幽霊狩りを読んで、麻衣が可愛いと思い、つい…(笑)
麻衣の親友設定。敏樹の能力説明部と、横森登場フラグ部のみ。
敏樹は凄いんだよ!という麻衣のはしゃいだ声を聞き、敏樹は苦笑する。面々を見渡せば、困惑と苦笑が入り交じった表情をしていた。
――で? と、黒ずくめに心なしか敵意を含んだ声で問われて、敏樹は首筋に手をやる。敏樹の隣では麻衣が怒ったように頬を膨らませていて、この刺々しい空気を和らげている。本人に自覚はないだろう。麻衣自身は本気で頭にきている様子だったから、そんな敏樹の心境など気に掛ける余裕もないのかもしれない。敏樹は口元を綻ばせた。
「"凄い"の度合いは麻衣の"凄い"だということを念頭に置いて欲しいね。こいつはスプーン曲げたりトランプの数字を当てても凄いという奴だから」
「それはわかっています。僕らが知りたいのは、貴方がどこまで信用できるかです」
ちょっと! と麻衣が抗議の声をあげた。それを宥めるように片手を上げ、敏樹はナルを見る。
「人となりということなら、詐欺はまだしたことがないというしかないな」
「言葉遊びをしている状況ではないんですがね」
絶対零度の眼差しに、敏樹は肩を竦めて、小さく息を吐いた。敏樹とて、現状が決して芳しくないということは理解していた。だが、それゆえの軽口だったのだ。一蹴されてしまえば気まずさが残る。
「退魔法くらいなら。ただし当てにされても困る」
「ならお荷物だと?」
辛辣な物言いに、敏樹は首を振る。
「そうかもしれないが…俺は自分の身だけは自分で守れるから、護衛は要らない。俺が言いたいのは、誰かを守る頭数には入れるなってこと。でも―どうしても緊急を要するなら、俺を囮に逃げるくらいの覚悟は持ってほしいね」
「敏樹、そんな言い方は、やだ」
唇を尖らせて不満を訴える麻衣の頭を撫で、敏樹は微笑む。
「うん。まぁ、覚悟の話だから。麻衣も、それくらい出来なきゃダメだ」
「あたしは危険だと解ってる場所に敏樹を置いてなんかいけないよ!」
「違う、麻衣。切り捨てる覚悟じゃない。信じる覚悟だ。麻衣は俺が危機を乗り越えられると信じられないのか?」
麻衣は俯いた。口の中でくぐもる、ズルイ、とか、バカ、だとかいう罵りの声が敏樹の耳に届いたが、誉め言葉として受け取った。
キッ、と麻衣が敏樹を睨む。
「無事じゃなきゃただじゃおかないんだから!」
「怖いな」
「そんなの当たり前だもん」
それにそうか、と返し、敏樹は笑った。
…能力の説明…?
「ナル、真砂子やっぱり来られないって。今、仕事で九州に居るんだって」
「真砂子…って、原真砂子?すげぇな、大物じゃん」
「そうなの。真砂子は凄いんだから」
敏樹の驚いた声に、麻衣はにかりと笑って、自分が褒められたかのように自慢気に胸を張った。
「でも、困ったなぁ」
「何が?」
「だから、真砂子が来られないって話」
麻衣の説明に敏樹が首を傾げれば、麻衣はぱちりと大きく瞬き、そっかぁ、と言った。
「話したことなかったもんね。うちは…ってか、ナルは、始めに何が居るか、どんな現象が起こるのかっていうのを調べるの。真砂子は霊が見えるから、大まかなことはわかるでしょう?」
「霊媒が必要なのか」
ふぅん…と、敏樹は考えるように唇に指先を当てる。
「うちので良かったら、呼ぼうか?要するに、此処でどんなことが起こったのか、また起こるのかが知りたい訳だろ?」
「敏樹の知り合いに霊媒がいるの?」
「うーん…霊媒といえるのか、疑問だけどな。厳密に言えば違うんだろうが、あいつは一応見える人間だから」
「へぇ…、呼んでもらえるんだったら…」
そう言いかけて、麻衣はナルの方をちらりと窺う。ナルは少し考えてから、頷いた。
「ただ…あいつが来ると、オマケがついてくる」
苦笑いしながら、敏樹はジーパンのポケットから携帯電話を取り出した。
横森のオマケは神宮(または如月)