城之内は酷く沈んでいた。
空調のきいた執務室は敏樹には少し肌寒い。
海馬の機嫌は良くなく、横森は体調が良くない。そんな重苦しい雰囲気の中口を開いたのは、その憂鬱な雰囲気を醸し出している渦中にいる城之内だった。
「覚醒剤の中毒死だってよ…」ポツリ、と誰ともなく呟くように話す。城之内の友人がこの春、覚醒剤の中毒死を遂げたという話だった。悔しげに悲しげに、俺があの時気付いていれば、と唇を噛み締めて城之内は話し続ける。そんな城之内を見ていると何だか苛々した。それはきっと敏樹に話を聞けるような余裕がなかったからだ。
「バカだなセセム、烏滸がましいぞ」
「敏樹」
すかさず横森から牽制が入る。それにまた苛つく。横森とて他人を気遣う余裕などもうないだろうに。なのに染み付いた習慣のように当たり前に手を差し伸べる。自滅など恐れないその態度が腹立たしい。
「自分に何か出来たかも知れないなんて、所詮は後付けの理由に可能性を見出だしてるだけだ」
「それは教訓?」
「経験談か?」
横森と海馬の横槍をきれいに無視して、敏樹は片眉を上げた。
「そいつが死ぬという未来は確定だったと思え。変えられもしない過去に夢見てあれこれ想像するな、過去が変えられるのはお前の中だけでしかないんだぞ」
「人生論か」
冷めた蒼い瞳が敏樹を捉えたが、敏樹はそれを確認しない。確かにそれは敏樹の短いながらも今まで生きてきた中で悟ったことであったし、だからといって誰かに押し付けられるような度を越えた素晴らしいアイディアでもなかった。飽くまで思考の中心にいたのは敏樹自身であったし、物事の基準は敏樹の知り得る小さな事柄でしかなかった。だから所詮は敏樹の我儘でしかないわけだ。
「…ジョーノは何か、アナフィラキシーショックとか持ってそうだよな」
ふと、敏樹は話題を変える。かといって完璧に逸らせるわけでもない。
「食物アレルギー?」
「そんなタマかよ、二度刺されたら、とかいう蜂の方。んで、海馬は刺殺とか水死とか」
「コイツの場合、有り得るから困る」
不思議そうな顔で、しかし話しにのってくれるのは処世術なのか。横森は敏樹から城之内、そして海馬に視線を移した。城之内もつられて海馬に視線を移せば、皆の視線に晒された海馬は心底嫌そうにその端整な顔を歪めた。
「唯一の他殺だぜ」
「それを言うならある意味ジョーノも他殺よ」
敏樹の言葉に、横森はクスクスと笑った。じゃあ、と続けたのは城之内だ。
「横森は?」
「そうだな…過労死、とか」
「笑えねぇ…」
「もしくは睡眠薬の多量摂取、それかアルコールと服用」
「あら、なら、そう言う敏樹はどうなの?」
面白そうに笑う横森に、敏樹は肩を竦めてみせる。
「俺?俺は、フラッとどっか居なくなって、どっかで野垂れ死んでる、とか?」
良くわかんねぇけど、ありえそうじゃね?
言うと、横森は曖昧に微笑んだ。海馬の表情はますます不機嫌になり、城之内の唇はみるみるうちに尖っていく。敏樹は思わず口を引き結んだ。
「バカね敏樹、考えられることに関しては大体、対策が練られているものよ」
本当にそうだろうか。思考と思考の戦いならば選り優れた方が勝つ。人為的に防げない天災のようにそれは降りかかってくるのではないだろうか。
「バカだな横森」
そうだ、俺たちは大馬鹿者なのだ。
「予期し防衛策を練ったとしても起こってしまうことなどこの世には沢山あるものだろ」
きゅうじゅうきゅー、ひゃーく、もーいーかーい?
(誕生日ごとに一つ増える数、あれは俺たちの死へのカウントダウンだ)
(数え終わったら、もう、)
―――――みぃつけた、
最近カカイrからアスイrに興味が移ったときやですどうも〜( ̄∀ ̄)
また今日も夜勤なんですがね、もういい加減疲れました(笑←
そろそろ納涼祭も近いし…気合い入れんとなぁ…(・∀・`)