「…………………え、嘘………………?」
綿貫拡樹は1枚の紙を見て驚いていた。

その紙には「加州清光役 綿貫拡樹」と書かれている。

「………よっしゃぁああ!!!」
その文字を見た瞬間、拡樹はガッツポーズを決めた。
「母さんがやってた役を俺がやることになるなんて…………!!」
「おめでとう、ひろ兄ぃ!ママがやってた役やるんでしょう?」
「ありがと、桃子。いや、感動するわ…………。」
「うふふ、私がやっていた役を拡樹がやるなんてねぇ………。
体型の関係でもうやれなくなってきているから、拡樹がやってくれると助かるわ。
貴方は貴方の加州清光を演じればいいんだから。」
「………うん。」
「しかし幕末天狼傳の再演でまさか、拡樹が抜擢されるとはなぁ。
責任重大だぞ、拡樹。」
「父さん、そんなこと言わないでよ!俺、ちゃんとやれるから!」
「お、言ったな?なら最後まで頑張れよ。」
「うん…………!」


「……………こんにちはー、綿貫拡樹です!今日はよろしくお願いします!」


稽古場に入るなり、拡樹は元気よく挨拶をした。

「お、拡樹君か。噂はかねがね聞いているよ、お母さんがやっていた役を引き継いだんだって?」

舞台監督の不知火に声をかけられて、拡樹はへにゃり、と笑った。


「まぁ、コネとかそういうのなんのそのって言われたらうぐぅ、ですけど。
でも、受け継いだ以上はしっかり見せつけてやらないといけないですよね。」

「お、その意気だ。そうだ、見せつけてやればいいさ。お前さんの実力をな。」

「………はい!」


終わり。