの存在。黒子は細い木の幹に隠れるように佇む女の姿を見詰める。幾ら女が細くても15cm程の幹に半身が隠れるはずがない。なのに女の身体は消えたかのように幹から出ている部分しか見えない。葉に遮られ光が届かない場所に静かに佇み動きもしない。あそこだけ空気が滞っているようにも思える。
黒子はあれが何だか知っていた。生気が伺えない、つまりはこの世ならざるものだ。一般的に幽霊だとか影だとか呼ばれている存在。視える人間と視えない人間と別れるが、黒子は前者だ。そして、自分では似た存在だと思っている。影が薄く、光の当たる場所にいる人間たちをじっと見詰めている。その心中は違うとも、立ち位置はとても似ている。ただ、そういう「幽霊」には悪さをするものとしないものに別れることを忘れてはいけない。そういったものを「妖怪」だとか「悪霊」だと呼称するのは、黒子が生まれるもうずっと前からのことだ。
黒子がそれらを視えるようになったのは小さいとき、とあることをきっかけにしてからで、それまでは妖精やら小人やらを信じる周りの女の子を可愛らしいと思っていたくらいだ。自分は信じていなかったということだが、視えるようになってしまってからは信じないわけにはいかなくなった。ただ、それらが他人に話してもいいことではないということは解っていたので、親にも話したことは無かった。視えるだけで悪さをしてくるやつらを追っ払うことも出来ず、悔しい思いをしたことも一度や二度ではない。だが、それらが害をなすものかを見極める眼は養ってきたと自負している。そして、あの女はここ数日で「不味いもの」になろうとしていた。
あそこは多分、吹き溜まりなのだ。負の力が集まってしまう、パワースポットとは違う場所というものはたくさんある。そこに居続ければどうなるか、黒子でなくとも結果は解るだろう。
どうしようか。黒子は女を見続けながら考えを廻らせた。黒子に出来ることは本当に僅かだ。あれ以上強くなってしまえば出来ることなどなくなってしまう。黒子は唇を軽く食む。そして一歩、踏み出そうとした。
「テツくん!!」
突然呼び止められた声に思わず振り返れば、見知った可愛らしい笑顔がそこにはあった。長い薄桃色の髪が陽光に反射しきらきらと輝いている。満面の笑みにつられるように、黒子は微かに眼を細めた。
「桃井さん」
「こんにちは。テツくん、何しているの?」
息を切らしながら駆け寄ってきた桃井さつきに尋ねられ、黒子ははっと木陰を振り返る。だが、そこには何も居なかった。淀んだ空気もない、ただ少しべたつく風が吹き抜けている。
桃井を見返し、黒子は曖昧に微笑む。彼女の生気は人よりも明るく、ああいった弱いものはその場に留まれないのだろう、と当たりをつけた。
「いいえ、何でもありませんよ」
「そうなの?だったら、日陰に行こう?こんなところに立ってたら日射病になっちゃうよ!」
にこりと笑った桃井に手を引かれ、黒子は逆らうことなく歩を進めた。気になって公園を出る前に振り返ったが、そこには何もいなかった。明日になればまたあそこにじっと立っているのだろうか。そんなことを苦く思いながら、桃井の温かい手を少しだけ握り返す。このあたたかさを、あれにも分けてあげられたら、あんな暗い瞳に光を宿せるのだろうか。考えて、小さく嗤った。どちらにせよ黒子にはそんな術はないのだ。
桃井が黒子を見る。じっと、見詰める。
「ねぇ、テツくん。私、これから大ちゃんに逢いに行くんだけど」
「ストリートコートですか?それこそ熱射病になってしまいそうですね」
「何度言ってもきかないんだもん!だから、飲み物持っていってあげないと」
ああ、可愛らしい瞳だなぁと黒子は思った。妖精や小人を信じているおんなのこを可愛いと思った、その気持ちと同じ、慈しむような気持ちだったことに黒子は気付かなかった。
初めはちっぽけな想いだった
Title by 確かに恋だった
こんばんはー。
こんにちはー(´・ω・`)